収入

自販機・看板・アンテナ・太陽光など家賃以外の収入|所得区分・消費税と、決算書の表示・銀行の見え方

賃貸物件の収入は家賃だけではありません。敷地の自販機、屋上や外壁の看板、携帯電話の基地局アンテナ、屋根の太陽光発電など、建物と土地を使って得る副収入は意外に多いものです。

金額が小さいため処理が後回しになりがちですが、所得区分、消費税の課税・非課税、決算書のどこに載せるかは、それぞれ違います。この記事では、国税庁の通達・質疑応答事例と公表裁決をもとに整理します。

この記事の結論
  • 看板・アンテナなど建物や土地を使わせる対価は、個人なら原則として不動産所得(所得税基本通達26-5ほか)。消費税は、住宅の貸付けではないので原則課税
  • 自販機の販売手数料は、場所の提供に加え役務・電気供給の対価とされた裁決があり、消費税は課税売上げ。計上時期は契約上の締日が基準
  • 太陽光の売電は、アパート共用部で使った余剰分なら不動産所得、全量売電は原則雑所得(国税庁の質疑応答事例)
  • 法人ではいずれも益金。決算書では、本業と一体の継続収入かどうかで売上高か営業外収益かを判断する
  • 銀行は、家賃以外の収入も継続性があれば評価する。契約書と入金記録をそろえておく

家賃以外の収入の全体像

主な副収入について、個人の所得区分と消費税の扱いをまとめると次のとおりです。

収入の種類個人の所得区分消費税根拠・確認先
屋上・外壁・塀の看板設置料不動産所得課税所得税基本通達26-5
屋上のアンテナ・基地局の設置料不動産所得(家屋の一部の貸付け)課税(住宅の貸付けではない)所得税法26条、消費税法別表第二第13号
自販機の販売手数料(メーカー設置型)契約内容で判断課税平成20年7月4日裁決
太陽光の余剰売電(共用部で自家消費)不動産所得課税(事業として行う場合)国税庁質疑応答事例
太陽光の全量売電原則雑所得(事業なら事業所得)課税(事業として行う場合)国税庁質疑応答事例
太陽光事業者への屋根貸し不動産所得課税所得税法26条
太陽光事業者への土地貸し(野立て)不動産所得原則非課税(土地の貸付け)消費税法別表第二第1号

住宅の家賃は消費税が非課税ですが、ここに挙げた副収入の多くは課税売上げです。住宅中心の賃貸経営者でも、副収入があると課税売上割合や納税義務の判定に影響します。

副収入が消費税の判定に与える影響

消費税の納税義務は、基準期間(個人は前々年、法人は前々事業年度)の課税売上高が1,000万円を超えるかどうかで判定します。住宅家賃は非課税なので課税売上高に入りませんが、看板・アンテナの設置料、自販機手数料、売電収入は入ります。店舗・事務所の家賃や駐車場収入と合わせると、思ったより早く1,000万円を超えることがあります。

また、課税事業者が一般課税で申告する場合、課税売上割合(売上全体に占める課税売上げの割合)は仕入税額控除の計算に使われます。副収入を非課税と誤って処理すると、納税義務の判定も控除額の計算も狂います。テナントや設置業者からインボイス(適格請求書)の発行を求められることもあるため、登録の要否もあわせて確認してください。

看板・アンテナの設置料

所得区分は不動産所得

所得税基本通達26-5は、「広告等のため、土地、家屋の屋上又は側面、塀等を使用させる場合の所得は、不動産所得に該当する」としています。携帯電話の基地局アンテナを屋上に設置させる契約も、家屋の一部を使わせる対価という点で同じ性質であり、不動産所得として扱うのが基本です。

消費税は課税

消費税が非課税になるのは、土地の貸付けと住宅の貸付けです。建物の屋上や外壁を看板・アンテナのために使わせるのは住宅の貸付けではないため、課税売上げになります。

土地に看板を立てさせる場合は、土地の貸付けとして非課税になり得ますが、消費税法基本通達6-1-5は、建物などの施設の利用に伴って土地が使用される場合は土地の貸付けに含まれないとしています。看板の土台や設備を貸主側が用意しているなど、施設の貸付けとみられる場合は課税になります。契約書で「何を貸しているか」を明確にしておくことが大切です。

