管理・経費

不動産賃貸業の車両費・ガソリン代は経費になる?業務使用割合の按分、法人の私的利用、減価償却と銀行の見え方

物件の巡回、入居者からの連絡への対応、修繕工事の立会い。遠方の物件や複数の物件を持つ投資家にとって、車は欠かせない道具です。では、不動産賃貸業の車両費・ガソリン代はどこまで経費にできるのでしょうか。

個人の場合、私用と兼用する車は家事関連費となり、業務に使った割合で按分します。法人の場合は按分という考え方ではなく、私的利用が役員給与にならないかが論点です。この記事では、法人と個人の違い、減価償却と耐用年数、按分の根拠の作り方、ガソリン代が否認された裁決事例、そして車の取得が決算書と銀行評価にどう映るかまで解説します。

この記事の結論
  • 個人:私用と兼用する車の費用は家事関連費。業務使用割合を明らかに区分できる部分だけが必要経費(所得税法施行令96条)
  • 法人:車の費用は損金になるが、役員の私的利用分は経済的な利益(役員給与)とされるおそれがある
  • 車の購入費は減価償却。法定耐用年数は一般の乗用車6年、総排気量0.66リットル以下の小型車(軽自動車)4年。中古車は簡便法で短くなる
  • 按分の根拠は運行記録(日付・行き先・目的・走行距離)。車が1台で私用にも使っていたガソリン代が全額否認された裁決がある
  • 車の取得は、減価償却費で利益を、車両ローンで借入金を動かす。銀行は償却前利益と債務償還年数の両方で見る

車両関係費の税務上の扱い:法人と個人の違い

車に関する主な費用と、法人・個人それぞれの扱いを整理します。

費用個人(不動産所得)法人
車の購入費減価償却費を業務使用割合で按分して必要経費減価償却費として損金(償却限度額の範囲内)
ガソリン代・高速代・駐車場代業務使用割合で按分。業務専用の移動分は全額損金。ただし私的利用分は役員給与の問題
自動車税・保険料・車検代業務使用割合で按分損金
車両ローンの利子業務使用割合で按分損金(支払利息)
物件の現地へのタクシー・電車代業務のための移動なら全額必要経費旅費交通費として損金

個人:家事関連費の按分

所得税法45条と所得税法施行令96条により、家事関連費は、主たる部分が業務上必要で、その部分を明らかに区分できる場合に限り、その部分が必要経費になります。青色申告者は、取引の記録などで業務上直接必要だったことが明らかにされる部分も必要経費にできます。所得税基本通達45-2は、業務上必要な部分が50%を超えるかどうかで判定しつつ、50%以下でも明らかに区分できる部分は必要経費にしてよいとしています。考え方の詳細は自宅兼事務所・家事按分の考え方で解説しています。

按分の基準として最も説明しやすいのは走行距離です。年間の総走行距離のうち、物件の巡回や業者との打合せなど業務で走った距離の割合を、減価償却費、ガソリン代、自動車税、保険料などに当てはめます。

法人:私的利用は役員給与の問題になる

法人では車の費用は原則として損金になります。ただし、役員が法人の車を私的に使えば、その分は役員への経済的な利益です。法人税法34条4項は、役員給与に「債務の免除による利益その他の経済的な利益」を含むとしており、法人税基本通達9-2-9は、役員等に無償または低い対価で用役を提供した場合の通常の対価との差額や、役員等の個人的な費用を法人が負担した場合のその金額などを経済的な利益として挙げています。

法人で車を持つ場合も、業務で使っていることを示せる記録が欠かせません。家族が日常的に使う車を法人名義にする、といった形は避けるべきです。

減価償却:耐用年数と中古車の簡便法

法定耐用年数

減価償却資産の耐用年数等に関する省令の別表第一では、車両のうち一般の自動車は次のとおりです(e-Gov 耐用年数省令)。

区分法定耐用年数
総排気量0.66リットル以下の小型車(いわゆる軽自動車)4年
貨物自動車(ダンプ式以外)5年
その他の自動車(一般の乗用車)6年

中古車は簡便法で耐用年数が短くなる

中古資産の耐用年数は、残りの使用可能期間を見積もるのが原則ですが、見積りが難しい場合は簡便法を使えます(耐用年数省令3条1項2号、国税庁タックスアンサーNo.5404)。

