制度と最新動向

中小企業M&Aの件数と最近の傾向|2026年版中小企業白書のデータで見る、後継者不在・廃業・M&Aの今

「最近、M&A仲介会社からの電話やダイレクトメールが増えた」。オーナー経営者の方から、よくこんな話を聞きます。実際に、中小企業のM&Aは増えています。けれども、件数が増えるにつれて、支援の質やトラブルの問題も表に出てきました。

この記事では、2026年4月に閣議決定された「2026年版中小企業白書」のデータを中心に、中小企業M&Aの件数と最近の傾向を整理します。数字の背景にある後継者不在や廃業の状況、国が進める市場改革、金融機関の動きまで押さえておくと、自社の承継をいつ、どう考えるかの材料になります。

この記事の結論
  • 日本企業のM&A件数は2025年に5,115件(レコフデータ調べ)。2023年4,015件、2024年4,700件から増加が続いている
  • 公的窓口の事業承継・引継ぎ支援センターの第三者承継の成約件数も2025年度2,265件と過去最多
  • 中小企業の後継者不在率は50.8%(2025年)。下がってはいるが、約半数の会社で後継者が決まっていない
  • 休廃業・解散は6.8万件(2025年)で高い水準。その約半数は黒字のまま廃業している
  • 市場の拡大とともに悪質な買い手の問題も表面化。国は中小M&A市場改革プラン(2025年8月)で、ルールの整備や支援者の資格制度の検討を進めている

数字で見る中小企業M&Aの今

まず、2026年版中小企業白書などの公的資料から、主な数字を一覧にします。

指標数字出典
日本企業のM&A件数2023年 4,015件 → 2024年 4,700件 → 2025年 5,115件中小企業白書2026年版 第1-1-46図(レコフデータ調べ)
事業承継・引継ぎ支援センターの第三者承継の成約件数2023年度 2,023件 → 2024年度 2,132件 → 2025年度 2,265件同 第1-1-47図、中小機構の発表(2026年5月)
同センターの相談者数(第三者承継)2024年度 1万6,045者同 第1-1-47図
登録M&A支援機関を通じたM&A2024年度 4,940件中小企業庁長官の講演(経団連タイムス 2026年5月28日)
登録M&A支援機関(FA・仲介)の数3,362件(2026年9月24日時点)中小企業庁

レコフデータの件数は、公表された案件を中心に集計したものなので、表に出ない小さなM&Aはすべては含まれていません。それでも、民間の仲介会社・FA、公的な支援センターのどちらの数字を見ても、中小企業のM&Aは増加傾向にあることがわかります。

事業承継・引継ぎ支援センターの成約件数は、2012年度の17件から、2025年度には2,265件まで増えました。公的な窓口を通じて、小規模な会社のM&Aも身近になってきています。

背景1:後継者不在は「改善」しつつも約半数

M&Aが増えている最大の理由は、後継者がいない会社が多いことです。白書が帝国データバンクのデータを加工した数字では、中小企業の後継者不在率は次のように推移しています。

年全体経営者60代経営者70代経営者80代以上
2018年67.2%53.0%41.2%32.1%
2021年62.3%47.8%36.2%28.2%
2025年50.8%36.3%26.5%21.3%

(出典:2026年版中小企業白書 第1-1-44図。「全体」には経営者年齢の情報がない企業も含む)

後継者不在率は下がっており、白書も「後継者不在の解消が一定程度進んでいる」と評価しています。M&Aや社内承継など、親族以外への承継が選択肢として定着してきたことも一因と考えられます。

それでも、全体では約半数、経営者が60代の会社でも3社に1社以上で後継者が決まっていません。しかも、白書によれば2025年は60歳以上の経営者が過半数を占めています。承継の準備には数年かかるため、今の60代の経営者にとって、承継は「そろそろ」ではなく「今」のテーマです。

背景2:黒字のまま廃業する会社が多い

もうひとつの背景が廃業です。白書が引用する帝国データバンクの調査では、休廃業・解散の件数は次のとおりです。

年休廃業・解散件数うち黒字の割合休廃業・解散した企業の経営者の平均年齢
2022年53,426件54.3%71.0歳
2023年59,105件51.9%70.9歳
2024年69,019件51.1%71.3歳
2025年67,949件49.1%71.5歳

(出典:2026年版中小企業白書 第1-1-41図〜第1-1-43図。黒字・赤字は休廃業・解散の直前の当期純利益で判定)

2024年・2025年は年間7万件近い会社が休廃業・解散しており、その約半数は直前期に黒字でした。中小企業庁長官も2026年4月の講演で、廃業の理由の約3割が後継者の不在であると述べています。利益が出ているのに、継ぐ人がいないために会社を閉じる。M&Aは、こうした会社の事業と雇用を残す手段として期待されています。

廃業と売却で、オーナーの手元に残るお金がどう違うかは、廃業と売却の比較で詳しく解説しています。

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背景3:中小M&A市場の拡大と、見えてきた問題

M&Aが増えるにつれて、問題も見えてきました。2026年版中小企業白書のコラムは、中小M&A市場の課題を次のように整理しています。

  • 地方や比較的小規模な中小企業には、M&Aがまだ十分に普及していない
  • M&A支援機関は増えたが、一部で支援の質が疑問視される事態が起きている
  • 不適切な譲り受け側(買い手)の存在が指摘されている

特に深刻なのが、悪質な買い手の問題です。白書によると、2024年以降、不適切な買い手が経営の苦しい会社を買収した後、会社から資金を吸い上げる一方、売り手の経営者が負っている経営者保証を解除しないまま連絡を絶つ手口を繰り返す事案が指摘されています。売り手は会社も売却代金も失い、保証債務だけが残ることになります。具体的な手口と身を守る方法は悪質な買い手・トラブル事例と身を守る方法で解説します。

