収入

屋上・外壁の貸付け(携帯基地局・広告看板)の税務|契約形態、一時金、消費税、管理組合の収益事業と費用按分の裁決事例

ビルやマンションの屋上を携帯電話の基地局に、外壁や屋上を広告看板に貸す。空室とは無関係に毎月入ってくる収入で、建物の価値を下げずに収益を足せるのが魅力です。一方で、住宅だけの建物でも消費税の課税売上げになる、契約時に一時金が支払われる、区分所有マンションでは管理組合の法人税の問題になる、といった、家賃とは違う論点があります。

看板・アンテナ設置料の所得区分と消費税の基本は家賃以外の収入(自販機・看板・アンテナ・太陽光)で整理しました。この記事では、そこから一歩進めて、契約形態と一時金、区分所有建物の場合、費用の按分、決算書の表示と銀行の見え方を中心に解説します。

この記事の結論
  • 屋上・外壁の貸付け収入は、個人は不動産所得(所得税基本通達26-5)、法人は益金。消費税は課税
  • 契約は「建物賃貸借」「設置許諾」など形がさまざま。何の対価か、一時金は返還されるかを契約書で確認する
  • 区分所有マンションで管理組合が貸す場合、設置料は収益事業(不動産貸付業)として法人税の対象になる(国税庁質疑応答事例)
  • 管理組合の費用按分では、公表裁決事例で費用の性質に応じた基準(従事時間、面積、収入割合)による配賦が認められた
  • 決算書では、賃貸事業と一体の継続収入として表示を検討する。銀行には契約期間と更新条件で継続性を説明する

屋上・外壁の貸付けの種類と契約形態

屋上や外壁の貸付けには、主に次の種類があります。

種類相手契約の形の例確認したい点
携帯電話基地局移動体通信業者建物(屋上の一部)の賃貸借、設置場所の使用契約契約期間、自動更新、中途解約、電気料金の負担、撤去と原状回復
屋上広告塔・看板広告主、広告代理店屋上・壁面の使用契約設置物の所有者、屋外広告物の許可・更新の負担、安全点検の責任
壁面看板(テナント用)入居テナント賃貸借契約の付帯条項、または別契約家賃に含めるか別料金か
太陽光パネル(屋根貸し)発電事業者屋根の賃貸借期間(長期)、荷重・防水への影響

税務上の扱いは、契約書の名称よりも何を、何のために使わせ、その対価をいくら受け取るかという実態で判断されます。基地局や広告塔の設置物そのものは、通常は借り手(通信業者や広告主)の資産で、オーナーは「場所」を貸している立場です。

設置に伴う一時金

契約時に「設置協力金」「承諾料」などの名目で一時金が支払われることがあります。一時金は、返還を要するかどうかで扱いが変わります。

  • 返還を要しない一時金:受け取った時点(契約の効力が生じた時点)の収入とするのが原則。個人は不動産所得の総収入金額、法人は益金
  • 返還を要する保証金:預り金。ただし、契約で一部が返還不要と定められていれば、その部分は返還不要が確定した時点で収入

一時金の収入時期の考え方は、礼金・更新料と共通しています。詳しくは礼金・敷金・保証金・更新料の処理をご覧ください。契約書で名目を「敷金」としていても、実態が返還不要の権利金であれば収益になる、という考え方が示された裁決もあります(法人が土地に地上権を設定した事案。法人が土地を貸すときの権利金と借地権の認定課税で紹介しています)。

税務上の扱い:法人と個人の違い

所得税・法人税

項目個人オーナー法人オーナー
毎月・毎年の設置料不動産所得(所得税基本通達26-5)益金
一時金(返還不要)不動産所得。収入時期は契約の効力発生時が原則益金。同左
設置に伴う費用(防水・補強工事など)オーナー負担なら、修繕費か資本的支出かを判定同左
事業的規模の判定棟数・室数を中心に、貸付け全体の規模で判断(設置料だけで事業的規模になることは通常考えにくい)判定不要
区分所有の共用部分管理組合が受け取るのが通常(下記)同左