自販機の販売手数料

平成20年7月4日裁決が示した手数料の性質

自販機収入の性質を判断した公表裁決として、国税不服審判所 平成20年7月4日裁決(裁決事例集No.76 465頁)があります。

不動産貸付業のために賃貸アパートを取得した審査請求人が、アパートの引渡しと同じ月に敷地へ飲料メーカーの自販機を設置させ、月末までの販売分に対応する手数料(税抜114円)を課税売上げとして課税売上割合を100%とし、アパート取得時の消費税の還付を求めた事案です。審判所は、自販機設置協定書の内容から、販売手数料は次の対価の性質を持つと認定しました。

  • 自販機の設置場所の提供
  • 故障発生時のメーカーへの連絡などの人的役務
  • 貸主が負担する電気の供給

そのうえで、販売手数料は土地の貸付けの対価とはみられないとし、収入すべき時期は、協定書で定めた毎月20日の締日に確定すると判断しました。その課税期間には課税売上げがなく、還付は認められませんでした。

この裁決から、実務上は次の2点が読み取れます。

  • 自販機の販売手数料は、課税売上げとして扱うのが基本
  • 計上時期は、販売日ごとではなく、契約上の締日で収入すべき金額が確定する

なお、この事例は、自販機を利用した消費税還付の手法が争われたものでもあります。その後の制度改正の流れは自販機スキーム・金地金スキームと消費税改正の歴史で解説します。

所得区分は契約内容次第

自販機手数料の所得税上の区分について、国税庁が直接示した公表資料は見当たりません。メーカーが自販機を設置・管理し、貸主は場所と電気を提供して手数料を受け取る形なら、賃貸事業に付随する収入として扱うのが自然です。一方、貸主が自ら商品を仕入れて販売する形なら、物品販売の所得として事業所得または雑所得を検討することになります。契約の形態で判断が分かれるため、契約書を確認したうえで処理を決めてください。

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太陽光発電の売電収入と屋根貸し

余剰売電は不動産所得、全量売電は原則雑所得

国税庁の質疑応答事例「賃貸アパートに設置した太陽光発電設備による余剰電力の売却収入」は、不動産賃貸業を営む個人がアパートの屋上に太陽光発電設備を設置し、共用部分で使った残りを売電している場合、その売却収入は不動産所得の収入金額に算入するとしています。共用部分の電気代は不動産所得の必要経費であり、発電によってその経費が減るという関係があるためです。

一方、同じ事例の注では、賃貸不動産に設置した設備で全量売電を行う場合は、不動産所得との関連性が認められないとして、事業として行われている場合を除き雑所得に該当すると考えられるとしています。

事業に当たるかどうかについては、自宅屋根の小規模な太陽光発電を事業と認めなかった令和4年12月14日裁決があります。売電収入が減価償却費に満たない規模で、人的設備もない取組みは、事業所得を生ずべき事業に当たらないと判断されました。雑所得になれば、赤字は損益通算できません。

消費税

事業者が事業として行う売電は課税売上げです。国税庁の質疑応答事例は、会社員が生活用に設置した設備の余剰売電は事業としての譲渡に当たらず課税対象外とする一方、全量売電は反復・継続・独立して行う取引として課税対象になるとしています。賃貸事業の一部として行う売電は、課税売上げとして扱うのが基本です。

屋根貸し・土地貸し

太陽光事業者に屋根や土地を貸して賃料を受け取る形もあります。屋根貸しは家屋の一部の貸付けとして不動産所得・課税売上げ、更地を貸す野立ては土地の貸付けとして不動産所得・原則非課税となります。

法人の場合と、会計上の表示

法人ではすべて益金

法人税には所得区分がないため、どの副収入も益金として合算されます。消費税の扱いは個人と同じです。

売上高か営業外収益か

決算書の表示区分は、企業会計の基準(GAAP:一般に公正妥当と認められる会計基準)に沿って、取引の実態で判断します。

  • 賃貸事業と一体で、契約に基づき継続的に発生する収入(看板・アンテナ設置料、賃貸物件の自販機手数料、共用部と一体の売電など)は、賃貸事業の売上高に含める考え方があります
  • 本業と関係の薄い一時的な収入は、営業外収益とするのが自然です

