運輸・物流

運送業(一般貨物自動車運送業)の動向と経営のポイント|2024年問題・燃料費・運賃転嫁と、銀行が見る決算書

トラック運送は、国内の貨物輸送の大部分を担う、暮らしと産業に欠かせない仕事です。一方で、運送会社の経営は、2024年4月から始まったドライバーの時間外労働の上限規制(いわゆる「物流の2024年問題」)、燃料費の変動、運賃の価格転嫁、そして相次ぐ法改正と、大きな転換期を迎えています。

この記事では、運送業(一般貨物自動車運送業)の経営を、統計と制度の数字で整理したうえで、中小運送会社の決算書の特徴、銀行が融資で見るポイント、車両の減価償却やリースなど税務の論点、事業承継・M&Aまでを、税理士・公認会計士の立場から解説します。

この記事の結論
  • トラック運送事業者は62,848者(2024年3月末)で、半数を超える54.8%が保有車両10両以下の小規模事業者
  • 全日本トラック協会の集計では、一般貨物運送事業の営業利益率は0.6%(2023年度決算)。人件費が37.7%、燃料油脂費が14.9%を占める
  • 2024年の標準的運賃の改定、時間外労働の上限規制、改正物流効率化法に続き、2025年6月には許可の更新制と「適正原価」を柱とする法改正が成立。価格転嫁と法令遵守が、会社の存続条件になりつつある
  • 銀行は、車両の借入・リースの返済負担を、利益と減価償却費でまかなえるかを見る。運転資金は、売上の入金と、人件費・燃料費の支払いのずれで生じる
  • 承継では、事業譲渡・合併は認可がなければ効力が生じない。運行管理の体制と行政処分の履歴が、企業価値を左右する

運送業の今:「2024年問題」から「適正原価」の時代へ

指標数字出典・時点
トラック運送事業者数62,848者(うち一般貨物57,459者)。2年連続で減少全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業 現状と課題 2025」(国土交通省資料、2024年3月末)
規模車両10両以下が54.8%、従業員10人以下が49.4%同上
営業用トラックの輸送量19億6,889万トン(2023年度)同上(国土交通省「自動車輸送統計年報」)
就業者トラック運送事業の就業者約198万人、うちドライバー等約86万人。50歳以上が51.0%同上(総務省調査、2024年)
最近の輸送量貨物営業用自動車 2026年6月 2億1,490万トン(前年同月比5.4%増)国土交通省「国土交通月例経済(令和8年9月号)」

出典:全日本トラック協会「日本のトラック輸送産業 現状と課題 2025」、国土交通省「国土交通月例経済(令和8年9月号)概況」

事業者の大半は中小企業で、全日本トラック協会は、一般貨物自動車運送事業者の99%以上が中小企業基本法上の中小企業にあたるとしています。荷物はある一方で、運ぶ人と時間が足りないのが、いまの運送業の状況です。

制度の動き:この2年半で何が変わったか

時期内容
2024年3月新しい「標準的運賃」を告示。運賃水準を約8%引き上げ、燃料費の算定基準を1リットル120円に。荷待ち・荷役が2時間を超えた場合の割増、下請手数料(運賃の10%)を設定
2024年4月ドライバーの時間外労働の上限(特別条項で年960時間)を適用。改善基準告示も改正され、年間の拘束時間は原則3,300時間以内に
2025年4月改正物流効率化法により、荷主・物流事業者に荷待ち・荷役時間の短縮などの努力義務。元請事業者には実運送体制管理簿の作成などを義務付け
2025年6月「トラック適正化二法」が成立。許可の5年ごとの更新制、国が定める「適正原価」を下回る運賃の制限、再委託を2次までに制限する努力義務、無許可の「白トラ」の利用禁止
2026年4月一定規模以上の荷主・物流事業者(トラック事業者は保有車両150両以上)が「特定事業者」に。中長期計画の作成や物流統括管理者の選任などを義務化
2026年4月1日軽油引取税の「当分の間税率」(いわゆる暫定税率)を廃止。1キロリットル当たり32,100円から15,000円に