オーナー自身が防水や構造補強の工事を負担する場合は、その工事が建物の価値を高めるか、原状を維持するだけかで、修繕費と資本的支出を判定します(外壁塗装・屋上防水は修繕費か資本的支出か)。多くの基地局契約では、設置や撤去の工事は通信業者側の負担とされていますが、契約で確認しておく必要があります。

消費税:住宅の建物でも課税売上げ

消費税が非課税になるのは、土地の貸付けと住宅の貸付けです。屋上や外壁を基地局・看板のために使わせるのは住宅の貸付けではないので、課税売上げです。

住宅だけのアパート・マンションのオーナーは、ふだんは家賃が非課税のため免税事業者であることが多いのですが、設置料は課税売上高に入ります。基準期間の課税売上高が1,000万円を超えれば課税事業者になります。また、相手の通信業者や広告主は課税事業者であることが多く、インボイス(適格請求書)を求められることがあります。登録するかどうかは、事業用賃料全体を見て判断します(大家のインボイス登録は必要?)。

課税事業者のオーナーにとっては、設置料が課税売上割合の分子に入るため、課税売上割合がわずかに上がります。住宅中心の建物では、仕入税額控除への影響は限定的なことが多いものの、計算に含めることを忘れないようにします。

区分所有マンションの場合:管理組合の収益事業

区分所有マンションの屋上は共用部分なので、通常は管理組合が契約当事者となって基地局業者に貸します。

国税庁の質疑応答事例「マンション管理組合が携帯電話基地局の設置場所を貸し付けた場合の収益事業判定」では、管理組合(人格のない社団等または公益法人等であることが前提)が、移動体通信業者と建物賃貸借契約を結び、屋上の一部を使わせて得る設置料収入は、収益事業たる不動産貸付業に該当するとされています。管理組合は、区分所有者からの管理費などには法人税が課されませんが、収益事業の所得には法人税が課されます。

受け取る人法人税・所得税消費税
管理組合(人格のない社団等)収益事業(不動産貸付業)として法人税の申告が必要課税売上げ。基準期間の課税売上高が1,000万円以下なら免税
管理組合法人(区分所有法による法人)公益法人等とみなされ、収益事業の所得に法人税同上
区分所有者(一棟所有の個人・法人)不動産所得・益金課税売上げ

確認先:国税庁 質疑応答事例「マンション管理組合が携帯電話基地局の設置場所を貸し付けた場合の収益事業判定」

不動産投資の税務と融資、まとめて相談できます

代表の相亰と髙橋が、自らの不動産投資と資金調達支援の経験から構築した独自の財務設計の手法「クレフティメソッド」で、決算書・法人化・次の融資まで設計します。初回のご相談は無料です。

不動産投資家向け税務・融資支援を見る

公表裁決事例:基地局収入に対応する費用の按分(平成31年2月15日裁決)

管理組合が基地局収入の申告をする際、収入から何を経費として差し引けるかが争われた事例があります。

事案:マンションの管理組合法人が、屋上の一部を携帯電話等の基地局の設置場所として賃貸し、その収入について法人税等の申告をしました。その後、管理会社への委託費、電気設備の点検費、共用部分の火災保険料などを、収益事業の費用として損金に算入していなかったとして、更正の請求をしました。請求人は、これらを共通費用として、収入全体に占める賃貸収入の割合(収入割合)で按分しました。原処分庁は、そもそも収益事業に直接要した費用ではなく共通費用にも当たらない、仮に共通費用でも収入割合による按分は合理的でないとして、更正をすべき理由がない旨の通知処分をしました。

判断:審判所は、管理会社の業務には賃料の事務管理や基地局部分の外観目視点検・電力量計の検針が含まれること、点検費の対象の電気設備が基地局に電力を供給していること、保険の対象に賃貸部分が含まれることから、これらはいずれも共通費用に該当するとしました。そのうえで、共通費用は一律の基準ではなく、個々の費用の性質や内容に応じた合理的な基準で配賦すべきだとし、次のように整理しています。

