外部への売却(M&A)

M&A支援機関登録制度とは|登録の要件・データベースの見方・取消しの実例と、仲介会社・FAの選び方

M&A仲介会社の数は、ここ数年で大きく増えました。会社を売ろうと考えたとき、どの業者に頼めばよいのか、判断材料が少ないと感じる経営者は多いと思います。その判断の入口になるのが、中小企業庁のM&A支援機関登録制度です。

この記事では、登録制度の仕組み、登録の要件と登録後の義務、データベースで分かること、登録取消しなどの実例を、制度の公募要領(令和8年度)と中小企業庁・登録制度事務局の公表資料で確認しながら解説します。そのうえで、仲介会社・FAの選び方を、特定の会社名ではなく制度の側から整理します。

この記事の結論
  • M&A支援機関登録制度は2021年8月に創設。中小M&Aガイドラインの遵守を宣言した仲介者・FAを登録する
  • 登録数は3,362件(2026年9月24日時点。法人2,590件、個人事業主772件)
  • データベースで、登録機関の手数料体系(報酬率・報酬基準額・最低手数料)や専従者数を確認できる
  • 登録は品質の保証ではない。ガイドライン違反には注意・社名公表・登録取消しがある
  • 選ぶときは、登録の有無に加え、手数料の絶対額、担当者の経験、買い手の調査体制、契約条項を確かめる

M&A支援機関登録制度とは

創設の経緯

中小企業庁は2021年4月28日、中小企業のM&Aを進めるために今後5年間に行う官民の取組を「中小M&A推進計画」としてまとめました。その中で、中小企業のM&A支援機関に対する信頼感の醸成が課題として掲げられ、同年8月にM&A支援機関登録制度が創設されました。

制度の柱は次の3つです。

  1. 中小M&Aガイドラインの遵守を宣言した仲介者・FAを登録する
  2. 「事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)」で、仲介・FAの手数料は登録機関によるものだけを補助対象にする
  3. 登録機関の支援をめぐる問題を受け付ける情報提供受付窓口を置く

登録の対象

登録の対象は、中小企業とFA業務または仲介業務の契約を結び、手数料を受け取ってマッチング支援やM&Aの手続進行の総合的な支援を行う者です。専業のM&A業者に限らず、仲介業務を行う金融機関なども対象になります。一方、デューデリジェンスだけを行う士業等専門家や、マッチングサイトの提供だけを行う事業者は、登録の必要はありません。登録は「FA業務のみ」「仲介業務のみ」「両方」の区分ごとに行われます。

登録の要件と、登録後に守ること

主な登録要件

公募要領(令和8年度)が定める主な要件は次のとおりです。

要件中身
ガイドラインの遵守宣言中小M&Aガイドラインの行動指針を遵守すると宣言する
宣言の公表遵守宣言を自社のホームページ(なければ会社案内など)に掲載する
顧客の相談を妨げない秘密保持条項の内容にかかわらず、顧客が情報提供受付窓口や事業承継・引継ぎ支援センターに相談することを制約しない
反社会的勢力でないこと役員等を含め反社会的勢力に該当せず、関係を持たない
取消し後の再登録登録取消しを受けた者は、措置期間の経過と適切な再発防止策が必要
情報の報告と公表への同意手数料体系、プロセスごとの業務内容を報告し、データベースでの公表に同意する

登録後の遵守事項

登録後も、毎年度の報告などが求められます。守られていない場合は、登録の取消し、期間を定めて登録しない措置、翌年度以降の登録継続を認めないといった対応がありえます。

  • 契約締結の際、顧客にガイドラインの遵守について資料をもって事前に説明する
  • 手数料体系や支援業務の内容が変わったら速やかに報告する
  • 毎年度、前年度の支援について共通報告・実績報告(成約がなければ活動報告)を提出する
  • 事務局からの報告の求めや調査に協力する