出典:全日本トラック協会(前掲)、厚生労働省「はたらきかたススメ(トラック)」、国土交通省「物流効率化法について」、熊本県「軽油引取税」

トラック適正化二法のうち、許可の更新制と適正原価は、公布(2025年6月)から3年以内に施行される予定で、適正原価の導入に伴って標準的運賃は廃止されると全日本トラック協会は説明しています。国の資料では、何も対策をしなければ2030年には輸送能力が34%不足するという試算も示されています。

この流れが意味するのは、「安い運賃で、長時間走って稼ぐ」経営は、制度の上でも成り立たなくなるということです。逆に、原価を把握して運賃交渉の根拠を示し、法令を守れる会社には、運賃を上げる追い風が吹いています。

中小運送会社の収益構造と決算書の特徴

全日本トラック協会の「経営分析報告書」(2023年度決算版)による、一般貨物運送事業者の平均的な損益の構成は次のとおりです。

項目営業収益に対する割合ポイント
人件費(運送費)37.7%3年連続で上昇。ドライバーの処遇改善で今後も上がる
燃料油脂費14.9%軽油価格に連動。燃料サーチャージで転嫁できているか
修繕費5.9%車両の老朽化で増える
減価償却費5.5%車両の更新投資の大きさを表す
自動車リース料1.8%リースで調達すると、償却費ではなくここに出る
道路使用料3.7%高速道路料金。運賃とは別に収受できているか
一般管理費14.6%事務・営業の人件費など
営業利益0.6%営業損益が黒字の事業者は51%
経常利益2.2%営業外収益(2.4%)で上積みされている

出典:全日本トラック協会「経営分析報告書 令和5年度決算版」(前掲「現状と課題 2025」に掲載。集計2,451者の平均)

人件費と燃料費で売上の半分以上を占め、営業利益はほとんど残らないのが、平均的な運送会社の姿です。中小企業庁「中小企業実態基本調査」(令和6年調査・令和5年度決算実績)でも、運輸業・郵便業の中小企業の売上高経常利益率は3.44%(全産業4.37%)、自己資本比率は36.57%(同44.40%)と、全産業より低い水準でした(中小企業庁「中小企業実態基本調査」)。

決算書のもう一つの特徴は、車両という減価償却資産が大きいことです。事業用トラックの耐用年数は短く(後述)、買い替えのたびに大きな償却費が出ます。帳簿上の利益が少なくても、償却前の利益(キャッシュフロー)は出ている会社も多く、銀行はこの点を区別して見ます。

銀行は運送業のどこを見るか

車両の借入とリースを、キャッシュフローで返せるか

著書のモデルでは、債務償還年数=(借入金−現預金)÷(経常利益+減価償却費−法人税等)で、10年以内が健全、20年超は厳しいと見られます。運送業は減価償却費が大きいため、経常利益が小さくても、この式の分母は一定の水準になります。

注意したいのは、リースで車両を調達している場合です。リース料は費用として利益を減らしますが、減価償却費のように分母に足し戻されないことがあります。一方で、銀行はリース料を実質的な返済負担として見ることが多く、「借入は少ないが、リースの支払いが重い」会社は、見た目ほど余裕がないと判断されます。借入金の返済とリース料を合わせた年間の支払額を、償却前の利益でまかなえているかを、自社でも確認しておきましょう。

私自身、不動産投資で減価償却が速い物件を多く抱えた結果、帳簿上の資産より負債が大きい債務超過の状態になり、2019年に融資が止まった経験があります。償却の速い資産は、キャッシュは残っていても決算書の純資産を薄くしやすいことを、運送会社の経営者にも知っておいていただきたいと思います。