法定耐用年数の全部を経過した資産:法定耐用年数 × 20%法定耐用年数の一部を経過した資産:(法定耐用年数 − 経過年数)+ 経過年数 × 20%※1年未満の端数は切り捨て、2年未満になる場合は2年

たとえば一般の乗用車(6年)で、新車登録から4年たった中古車なら、(6年−4年)+4年×20%=2.8年で、端数を切り捨てて2年になります。償却期間が短くなるため、取得直後の数年は減価償却費が大きくなります。中古資産全般の考え方は中古物件の減価償却と耐用年数も参考にしてください。

事業的規模かどうかで変わる点(個人)

個人の不動産所得では、事業として行っているか(いわゆる事業的規模か)によって扱いが変わる点があります。所得税基本通達26-9は、貸間・アパート等はおおむね10室以上、独立家屋はおおむね5棟以上を事業的規模の目安としています。

  • 資産損失:事業的規模の場合、業務用の車を廃棄した損失などは全額必要経費です(所得税法51条1項)。事業的規模でない場合は、その年の不動産所得の金額(この損失を差し引く前の金額)が必要経費算入の限度になります(同条4項)
  • 車の売却:業務用の車を売ったときの売却益は、不動産所得ではなく原則として総合課税の譲渡所得になります

裁決事例:記録のないガソリン代・高速代は認められない

車が1台で私用にも使っていたガソリン代(平成31年3月28日裁決)

平成31年3月28日裁決は事業所得の事案です。請求人はガソリン代の必要経費算入を主張しましたが、所有する車は1台で、食事のための移動など私的な用途にも使っていたことから、ガソリン代は家事関連費とされました。そのうえで、業務の遂行上必要な部分を明確に区分できないとして、必要経費への算入が認められませんでした。

事業専用車の費用は認容、それ以外は否認(平成25年7月9日裁決)

平成25年7月9日裁決は医師(青色申告)の事案です。事業専用と認められた車両の通勤のための高速代・ガソリン代・洗車代などは旅費交通費として認められました。一方、請求人はほかにも車両を持っていたため、その他の高速代・駐車場代は事業専用の車両に係るものと直ちには認められないとして、必要経費に算入されませんでした。

実務への示唆

2つの裁決からわかるのは、車が業務用か私用かを区別できる記録があるかどうかで結論が分かれるということです。車が1台なら走行距離の記録を、複数台あるなら業務用の車を特定し、その車の費用だけを計上できるようにしておくことが大切です。

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消費税と会計上の処理

消費税

車の購入代金、ガソリン代、車検の整備費用、有料駐車場代、高速代は課税仕入れです。インボイスを保存し、個人で按分する場合は業務使用部分だけを仕入税額控除の対象にします。自動車税などの租税公課は課税仕入れになりません。

ただし、住宅の家賃が中心の賃貸業は、非課税売上に対応する仕入れの税額控除が制限されます。課税売上割合が低ければ、車の消費税の多くは控除できないことになります。消費税の申告方法と課税売上割合の関係は、顧問税理士と確認してください。

会計上の処理

法人では、車は貸借対照表の「車両運搬具」に計上し、減価償却費は販売費及び一般管理費に表示します。ガソリン代などは車両費や旅費交通費です。車両ローンの利子は営業外費用の支払利息、車を売ったときの売却損益は、臨時的なものであれば特別損益として表示することが一般的です。いずれの区分も、企業会計の基準(GAAP:一般に公正妥当と認められる会計基準)と実態に沿って判断します。

