取得・建築

地鎮祭・上棟式・竣工式の費用の処理|取得価額か経費か、交際費になる部分・ならない部分(法人・個人・消費税)

新築のアパートやマンションでは、着工前に地鎮祭、骨組みが立ち上がったところで上棟式、完成時に竣工式や内覧会を行うことがあります。一回の金額はそれほど大きくなくても、神職への玉串料、祭壇の設営、職人へのご祝儀、参列者の飲食、記念品と、支出の種類が多いのが特徴です。

これらは、建設のための費用として建物の取得価額に入るもの、竣工後の記念費用として経費にできるもの、そして法人では交際費等になるもの・ならないものに分かれます。この記事では、通達をもとに税務上の扱いを整理し、個人との違い、消費税、領収書のない支出の記録、決算書と銀行からの見え方まで解説します。

この記事の結論
  • 地鎮祭・上棟式は建設工事に伴う儀式。その費用は建物の取得価額に含める考え方が基本
  • 竣工式・落成式などの記念費用は、取得後の付随費用として取得価額に算入しないことができる(法人税基本通達7-3-7)
  • 法人では、式典の祭事のために通常要する費用は交際費等に当たらない。招待客への宴会費・交通費・記念品代は交際費等(措置法通達61の4(1)-15(1))
  • 従業員等におおむね一律に社内で供与する通常の飲食は交際費等に含まれない(同61の4(1)-10(1))
  • 玉串料やご祝儀は領収書が出ないことが多い。日付・金額・相手・目的を記録する

式典ごとの税務上の扱い

取得価額に入るか:建設中か、取得後か

自己が建設した減価償却資産の取得価額は、建設のために要した原材料費、労務費及び経費の額と、その資産を事業の用に供するために直接要した費用の額の合計額です(法人税法施行令54条1項2号、所得税法施行令126条1項2号)。地鎮祭や上棟式は、建物を建てる工事の過程で慣行として行う儀式なので、その費用は建設のために要した経費として取得価額に含めるのが基本的な考え方です。

一方、法人税基本通達7-3-7は、新工場の落成、操業開始等に伴って支出する記念費用等のように減価償却資産の取得後に生ずる付随費用の額は、取得価額に算入しないことができるとしています。竣工式や落成式の費用は、これに当たると考えられます。

式典主な支出取得価額との関係法人の交際費等の判定
地鎮祭(起工式)玉串料・初穂料、祭壇設営、供物建設のための費用として取得価額に含める考え方が基本祭事のために通常要する費用は交際費等に当たらない
地鎮祭の直会(なおらい)・お車代参列した取引先等への飲食・交通費同上原則として交際費等
上棟式祭事の費用、職人へのご祝儀・飲食・引き出物同上祭事の費用以外は原則として交際費等
竣工式・落成式祭事の費用、招待客の飲食・記念品取得後の記念費用として取得価額に算入しないことができる祭事の費用以外は原則として交際費等
入居者募集のための内覧会会場設営、案内、広告取得価額ではなく募集のための費用広告宣伝費として整理するのが通常

法人の交際費等:措置法通達の線引き

措置法通達61の4(1)-15は、交際費等に含まれる費用の例として、「会社の何周年記念又は社屋新築記念における宴会費、交通費及び記念品代並びに新船建造又は土木建築等における進水式、起工式、落成式等におけるこれらの費用」を挙げています((1))。そのうえで注書きで、進水式、起工式、落成式等の式典の祭事のために通常要する費用は、交際費等に該当しないとしています。

つまり、同じ式典の支出でも、

  • 祭事そのもの(神職への謝礼、祭壇・お供え物など)に通常かかる費用 → 交際費等に当たらない
  • 式典に招いた取引先・関係者への宴会・交通費・記念品 → 原則として交際費等

と分かれます。

また、創立記念日や新社屋落成式等に際し、従業員等におおむね一律に社内において供与される通常の飲食に要する費用は、交際費等に含まれません(措置法通達61の4(1)-10(1))。不動産賃貸業の法人で従業員がいる場合の社内の竣工祝いなどが、これに当たり得ます。

