空き家や戸建てを改装して個室ごとに貸す、社会人や留学生向けに家具付きで貸す。シェアハウスは、一般のアパートとは違う運営形態のため、シェアハウスの税務でも「これは住宅の貸付けか」「サービス業ではないか」という論点が出てきます。
この記事では、消費税法基本通達、所得税基本通達、国税庁のタックスアンサー、公表裁決をもとに、シェアハウスの消費税と所得区分を整理します。あわせて、法人と個人の違い、決算書の表示、銀行からの見え方も確認します。
- 居住用で1か月以上の貸付けなら、シェアハウスも住宅の貸付け(非課税)。寮・貸間も住宅に含まれる
- 共益費は家賃に含まれて非課税。ただし専有部分の光熱費を別に受け取る場合や、清掃・食事などの役務部分は課税
- 1か月未満の利用や旅館業に当たる運営は課税。運営会社への一括貸しは、住宅として転貸することが契約上明らかなら非課税
- 個人の所得は、食事を提供しなければ原則不動産所得。役務と一体の給付なら事業所得・雑所得になり得る
- 建物は居住用賃貸建物に当たり、取得時の消費税は原則として控除できない。耐用年数は住宅用と同じ区分
シェアハウスの運営形態と税務の分かれ目
シェアハウスといっても、運営の形はさまざまです。税務の扱いは、まず次のどれに当たるかで分かれます。
| 運営形態 | 消費税 | 個人の所得区分 |
|---|---|---|
| オーナーが入居者と直接契約(1か月以上・居住用、食事なし) | 非課税 | 不動産所得 |
| 運営会社に一括で貸し、運営会社が入居者に転貸 | 住宅として転貸することが契約上明らかなら非課税 | 不動産所得 |
| 食事付き(まかない付き)で提供 | 部屋代は非課税、食事部分は課税 | 事業所得または雑所得 |
| 1か月未満の短期利用、旅館業の許可を取って運営 | 課税 | 事業所得または雑所得になり得る |
以下、この表の中身を順に見ていきます。
消費税:シェアハウスも「住宅の貸付け」になる
住宅には寮・貸間も含まれる
消費税法別表第二第13号は、人の居住の用に供する家屋の貸付けを非課税としています。国税庁のタックスアンサー(No.6226)は、住宅には一戸建て、マンション、アパートのほか、社宅、寮、貸間なども含まれると説明しています。個室と共用のキッチン・リビング・浴室で構成されるシェアハウスも、入居者が生活する場所として貸すなら、住宅の貸付けに当たります。
消費税法基本通達6-13-4も、学生などに部屋を提供して生活させる、いわゆる「下宿」と称するものを含む貸間業は旅館業に当たらないとしています。
家具・共益費・光熱費
シェアハウスでは、家具家電や光熱費込みの料金設定がよく見られます。通達とタックスアンサーの整理は次のとおりです。
| 項目 | 扱い | 根拠 |
|---|---|---|
| 家具、照明、冷暖房設備など | 住宅と一体で貸すなら住宅の貸付けに含まれる。別の賃料を定めれば課税 | 消費税法基本通達6-13-1 |
| 共益費(共用部分の光熱費、清掃費などの応分負担) | 家賃に含まれて非課税 | 同6-13-9 |
| 専有部分の電気・ガス・水道の利用料を別に受け取る | 非課税の家賃に含まれない | タックスアンサーNo.6226 |
| 清掃・リネン交換・食事などの役務 | 対価を合理的に区分し、役務部分は課税 | 同6-13-6 |
ポイントは、契約書と料金表で何を受け取っているのかを明確にすることです。「共益費(共用部の光熱費・清掃費を含む)」として定額で受け取るのか、個室のメーターごとに利用料を請求するのかで、消費税の扱いが変わります。
非課税にならない場合
居住用であっても、貸付期間が1か月未満の場合と、旅館業に係る施設の貸付けは非課税から除かれます(消費税法施行令16条の2)。旅館業法の許可を取って運営する場合や、住宅宿泊事業(民泊)として運営する場合は、利用期間が1か月以上でも課税です(通達6-13-4)。マンスリー型の運営と期間の判定は、マンスリー・短期賃貸の消費税で詳しく解説しています。
運営会社への一括貸し
オーナーが運営会社に建物を一括で貸し、運営会社が入居者に転貸する形では、賃借人が住宅として転貸することが契約書その他で明らかなら、オーナーの賃料も住宅の貸付けとして非課税です(通達6-13-7)。契約で用途が明らかでない場合でも、転借人との契約で居住用とされているなど、状況から居住用であることが明らかなら非課税になります(通達6-13-11)。運営会社が短期利用や旅館業として運営する前提なら、オーナーの賃料も課税になり得ます。
所得区分:部屋を貸すだけなら不動産所得
所得税基本通達26-4
個人オーナーの所得区分について、所得税基本通達26-4は次のように定めています。
- アパート、貸間等のように食事を供さない場合の所得は、不動産所得
- 下宿等のように食事を供する場合の所得は、事業所得または雑所得
シェアハウスの多くは食事を提供しないため、原則として不動産所得です。
役務と一体の給付なら不動産所得にならない:平成25年3月27日裁決
所得区分の考え方を示した公表裁決に、国税不服審判所 平成25年3月27日裁決があります。シェアハウスの事例ではありませんが、請求人がクルーズ客船の居室を利用する権利を取得し、自分が使わない期間に運営会社を通じて第三者に有償で利用させた事案です。利用料には、居室の使用料のほか、食事・催し物・居室清掃などのサービスが含まれていました。