税務上は益金に算入されるかが論点になります。一方、決算書の表示区分(売上高か営業外収益か)は、企業会計の基準に沿って判断する必要があり、どの区分にできるかは取引の実態次第です。顧問税理士・会計の専門家と検討してください。営業利益を大きく見せるために、本業と無関係な収入まで売上高に入れることは勧めません。表示の考え方は「収益は上に、費用は下に」の意味と税務上の損金と企業会計の違いで詳しく扱っています。

太陽光発電設備は、建物とは別の減価償却資産です。法人で全量売電を行う場合、銀行は売電部門を賃貸事業とは別の事業として見ることがあります。

銀行からの見え方

銀行は、家賃以外の収入も、継続性があり、契約で裏付けられているなら返済原資として評価します。

  • 営業利益・償却前利益:売上高に計上できる継続収入は、営業利益やICRの分子を厚くする
  • 継続性の説明:アンテナや看板は契約期間が長いものが多い。契約書と更新条件を示せると評価しやすい
  • 太陽光:固定価格買取制度の残り期間、設備の借入と返済期間が合っているかが見られる

著書のモデルでは、銀行格付けを129点満点で評価し、収益性や返済能力の配点が大きくなっています。副収入は一件ごとは小さくても、積み上がれば営業利益の安定に効きます。銀行への説明の仕方は銀行格付けの考え方もご覧ください。

実務のチェックポイント

  1. 契約書で「何を貸しているか(土地・建物の一部・設備)」「何の対価か」を確認する
  2. 消費税の課税・非課税を収入ごとに区分して記帳する(住宅家賃と混ぜない)
  3. 自販機手数料は契約上の締日で計上する。振込案内書を保存する
  4. 太陽光は、余剰売電か全量売電か、設備をどの物件の付属としているかを整理する
  5. 副収入で課税売上高が増え、消費税の納税義務や課税売上割合が変わらないか確認する
  6. 決算書の表示区分は、事業の実態に沿って顧問税理士と決める

まとめ

  • 看板・アンテナの設置料は、個人なら原則不動産所得、消費税は課税
  • 自販機の販売手数料は、場所・役務・電気の対価とされた平成20年7月4日裁決があり、課税売上げ・締日計上が基本
  • 太陽光は、共用部で使った余剰売電なら不動産所得、全量売電は原則雑所得
  • 法人ではいずれも益金。売上高か営業外収益かは実態に応じて判断する
  • 銀行は、契約で裏付けられた継続収入を評価する。契約書と入金記録をそろえておく

副収入の処理は小さな論点に見えますが、消費税の判定や決算書の見え方にまで影響します。クレフティでは不動産投資家向けサポートの中で、収入の区分から銀行に説明しやすい決算書づくりまでご相談をお受けしています。

よくある質問

アパートの屋上や外壁に看板を設置させた収入は何所得ですか?
所得税基本通達26-5は、広告等のため、土地、家屋の屋上または側面、塀等を使用させる場合の所得は不動産所得に該当するとしています。消費税については、建物の屋上や外壁を使わせる対価は住宅の貸付けではないため、課税売上げとなります。
賃貸アパートに設置した太陽光発電の売電収入は何所得ですか?
国税庁の質疑応答事例では、不動産賃貸業を営む個人が賃貸アパートの屋上に太陽光発電設備を設置し、発電した電力を共用部分で使い、余剰電力を売却している場合、その売却収入は不動産所得の収入金額に算入するとしています。一方、全量売電の場合は不動産所得との関連性が認められないとして、事業として行われている場合を除き雑所得に該当すると考えられるとしています。
自販機の販売手数料は、土地の貸付けとして非課税になりますか?
平成20年7月4日の国税不服審判所の裁決では、賃貸アパートの敷地に設置した自販機の販売手数料について、設置場所の提供に加え、故障時の連絡などの人的役務や電気の供給の対価でもあるとして、土地の貸付けの対価とはみられないと判断しました。販売手数料は課税売上げとして扱うのが基本です。

※本記事は2026年10月18日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。

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