上棟式で施工会社の職人に渡すご祝儀は、取引先の関係者への金品なので、交際費等に当たるのが一般的です。交際費等の全体像は不動産賃貸業の交際費で解説しています。

取得価額に含めた交際費等の扱い

建設のための費用として建物の取得価額に含めた支出の中に交際費等があっても、交際費等の損金不算入額の計算では、支出の事実があった事業年度の交際費等に含めます(措置法通達61の4(1)-24(1))。そのうえで、損金不算入額のうち取得価額に含まれている部分は、取得価額を減額する調整をすることができます(同61の4(2)-7)。金額は小さくても、勘定科目の内訳で交際費等に当たる部分がわかるようにしておきましょう。

法人と個人の違い

論点法人個人
地鎮祭・上棟式の費用建物の取得価額に含める考え方が基本同じく取得価額に含める考え方が基本
竣工式・落成式の記念費用取得価額に算入しないことができる(7-3-7)同じ趣旨の通達の定めはない。業務との関連で必要経費か判断
取引先等への飲食・記念品交際費等(中小法人の定額控除限度額などの規定の範囲で損金)業務との関連性があれば必要経費。交際費等の損金不算入の規定はない
初めての物件で業務開始前に払ったもの設立後なら通常の処理取得価額に入るもの以外は、開業費(繰延資産)に当たるかを検討

個人の場合、交際費等の損金不算入の規定はありませんが、業務との関連性が説明できない支出は必要経費になりません。家族や友人を招いた祝いの席の費用は、家事費として扱われる可能性が高くなります。業務開始前の費用と開業費の関係は新築の竣工前後に出る費用の扱いで整理しています。

消費税と記録の残し方

消費税の区分

支出消費税の扱いの傾向
神社に納める玉串料・初穂料対価性がないものとして課税仕入れに当たらない(不課税)と整理されるのが一般的
施工会社や業者に払う祭壇設営・テント・音響などの費用課税仕入れ
飲食代・記念品代課税仕入れ(インボイスの保存が必要)
職人へのご祝儀(現金)課税仕入れに当たらない

地鎮祭の費用を施工会社がまとめて立て替え、工事代金と一緒に請求してくることもあります。その場合は、玉串料などの立替分と、設営などの役務の対価を分けて請求してもらうと、消費税の区分が明確になります。

領収書が出ない支出の記録

玉串料やご祝儀は、領収書が発行されないか、のし袋で渡して終わることが多い支出です。税務上の処理を説明するために、次のような記録を残しておきます。

  1. 出金伝票などに、日付・金額・支払先(神社名・相手の会社名と人数)・目的(〇〇新築工事の地鎮祭など)を記載する
  2. 式典の案内状、式次第、参列者の一覧、写真を保存する
  3. 神社の初穂料の案内(金額の目安が書かれたもの)があれば一緒に保存する
  4. ご祝儀は、渡した相手の範囲と一人当たりの金額をメモに残す

領収書のない支出の扱いは領収書がない支出は経費になる?、慶弔費の扱いは取引先の香典・祝儀は経費になる?で詳しく解説しています。現金での支払いは、記録がなければ説明が難しくなります。正しい処理と記録の残し方を、式典の前に決めておくのが安全です。

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会計上の扱いと決算書の表示

企業会計(一般に公正妥当と認められる会計基準(GAAP:Generally Accepted Accounting Principles)。中小企業では「中小企業の会計に関する指針」や「中小企業の会計に関する基本要領」など)では、固定資産の取得原価に、その資産を使用できる状態にするまでの付随費用を含めます。建設中の儀式の費用を建設仮勘定に含め、竣工後の記念行事の費用は期間の費用とするのが、実態に沿った処理です。

支出税務決算書の表示の例
地鎮祭・上棟式の祭事の費用取得価額建設仮勘定 → 建物
地鎮祭・上棟式の取引先への飲食・ご祝儀取得価額に含めつつ交際費等として計算、または交際費として費用処理(方針による)建設仮勘定、または販管費(交際費)
竣工式の記念費用取得価額に算入しないことができる販管費(交際費、福利厚生費など)
内覧会・募集の費用期間の費用販管費(広告宣伝費)