データベースで確認できること

登録制度のホームページでは、登録FA・仲介業者のデータベースを公開しています。中小M&Aガイドラインによれば、次のような項目を確認・検索できます。

項目見るポイント
登録機関の種類専門業者か、金融機関か、士業か
M&A支援業務の開始時期業務の経験年数の目安
専従者数・所在地組織の規模、地域
手数料体系成功報酬の報酬率、報酬基準額(譲渡額・純資産・移動総資産など)、最低手数料、報酬の発生タイミング

最低手数料の水準や報酬基準額の種類で検索することもできます。2026年4月には、株式価値の簡易計算ツールと手数料の簡易計算ツールも公開されました。手数料の計算の仕組みはM&Aの手数料(レーマン方式・最低手数料)で解説しています。

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情報提供受付窓口と、登録取消しの実例

情報提供受付窓口

登録機関の対応に不適切な点を感じた中小企業は、事務局内の情報提供受付窓口(受付フォーム:https://ma-shienkikan.go.jp/inappropriate-cases)に情報を提供できます。匿名でも受け付けています。寄せられた情報は登録機関へのヒアリングなどに使われ、内容によって注意、対策の指示、社名公表、登録取消しにつながります。ただし、窓口は紛争解決や助言を目的とするものではありません。

事務局の案内資料には、窓口に寄せられる典型的な相談として、次のような事例が載っています。

  • サービスの履行が不十分、契約の条件や約束を守らないなど、不誠実な対応を受けた
  • 成功報酬は売却代金の5%と聞いていたが、最低報酬金額が適用され、想定より高い手数料になった
  • 株式の譲渡金額の評価手法や前提条件について、事前の説明がなかった
  • 仲介者が自らDDを行い、DDが不十分だった。専門家の意見を求められることを知らされなかった

公表された措置

公表日対応
2024年10月30日売り手の経営者保証を引き受けず、現預金などの資産を移して支払不能・倒産に至らせる行為を繰り返した買い手とのM&Aを支援した登録機関15者に注意。対策がとられるまで事業承継・引継ぎ支援センターとの連携を停止
2025年1月24日資金力に疑義のある不適切な買い手と認識しながらM&Aを成立させたなど、善管注意義務の規定に違反したとして、登録機関1社の登録を取消し(欠格期間8か月)。ほか6社に注意
2025年3月14日不適切な買い手とのM&Aを支援した登録機関1社に注意。対策が不十分なら翌年度以降の登録継続を認めない旨を通知
2026年9月1日営業の停止意思を示した先への営業を再開した登録機関1社に、2度目の注意。再発時は社名公表や登録取消しを含めて検討

登録取消しを受けた業者の名称は、事務局の公表資料に掲載されます。依頼を検討している業者がいれば、公表資料もあわせて確認しておくと安心です。こうしたトラブルの手口と身の守り方は悪質な買い手・トラブル事例と身を守る方法でも取り上げます。

仲介会社・FAの選び方:7つのチェックポイント

中小企業庁は、M&Aを検討する中小企業に向けて、まず登録機関の中から選ぶこと、そのうえで手数料や支援の内容・質を確認することを呼びかけています。ガイドライン第3版の内容とあわせると、確認すべき点は次の7つです。

チェックポイント確認方法
① 登録されているかデータベースで検索。取消しの公表がないかも確認
② 遵守宣言を掲載しているか業者のホームページ
③ 手数料の絶対額想定譲渡額で、最低手数料・報酬基準額を当てはめて計算してもらう
④ 担当者の資格・経験保有資格、経験年数・成約実績は契約前の説明事項
⑤ 仲介かFAか双方から手数料を受け取るか。利益相反の禁止事項が契約書にあるか
⑥ 買い手の調査体制財務状況・反社チェック・事業実態の調査の概要、業界の情報共有の仕組みへの参加の有無
⑦ 契約条項専任条項(目安6か月〜1年)、直接交渉の制限、テール条項(目安2〜3年)、中途解約、免責