中小M&A市場改革プラン(2025年8月)

こうした状況を受けて、中小企業庁は2025年4月に検討会を設け、同年8月に「中小M&A市場改革プラン」を取りまとめました。白書に紹介されている主な内容は次のとおりです。

分野主な施策
売り手側地域金融機関や商工団体による事業承継ニーズの掘り起こし、最終契約のひな形の改訂(経営者保証の解除等が履行されない場合に売り手の意思で買い戻せる条項などを新設)、M&A前の財務状況の精査の促進、取引相場を把握するツールの公表
市場登録M&A支援機関の業務内容・成約実績などの開示強化、仲介・FA手数料の比較可能性を高める検討、M&A支援者個人の資格制度の検討
買い手側複数回のM&A(グループ化)の推進(事業再編投資損失準備金、日本政策金融公庫の融資)、小規模案件を扱うファンドへの支援、PMI(統合後の取組み)の支援

白書は、経営者が60代以上で事業承継の意向が決まっていない中小企業の財務状況を見ると、資産超過かつ黒字の会社は約5割で、残りは赤字または債務超過であり、M&Aの実現可能性にはばらつきがあると指摘しています。そのため、公認会計士や税理士などの専門家による、売り手の財務状況や事業の特徴の精査を促すとしています。

金融機関もM&A・事業承継支援に本格参入

もうひとつの大きな流れが、銀行・信用金庫などの金融機関の動きです。金融庁は2026年2月に監督指針を改正し(同年4月適用)、金融機関によるフィナンシャル・アドバイザー(FA)業務、他の金融機関とのマッチングのプラットフォームへの参加、事業承継・引継ぎ支援センターとの連携などの取組みを明確にしました。2026年7月の金融庁のプログレスレポートでは、企業がM&A・事業承継を検討する際の相談先として金融機関の重要性が高く、金融機関による支援件数も増加傾向にあると分析しています。

同じ改正では、中小M&Aガイドライン(第3版)の趣旨を踏まえ、M&Aに伴う経営者保証の扱いについても金融機関の対応が求められています。取引銀行に早めに相談することは、相手探しだけでなく、経営者保証の解除を確実にする意味でも大切です。詳しくは事業承継と経営者保証をご覧ください。

これからM&Aを考える経営者へ:数字から読み取れること

以上のデータから、オーナー経営者にとっての示唆を3つにまとめます。

  1. 「売れるうちに考える」ことが大切。休廃業・解散の約半数が黒字という事実は、準備が遅れると、利益が出ていても事業を残せないことを示しています。赤字や債務超過になってからでは選択肢が狭まります(赤字・債務超過の会社は売れるか、継げるか)
  2. 支援者は慎重に選ぶ。支援機関が3,000件を超えた今、登録の有無だけでなく、手数料体系、利益相反への対応、経営者保証の扱いの説明があるかを確認しましょう(M&A支援機関登録制度と業者の選び方)
  3. 公的な支援も使う。事業承継・引継ぎ支援センター、事業承継・M&A補助金など、使える制度は広がっています(事業承継・M&Aの補助金と公的支援)

M&Aの件数が増えたからといって、すべての会社が売れるわけではありません。買い手は、決算書の数字、正常な収益力、借入の状況、従業員や取引先との関係を見て判断します。銀行から見て健全な決算書は、M&Aでも評価される決算書です。売却を考え始めたら、まず売る前の磨き上げから始めることをおすすめします。

まとめ

  • 日本企業のM&A件数は2025年に5,115件、事業承継・引継ぎ支援センターの成約も2025年度2,265件と、いずれも増加が続いている
  • 後継者不在率は50.8%(2025年)に下がったが、約半数の会社で後継者が決まっていない。経営者の過半数が60歳以上
  • 休廃業・解散は年間約6.8万件で、その約半数が黒字のまま廃業している
  • 市場拡大とともに悪質な買い手の問題が表面化。中小M&A市場改革プラン、ガイドライン改訂、金融機関の監督指針改正などで対策が進んでいる
  • 自社の承継は、数字が健全なうちに準備を始めるほど選択肢が広がる

クレフティでは、売却を考え始めた段階での財務状況の整理、株価の目安の試算、支援機関の選び方や契約条件の確認まで、事業承継・M&A支援の中でご相談をお受けしています。初回のご相談は無料です。担当者がお話を伺い、その後は担当の公認会計士・税理士やコンサルタントが対応します。

よくある質問

中小企業のM&Aは、本当に増えているのですか?
増えています。2026年版中小企業白書が引用するレコフデータの調べでは、日本企業のM&A件数は2025年に5,115件となり、2024年の4,700件から増えました。公的な相談窓口である事業承継・引継ぎ支援センターの第三者承継の成約件数も、2024年度2,132件、2025年度2,265件と過去最多を更新しています。
後継者がいない会社は、どのくらいありますか?
2026年版中小企業白書(帝国データバンクのデータを加工)によると、中小企業の後継者不在率は2025年に50.8%でした。2018年の67.2%からは下がっていますが、依然として約半数の会社で後継者が決まっていません。一方、2025年は経営者が60歳以上の中小企業が過半数を占めています。
M&Aが増えて、トラブルも増えているのですか?
中小企業庁は、2024年以降、不適切な買い手が経営の苦しい会社を買収した後に資金を吸い上げ、売り手の経営者保証を外さないまま連絡を絶つ事案が指摘されているとしています。これを受けて、中小M&Aガイドラインの改訂、最終契約のひな形への買戻し条項の新設、不適切な買い手の情報共有の仕組みづくりなどが進められています。

※本記事は2026年10月18日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。

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