銀行からの見え方

車の取得は、決算書のいくつかの数字を同時に動かします。

指標車の取得による影響
営業利益・経常利益減価償却費とガソリン代などで減る。中古車は償却期間が短く、取得直後の減少が大きい
償却前利益(経常利益+減価償却費)減価償却費は足し戻されるため、影響は小さい
借入金・債務償還年数車両ローンを組めば借入金が増え、債務償還年数が延びる
現預金・流動比率現金で買えば現預金が減る
実態純資産銀行は車の簿価を時価で見直すことがある

債務償還年数は、著書のモデルでは「(借入金−現預金)÷(経常利益+減価償却費−法人税等)」で計算します。減価償却費は分母で足し戻されるので、償却期間の短い中古車を買っても、この指標への影響は限定的です。しかし、営業利益・経常利益そのものを見る格付けの収益性の項目では、利益が小さく見えます。

不動産賃貸業の法人にとって、車は賃料を生む資産ではありません。業務に必要な範囲の車にとどめ、高額な車の購入やローンで現預金と返済力を削らないことが、銀行評価の面では合理的です。指標の考え方はICRとはや不動産投資家・賃貸業の法人の銀行格付けで解説しています。

実務のチェックポイント

  1. 車を業務専用にするか、私用と兼用するかを決めた
  2. 兼用する車は運行記録(日付・行き先・目的・走行距離)をつけ、年間の業務走行割合を計算した
  3. 減価償却は法定耐用年数(中古は簡便法)で計算し、個人は業務使用割合で按分した
  4. ガソリン代・駐車場代・高速代の領収書(インボイス)を保存し、物件名や目的をメモした
  5. 法人の車を役員や家族が私的に使っていないか、使う場合の負担の整理をした
  6. 個人の場合、事業的規模かどうかで資産損失や売却時の扱いが変わることを確認した
  7. 車両ローンを組む前に、借入金と現預金への影響を確認した

まとめ

  • 個人は、私用と兼用する車の費用を業務使用割合で按分し、明らかに区分できる部分だけを必要経費にする
  • 法人は、車の費用は損金だが、役員の私的利用分は役員給与とされるおそれがある
  • 一般の乗用車は6年、軽自動車は4年で償却。中古車は簡便法で短くなる
  • 記録がない、車が1台で私用にも使っている、といった場合のガソリン代は否認された裁決がある
  • 車の取得は利益・借入金・現預金を動かす。業務に必要な範囲にとどめることが銀行評価の面でも合理的

車両の持ち方や按分の根拠づくり、決算書への影響の確認は、不動産投資家向けサービスでご相談いただけます。

よくある質問

不動産賃貸業でも車の購入費やガソリン代を経費にできますか?
物件の巡回、入居者対応、修繕の立会いなど、業務に使っている部分は経費にできます。個人の場合、私用にも使う車は家事関連費になり、業務に使った割合を走行距離などで明らかに区分できる部分だけが必要経費です。車の購入費は一度に経費にはならず、減価償却を通じて耐用年数にわたって必要経費にします。
法人名義の車を休日に家族で使っても問題ありませんか?
法人の車を役員が私的に使うと、その利用分は役員への経済的な利益として役員給与とされるおそれがあります(法人税法34条4項、法人税基本通達9-2-9)。業務での使用が中心であることを運行記録などで示せるようにし、私的な使用が多い場合は、役員が使用料を負担するなどの整理が必要です。
事業用の車を売ったときの税金はどうなりますか?
法人では売却損益が損益計算書に計上され、法人税の課税所得に含まれます。個人では、業務用の車の売却益は原則として総合課税の譲渡所得となり、不動産所得には含まれません。事業的規模でない不動産所得の業務用の車を廃棄した場合の損失は、その年の不動産所得の金額が必要経費算入の限度になるなど、規模によって扱いが変わる点にも注意してください。

※本記事は2026年10月18日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。

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