業者を比べるには、同じ条件で複数社から説明を受けるのが近道です。ガイドラインは、手数料や業務内容に疑問がある場合、事業承継・引継ぎ支援センターや士業等専門家への相談(セカンド・オピニオン)を勧めています。同業の仲介会社に意見を聞く「狭義のセカンド・オピニオン」は、営業の機会と捉えられて中立性を欠くおそれがあるとも注意しています。仲介とFAの違いはM&A仲介とFAの違いをご覧ください。

税金・銀行の目線から見た業者選び

補助金と税務

登録機関に依頼すると、仲介・FAの手数料が「事業承継・M&A補助金(専門家活用枠)」の補助対象になりえます。補助率や上限は公募回ごとに変わるため、最新の公募要領で確認が必要です。DD費用は、登録の有無にかかわらず補助対象になりうるとされています。

手数料そのものは、個人株主が株式を売る場合、譲渡所得の計算で譲渡費用として差し引くのが一般的です。非上場株式の譲渡益には20.315%(所得税15%・住民税5%・復興特別所得税)がかかるため、手数料の差は手取りの差になります。税務の扱いが分かれやすい着手金や中途解約時の支払は、契約前に税理士と確認してください。

金融機関もM&A支援をしている

取引銀行や信用金庫が、仲介業務やFA業務を行っていることもあります。金融機関も登録制度の対象です。普段の取引があるため相談しやすい一方、ガイドラインは、金融機関には情報管理の徹底や、経営者保証に関するガイドラインに沿った対応を求めています。借入や経営者保証の扱いを同じ金融機関と話し合う場面もあるため、どの立場で支援を受けるのかを最初に確認しておくと、後の調整がしやすくなります。経営者保証の考え方は経営者保証の解除、銀行との付き合い方は銀行員との付き合い方もご覧ください。

まとめ

  • M&A支援機関登録制度は、中小M&Aガイドラインの遵守を宣言した仲介者・FAを登録する国の制度。登録数は2026年9月時点で3,362件
  • データベースで手数料体系や専従者数を比べられる。簡易計算ツールもある
  • 登録は品質の保証ではない。ガイドライン違反には注意・社名公表・登録取消しがあり、実例も公表されている
  • 業者選びは、登録の有無に加え、手数料の絶対額、担当者、買い手の調査、契約条項の7点を確認する
  • 疑問があれば、事業承継・引継ぎ支援センターや士業等専門家に中立のセカンド・オピニオンを求める

ガイドラインの全体像は中小M&Aガイドラインの要点で整理しています。クレフティは税理士法人として、仲介会社・FAから提示された手数料や条件の確認、株価算定、財務・税務デューデリジェンスを、事業承継・M&A支援でお受けしています。初回のご相談は無料です。担当者がお話を伺い、その後は担当の公認会計士・税理士が対応します。

よくある質問

登録されている仲介会社なら、安心して任せてよいですか?
登録は一定の要件を満たしたことを示すものですが、品質の保証ではありません。M&A支援機関登録制度の公募要領にも、登録はFA・仲介業者の中小M&A支援の品質を保証するものではないと明記されています。中小企業庁も、登録機関であっても支援の質は異なるため、具体的な説明を踏まえて支援を受けるか決めるよう呼びかけています。
登録されているかどうかは、どこで確認できますか?
M&A支援機関登録制度のホームページ(ma-shienkikan.go.jp)で、登録FA・仲介業者のデータベースを検索できます。登録機関の種類、M&A支援業務の開始時期、専従者数、所在地のほか、報酬率や報酬基準額、最低手数料といった手数料体系も確認できます。中小企業庁のホームページでも、毎月の登録結果が公表されています。
仲介会社とのトラブルは、どこに相談すればいいですか?
登録機関とのトラブルは、M&A支援機関登録制度の情報提供受付窓口に情報提供できます。匿名でも受け付けており、登録機関は、顧客が窓口に相談したことだけを理由に秘密保持義務違反として不利益な扱いをしないことを誓約しています。ただし窓口は紛争解決を目的としていないため、損害の回復などは弁護士への相談が必要です。

※本記事は2026年10月18日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。

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