運転資金:入金と支払いのずれ

運送業の売上は、月末締め・翌月以降の入金といった掛けの取引が中心です。一方、ドライバーの給与や燃料費、高速道路料金は先に出ていきます。この入金と支払いのタイミングのずれが運転資金になります。売上が伸びる局面や、荷主の支払サイトが長い場合ほど資金が必要になるため、取引先別の入金条件と月々の支払いを資金繰り表にまとめておくと、銀行に必要額を説明しやすくなります(運転資金の融資はいくらが目安?)。

保証と、業界固有のリスク

中小企業実態基本調査(前掲)では、メインバンクからの借入で「経営者の本人保証を提供している」割合は、運輸業・郵便業が41.6%、「公的信用保証を提供している」割合も31.3%と、いずれも産業別で最も高い水準でした。運送業は、経営者保証や信用保証協会の保証付き融資への依存度が高い業種といえます。

銀行が運送業で特に気にするのは、次のような点です。

  • 特定の荷主への売上の集中(荷主の方針変更で売上が急減するリスク)
  • 重大事故や行政処分(車両停止・事業停止は売上に直結する)
  • 運賃改定の実績(標準的運賃や燃料サーチャージを使って、値上げを実現できているか)
  • 車両の年式と更新計画(古い車両が多いと、近い将来に大きな設備資金が必要になる)

運賃交渉の記録や改定の実績を示せることは、銀行にとって「この会社はコスト上昇を吸収できる」という材料になります。融資の審査の流れは銀行融資の審査で見られるポイントも参考にしてください。

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運送業特有の税務・会計の論点

車両の耐用年数と中古車

国税庁の耐用年数表では、運送事業用の自動車は、小型車(貨物自動車は積載量2トン以下)が3年、それ以外が4年、被けん引車は4年とされています(国税庁「主な減価償却資産の耐用年数表」)。中古車を取得した場合は、残りの使用可能期間を見積もるか、簡便法で耐用年数を計算します。

耐用年数が短いため、車両を買った期は償却費が大きく、利益が圧縮されます。車両の買い替えを決算対策として前倒しすると、利益と純資産が減り、銀行の評価を下げることもあります。買い替えは、車両の状態と資金繰り、借入の返済計画から決めるのが基本です。

リース取引の扱い

所有権が移転しないファイナンス・リースは、税務上は売買として扱われ、リース資産はリース期間で償却する(リース期間定額法)のが原則です。中小企業がリース料を賃借料として処理している場合でも、税務上はその金額を償却費として扱う取扱いがあります。会計処理の方法によって決算書の見え方(資産・負債に載るかどうか)が変わるため、銀行に説明できるよう、リース契約の一覧(残りの支払額と期間)を作っておきましょう。

軽油引取税と消費税

軽油引取税は、軽油の購入者が納める税で、特約店などが請求書で税額を明示して区分している場合、その部分は消費税の課税対象外です。区分されていない場合や、特別徴収義務者でないガソリンスタンドから買う場合は、税込の支払額全体が課税仕入れになります(国税庁タックスアンサーNo.6313)。燃料の仕入先ごとに、請求書の記載と会計処理が合っているか確認しておくと安心です。

傭車先・個人ドライバーとインボイス

運送業では、ほかの運送会社への傭車(下請け)や、個人のドライバーへの業務委託も少なくありません。インボイスの登録をしていない相手への支払いは、経過措置で控除できる割合が2026年10月1日から70%に下がりました。また、委託の実態が雇用と変わらない場合は、給与と認定されて源泉所得税や社会保険の問題になることがあります。契約書と業務の実態をそろえておきましょう(免税事業者からの仕入れの経過措置)。

事業承継・M&A:許可と「運行管理の体制」を引き継ぐ

運送業は、2024年問題への対応や車両・人材の確保のため、同業者どうしの統合や、規模の大きい会社への譲渡が検討されやすい業種です。中小企業のM&A全体の動きは中小企業M&Aの件数と最近の傾向で整理しています。