どの費用を取得価額に含め、どの費用を期間の費用にするかは、物件ごとにばらばらにせず、会社の方針として決めて継続することが大切です。

銀行からの見え方

式典の費用は、建物全体の工事費に比べれば小さな金額です。銀行の格付けを大きく動かすことはまずありません。ただ、著書でも触れているとおり、物件取得時の費用が不必要に販管費に入って営業利益を圧迫していないかは、決算書を整えるうえでの定期的な確認項目です。取得価額に含めるべき費用を交際費などに入れていないか、竣工の期の販管費の内訳を見直してみてください。

反対に、竣工の期に交際費が膨らんでいると、決算書を見た銀行の担当者から内容を聞かれることがあります。竣工式や内覧会など一時的な支出であることを、内訳と式典の記録で説明できるようにしておけば十分です。新築の竣工前後に先行する広告費の考え方は新築時に先行する広告費は資産計上できるかで解説しています。

実務のチェックポイント

  1. 地鎮祭・上棟式の費用を、建設仮勘定に含める方針にしたか
  2. 竣工式・落成式の記念費用を、取得価額に入れるか期間の費用にするか決めたか
  3. 法人の場合、祭事の費用と、招待客への飲食・交通費・記念品代(交際費等)を分けたか
  4. 取得価額に含めた交際費等を、支出した期の交際費等の計算に含めたか
  5. 施工会社がまとめて請求した費用を、立替分と役務の対価に分けてもらったか
  6. 玉串料・ご祝儀の出金伝票、式次第、参列者一覧、写真を保存したか
  7. 内覧会など入居者募集の費用を、式典の費用と区別したか

まとめ

  • 地鎮祭・上棟式は建設工事に伴う儀式で、その費用は建物の取得価額に含める考え方が基本
  • 竣工式・落成式などの記念費用は、取得後の付随費用として取得価額に算入しないことができる(法人税基本通達7-3-7)
  • 法人では、式典の祭事のために通常要する費用は交際費等に当たらず、招待客への宴会費・交通費・記念品代は交際費等
  • 取得価額に含めた交際費等も、支出した期の交際費等として計算する
  • 玉串料やご祝儀は領収書が出ないことが多いため、日付・金額・相手・目的を記録しておく

新築の諸費用の全体像は物件取得時の諸費用一覧で整理しています。新築計画の段階からのご相談は、不動産投資家向けサービスをご覧ください。

よくある質問

賃貸アパートの地鎮祭の費用は、経費になりますか?
地鎮祭は建物の建設工事に伴って行う儀式で、その費用は建設のために要した経費として建物の取得価額に含める考え方が基本です。法人税基本通達7-3-7が「取得価額に算入しないことができる」としているのは、落成や操業開始に伴う記念費用など、取得後に生ずる付随費用です。金額が小さい場合の実務上の扱いも含め、顧問税理士と方針を決めておきましょう。
法人で地鎮祭の玉串料を払った場合、交際費になりますか?
措置法通達61の4(1)-15(1)の注は、進水式、起工式、落成式等の式典の祭事のために通常要する費用は交際費等に該当しないとしています。神職に払う玉串料や祭壇の設営費など、祭事そのものに通常かかる費用は交際費等になりません。一方、式典に招いた取引先などへの宴会費、交通費、記念品代は、原則として交際費等に含まれます。
上棟式で大工さんに渡したご祝儀は、どう処理しますか?
法人の場合、施工会社の職人など取引先の関係者への金品は、交際費等に当たるのが一般的です。建物の建設に伴う支出として取得価額に含める場合でも、交際費等の損金不算入額の計算では、支出した事業年度の交際費等に含めます(措置法通達61の4(1)-24)。現金で渡すため領収書が出ないことが多く、日付・金額・相手・目的を出金伝票などに記録しておくことが大切です。

※本記事は2026年10月18日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。

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