審判所は、所得がほとんどまたは専ら不動産等を利用させることにより生じるものなら不動産所得、不動産等の使用に役務の提供が加わり、一体となった給付の対価という性格をもつなら事業所得(場合により雑所得)と解すべきだとしました。そのうえで、この事案は相当程度のサービスと一体となったクルーズの提供であるとして不動産所得に当たらないとし、事業所得にも当たらず、雑所得と判断しました。雑所得の損失は他の所得と損益通算できません。
シェアハウスでも、清掃や生活サポート、イベント運営などのサービスの比重が大きくなれば、同じ問題が生じ得ます。
国税不服審判所 平成25年3月27日裁決 公表裁決事例(kfs.go.jp)
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不動産投資家向け税務・融資支援を見る事業的規模の判定
不動産所得が事業的規模かどうかは、青色申告特別控除(65万円・55万円)、青色事業専従者給与、資産損失の扱いに影響します。所得税基本通達26-9は、貸間、アパート等については、貸与することができる独立した室数がおおむね10以上であれば、特に反証がない限り事業として行われているものとしています。シェアハウスの個室が「独立した室」に当たるかは、施錠できるか、居室として区画されているかなどの状況によるため、室数を数えるときは慎重に確認してください。5棟10室基準と実質判断は不動産所得の事業的規模で解説しています。
建物・設備の税務
取得時の消費税
シェアハウス用の建物は、住宅の貸付けに使う建物です。税抜1,000万円以上で取得すれば居住用賃貸建物に当たり、取得や改装の消費税は原則として仕入税額控除できません(消費税法30条10項)。判定は居住用賃貸建物の判定実務をご覧ください。
耐用年数と改修費
減価償却資産の耐用年数省令の別表第一では、建物の細目は「住宅用、寄宿舎用、宿泊所用、学校用又は体育館用のもの」がひとまとめになっており、シェアハウスも住宅用と同じ耐用年数を使います(鉄筋コンクリート造47年、木造22年)。
戸建てを個室に区切る改修は、間仕切りの新設や水回りの増設を伴うことが多く、資本的支出として建物の取得価額に加える部分が出やすくなります。共用部の家具家電は器具備品として処理しますが、少額減価償却資産や一括償却資産の特例には「貸付けの用」に関する除外があるため、少額減価償却資産と「貸付けの用」の除外で確認してください。
法人と個人の違い
| 項目 | 個人 | 法人 |
|---|---|---|
| 所得区分 | 食事なしなら不動産所得。役務と一体なら事業所得・雑所得 | 区分なし(すべて益金) |
| 損益通算 | 不動産所得の損失は原則として通算可(土地取得の借入金利子部分などを除く)。雑所得の損失は不可 | 他の事業の損益と合算 |
| 事業的規模 | 独立した室数おおむね10以上などで判定。特別控除・専従者給与に影響 | 問題にならない |
| 消費税の課税・非課税 | 同じ基準 | 同じ基準 |
| 家具家電の少額資産特例 | 「貸付けの用」の除外に注意 | 同じ |
会計上の扱いと銀行からの見え方
決算書の表示
決算書は、一般に公正妥当と認められる会計基準(GAAP:Generally Accepted Accounting Principles)に沿って作ります。中小企業では「中小企業の会計に関する指針」や「中小企業の会計に関する基本要領」が拠り所です。シェアハウスの家賃・共益費は、賃貸事業の売上高です。消費税の課税・非課税が違っても表示区分は変わりませんが、清掃やイベントなどのサービス収入を別に受け取っている場合は、内訳を分けて管理しておくと、消費税の区分にも銀行への説明にも役立ちます。
銀行の見方
- 収入の安定性:個室ごとの入退去が多く、稼働率が変動しやすい。月別・部屋別の稼働実績を示せると説明しやすい
- 費用の構造:光熱費込み・清掃込みの料金設定では、一般のアパートより経費率が高い。営業利益率が低く見える理由を説明できるようにしておく
- サブリースの評価:運営会社への一括貸しは、運営会社の信用力が見られる。2018年には、シェアハウスのサブリース事業者の経営破綻と、それに関連する融資の問題が社会問題になり、金融機関の審査は慎重になっている
- 返済能力:著書のモデルでは、銀行格付けで返済能力の配点が大きく、債務償還年数は10年以内を健全の目安としています。賃料の下落や空室を織り込んだ収支計画を用意してください
実務のチェックポイント
- 入居契約は居住用と明記し、期間を1か月以上で定めているか
- 共益費に含める費用と、個室ごとに別請求する利用料を区分しているか
- 清掃・食事・リネンなどの役務を提供していないか。提供するなら対価を区分しているか
- 旅館業の許可や住宅宿泊事業の届出をしていないか。している物件は課税として処理しているか
- 運営会社への一括貸しは、住宅として転貸する旨を契約書に定めているか
- 個人の場合、個室の独立性を踏まえて事業的規模を判定しているか
- 改修費の資本的支出・修繕費の区分、家具家電の少額資産の扱いを確認したか
まとめ
- シェアハウスも、居住用で1か月以上なら住宅の貸付け(非課税)
- 共益費は非課税、専有部分の光熱費の別請求や役務部分は課税になり得る
- 1か月未満や旅館業は課税。一括貸しは住宅として転貸することが契約上明らかかがポイント
- 個人の所得は、食事なしなら原則不動産所得。役務と一体の給付なら事業所得・雑所得になり得る(平成25年3月27日裁決の考え方)
- 建物は居住用賃貸建物、耐用年数は住宅用と同じ区分
シェアハウスは、契約書と料金表の作り方で税務の扱いが変わる分野です。クレフティでは不動産投資家向けサポートの中で、運営形態ごとの税務と、融資を見据えた決算書づくりをご相談いただけます。民泊との違いは民泊収入の所得区分もご覧ください。