費用審判所が合理的とした配賦の基準
管理員の業務費管理員の全体の従事時間のうち、賃貸部分の点検・検針に要した時間の割合
共用部分の保険料保険の対象となる共用部分の面積のうち、賃貸部分(と管理員室の一部)の面積の割合
その他の委託費・点検費時間や面積で明確に按分できないため、収入割合による按分も著しく不合理とはいえない

結論として、通知処分などの一部が取り消されました(法定申告期限内に申告していなかったことによる無申告加算税については、正当な理由は認められていません)。

確認先:国税不服審判所 公表裁決事例(平成31年2月15日裁決)

実務への示唆

この裁決は管理組合の事案ですが、「収入と費用の対応を、費用の性質に応じた基準で説明する」という考え方は、ほかの場面にも通じます。たとえば、個人オーナーが自宅と賃貸を兼ねた建物で家事按分をする場合や、課税事業者が個別対応方式で共通対応の仕入れを区分する場合も、按分の根拠を記録しておくことが大切です。また、管理組合が基地局収入を受け取りながら申告をしていない、という状態は無申告加算税の対象になり得ます。管理組合の理事会・管理会社とあわせて確認しておきたい点です。

会計上の扱いと決算書の表示、銀行からの見え方

売上高か営業外収益か

税務上は、設置料が益金(個人なら総収入金額)に算入されるかが論点で、表示区分によって所得は変わりません。一方、決算書の表示区分(売上高か営業外収益か)は、企業会計の基準、すなわち一般に公正妥当と認められる会計基準(GAAP:Generally Accepted Accounting Principles)に沿って判断する必要があります。会社法431条も、株式会社の会計は「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」に従うものとしています。

不動産賃貸業の会社が、所有ビルの屋上や外壁を契約に基づいて継続的に貸しているのであれば、建物の一部の賃貸として売上高に含める考え方があります。一方、一時的・臨時的な収入や本業と関係の薄い収入は営業外収益が自然です。どの区分にできるかは取引の実態次第なので、顧問税理士・会計の専門家と検討してください。営業利益を大きく見せるために、実態に合わない区分にすることは勧めません。表示の考え方は「収益は上に、費用は下に」とはで詳しく扱っています。

返還不要の一時金を受け取った期は、利益が一時的に膨らみます。会計上、契約期間にわたって収益を配分する考え方をとるかどうかは契約内容と会計方針によりますが、税務上の計上時期とずれる場合は申告調整が必要です。

銀行からの見え方

見られる点屋上・外壁の貸付けで起きること
収益の安定性空室と無関係で、契約期間が長いものが多い。償却前利益・ICRの分子の安定材料になる
継続性の根拠契約書、期間、自動更新の有無、中途解約条項。通信業者の基地局再編で解約されることもある
一時金一時金で膨らんだ期の利益は、銀行は経常的な収益力から除いて見ることが多い
建物への影響荷重・防水・修繕計画への影響。大規模修繕時の一時撤去や費用負担の取り決め
売却時基地局・看板の契約は買主に引き継がれるか。物件の評価にどう効くか

著書のモデルでは、銀行格付けを129点満点で評価し、返済能力(55点)と収益性(15点)の配点が大きくなっています。設置料は一件ごとは小さくても、建物の稼働と無関係に入る継続収入として、返済原資の説明に使えます。そのためにも、契約書一式と入金実績を、物件ごとの収支表とあわせて整理しておくと、銀行への説明がしやすくなります。

実務のチェックポイント

チェック項目確認する内容
契約の当事者一棟所有ならオーナー、区分所有なら管理組合。共用部分を一部の区分所有者が勝手に貸していないか
対価の内容何の対価か(場所の使用、電気料金の実費精算など)。電気料金の精算分の扱い
一時金返還を要するか。返還不要部分の収入計上時期
消費税課税売上げとして計上しているか。免税事業者の判定、インボイスの要否
工事と原状回復設置・撤去・防水補強の費用負担。オーナー負担の工事の修繕費・資本的支出の判定
管理組合の申告収益事業の申告をしているか。共通費用の按分根拠(時間・面積・収入割合)を記録しているか
表示区分売上高か営業外収益か、実態に沿って判断しているか
銀行・売却契約期間と更新条件の資料、買主への引継ぎ