運送業の承継では、許可の扱いが方法によって異なります。

承継の方法一般貨物自動車運送事業の許可注意点
株式譲渡会社は変わらないため許可は残る役員の変更などの届出。運行管理者・整備管理者が退職しないか
事業譲渡・合併・分割国土交通大臣の認可がなければ効力を生じない(貨物自動車運送事業法30条)認可までの期間を見込んだスケジュール
個人事業主の相続死亡後60日以内に認可を受ける必要(同31条)期限を過ぎると承継できない

出典:国土交通省 近畿運輸局「事業計画等を変更される方・事業承継される方」ほか。詳しくは許認可はM&Aで引き継げるかを参照。

買い手が最も重視するのは、運行管理の体制と法令遵守の状況です。過去の行政処分、点呼や労働時間の管理、車両の整備記録は、デューデリジェンスで必ず確認されます。許可の更新制が始まれば、法令遵守の状況は許可そのものの存続にかかわるため、企業価値への影響はさらに大きくなります。

もう一つの大きな論点が、未払残業代です。ドライバーの労働時間の管理が不十分な会社では、M&Aの調査で多額の未払残業代が見つかり、譲渡価格が下がったり、取引そのものが止まったりすることがあります(労務DDと未払残業代のリスク)。売却や承継を考えるなら、まず労働時間と賃金の管理を整えることが先決です。

経営者が今やっておきたいこと

  • 車両1台ごと、荷主ごとの原価と採算を把握している
  • 標準的運賃や燃料サーチャージを根拠に、運賃改定を交渉し、記録を残している
  • 荷待ち・荷役の時間を記録し、運賃とは別の料金として請求している
  • 時間外労働と拘束時間が上限内に収まっているか、毎月確認している
  • 借入金の返済とリース料の合計を、償却前の利益でまかなえている
  • 車両の年式と更新計画、それに必要な資金の調達方法を決めている
  • 傭車先・委託ドライバーのインボイス登録状況と契約の実態を確認している
  • 運行管理者・整備管理者の後任と、後継者の候補を育てている

建設業の動向とポイントは建設業(総合工事業・工務店)の動向と経営のポイントで解説しています。

まとめ

  • 運送事業者の半数超は車両10両以下の小規模事業者で、平均の営業利益率は0.6%と薄い
  • 時間外労働の上限規制、標準的運賃、改正物流効率化法、トラック適正化二法と、制度は「適正な運賃と法令遵守」の方向に動いている
  • 銀行は、車両の借入とリースの返済を、償却前の利益でまかなえるかを見る。運賃改定の実績は大きな評価材料になる
  • 税務では、短い耐用年数、リースの扱い、軽油引取税の区分、傭車・委託とインボイスに注意する
  • 承継では、許可の認可手続きに加え、運行管理の体制、行政処分の履歴、未払残業代の有無が企業価値を左右する

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よくある質問

運送会社がトラックを買うとき、融資とリースのどちらがよいですか?
一概には言えません。融資で買えば車両は自社の資産になり、減価償却費が計上されます。リースは初期資金が少なく済みますが、リース料の総額は割高になりやすく、中途解約も原則できません。銀行は、リース料も実質的な返済負担として見ることが多いため、借入とリースを合わせた「年間の返済・支払額」が、利益と減価償却費でまかなえるかを確認しておくことが大切です。
事業用トラックの耐用年数は何年ですか?
国税庁の耐用年数表では、運送事業用の自動車は、積載量2トン以下の小型の貨物自動車が3年、それ以外の貨物自動車が4年、被けん引車が4年です。自家用(一般用)の自動車より短く設定されています。中古車を買った場合は、残りの使用可能期間を見積もるか、簡便法で耐用年数を計算します。
運送会社をM&Aで引き継ぐとき、許可はどうなりますか?
株式譲渡なら、会社自体が変わらないため一般貨物自動車運送事業の許可は残ります。事業譲渡や合併・分割の場合は、国土交通大臣の認可を受けなければ効力が生じません。個人事業主の相続では、死亡後60日以内に認可を受ける必要があります。いずれの場合も、運行管理者・整備管理者の体制と、過去の行政処分の有無を確認することが重要です。

※本記事は2026年10月20日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。

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