まとめ

  • 屋上・外壁を基地局や看板に貸す収入は、個人は不動産所得、法人は益金。住宅だけの建物でも消費税は課税
  • 契約形態と一時金の性質(返還の要否)を契約書で確認し、収入時期を判断する
  • 区分所有マンションでは管理組合が当事者になり、設置料は収益事業(不動産貸付業)として法人税の対象
  • 平成31年2月15日裁決では、委託費・点検費・保険料を共通費用と認め、費用の性質に応じた基準で配賦する方法が示された
  • 決算書の表示は実態で判断し、銀行には契約期間・更新条件で継続性を説明する

屋上や外壁は、建物の中で「まだ稼げる場所」です。クレフティでは、不動産投資家向けサポートの中で、設置契約の税務の確認から、銀行に出す物件別収支の作成までご相談をお受けしています。

よくある質問

屋上に携帯電話の基地局を置かせて受け取る賃料は、何所得ですか?
個人の場合は不動産所得です。所得税基本通達26-5は、広告等のために家屋の屋上や側面、塀などを使用させる場合の所得を不動産所得としており、基地局の設置場所の貸付けも建物の一部を使わせる対価として同じ性質です。法人の場合は益金になります。
住宅だけのアパートでも、屋上を基地局に貸したら消費税がかかりますか?
屋上や外壁を基地局や看板のために使わせることは住宅の貸付けではないため、課税売上げになります。ただし、基準期間の課税売上高が1,000万円以下などで免税事業者であれば、納税義務はありません。住宅家賃は非課税のため、課税売上高の判定にはこの設置料などが入ります。
マンションの管理組合が屋上を基地局に貸した場合、法人税はかかりますか?
国税庁の質疑応答事例では、管理組合が建物賃貸借契約に基づき屋上の一部を移動体通信業者に使用させて得る設置料収入は、収益事業(不動産貸付業)に該当するとされています。収益事業の所得には法人税が課され、管理委託費や保険料などの共通費用は、合理的な基準で収益事業に配賦できます。

※本記事は2026年10月18日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。

RELATED

あわせて読みたい

収入

法人が土地を貸すときの権利金と借地権の認定課税|相当の地代・無償返還届出・改訂方法の届出と裁決事例

法人が所有地を役員や関係会社に建物所有目的で貸し、権利金も相当の地代も受け取らないと、権利金の認定課税が行われます。認定額の計算、相当の地代と無償返還届出の違い、権利金の計上時期の裁決事例、決算書と銀行の見え方を解説します。

2026年10月18日
収入

立退料を受け取った側の課税|借家人(個人・法人)と、転貸している貸主の所得区分(一時所得・事業所得・不動産所得・譲渡所得)と裁決事例

立退料を受け取った側の課税は、受け取った人と金額の中身で決まります。個人の借家人は原則一時所得、収入や経費の補てん部分は事業所得・不動産所得、借家権の消滅の対価は譲渡所得。法人は全額益金。転貸している貸主が受け取った立退料を区分した裁決、消費税が不課税となる根拠、会計上の表示と銀行の見え方を解説します。

2026年10月18日
収入

地代収入・底地の税務と借地権の認定課税|個人地主と同族会社の土地貸し、相当の地代・無償返還届出と裁決事例

地代収入は個人なら不動産所得、法人なら益金で、土地の貸付けは原則として消費税が非課税です。底地の相続税評価、権利金を取らずに同族会社へ土地を貸したときの借地権の扱い、相当の地代と無償返還届出の違いを、公表裁決事例と決算書・銀行の見え方から整理します。

2026年10月18日
FREE CONSULTATION

決算書と融資のこと、
まずはお気軽にご相談ください。

初回のご相談は無料です。まずは担当者がお話を伺い、内容に応じて担当税理士や金融機関出身のコンサルタントがご提案します。