日本経済新聞(2026年10月24日朝刊)が、10月23日の東京株式市場で不動産株が逆行高になったと報じました。AIや半導体関連の銘柄が売られて日経平均株価が続落するなか、国内の長期金利が大きく下がり、不動産株に資金が向かったという内容です。業種別日経平均株価の「不動産」は前日比2%高で、全36業種の中で最も上昇しました。
ただし、記事では「日銀の追加利上げも予想されるなかで本格的には買いにくい」という市場関係者の声も紹介されています。この記事では、長期金利と短期金利の違いと、それぞれが不動産投資の借入や物件価格にどう効くのかを整理します。なお、個別の株式やREITの売買をおすすめするものではありません。
- 10月23日、AI・半導体株の売りのなかで長期金利(新発10年物国債の利回り)が一時2.755%と約3か月ぶりの低水準に下がり、不動産株が業種別で最も上昇した(日本経済新聞)
- 一方で、日銀の追加利上げ(短期金利の上昇)は引き続き予想されている。長期金利と短期金利は同じ方向に動くとは限らない
- 長期金利は固定金利の借入と物件の価格(期待利回り)に、短期金利は変動金利の借入に効きやすい
- 一時的な金利の動きで判断せず、物件の収益力と借入の返済余力を基準に、固定・変動の組み合わせを考えたい
報道で示された内容
| 項目 | 報道で示された内容 |
|---|---|
| 株式市場 | 10月23日の日経平均株価は前日比214円安の6万2,693円。下げ幅は一時1,400円超 |
| 不動産株 | 業種別日経平均「不動産」は前日比2%高で、全36業種で最大の上昇率。三菱地所、住友不動産が3%高、三井不動産も約3か月ぶりの高値 |
| REIT | 東証REIT指数は前日比1%高 |
| 長期金利 | 新発10年物国債の利回りが一時2.755%まで低下し、7月下旬以来約3か月ぶりの低水準 |
| 背景 | AI・半導体関連株の売りが目立つなか、株価が逆相関の関係になりやすい不動産株に資金が流入。金利低下で不動産会社の資金調達環境の改善が意識された |
| 市場の見方 | 不動産株の上昇トレンドが続くとの見方は多くない。日銀の追加利上げも予想されるなかで本格的には買いにくい、との声 |
出典:日本経済新聞「不動産株が上昇、三菱地所が3%高 国内金利低下で」(2026年10月24日朝刊)。
長期金利と短期金利は、別の動きをする
ここからは、税理士・公認会計士として、また自らも融資を受けて不動産投資を続けてきた立場からの考えです。
金利のニュースを読むときに大切なのは、どの金利の話かを区別することです。
| 種類 | 主な例 | 何で決まるか | 不動産投資への主な影響 |
|---|---|---|---|
| 短期金利 | 日銀の政策金利、短期プライムレート、TIBOR | 日銀の金融政策 | 変動金利の借入の金利 |
| 長期金利 | 新発10年物国債の利回り | 将来の景気・物価の見通し、国債の需給、株式市場の動きなど | 固定金利の借入の金利、物件の期待利回り・価格、REITや不動産株の価格 |
今回、長期金利が下がったのは、AI・半導体関連株が売られ、安全資産とされる国債に資金が向かったためと考えられます。一方、短期金利は日銀が決めるもので、日銀は物価目標に事実上到達したとの認識のもと、追加利上げの時機を探っています(日銀10月会合は利上げ見送りへ)。
つまり、「長期金利が下がった」からといって、変動金利の借入の利息が下がるわけではない、ということです。
借入への影響:固定と変動をどう考えるか
| 借入の種類 | 今回の長期金利の低下 | 日銀の追加利上げ |
|---|---|---|
| 変動金利 | ほとんど影響しない | 基準金利の引き上げで、金利が上がる |
| 固定金利(新規・借換え) | 固定金利の水準が下がる方向に働く | 長期金利も上がれば、固定金利の水準も上がる |
| 固定金利(借入済み) | 契約期間中は変わらない | 契約期間中は変わらない |
長期金利が下がった局面は、固定金利での借入や借換えを検討するタイミングの一つになりえます。ただし、固定金利は変動金利より金利が高いことが多く、途中で返すと費用がかかることもあります。借入ごとに、残りの期間と金額、金利が上がった場合の返済負担を試算して判断することが大切です(不動産投資の金利上昇対策)。
物件価格への影響
不動産の価格は、「その物件からどれだけの収益が見込めるか」と「投資家がどれだけの利回りを求めるか」で決まります。金利が下がると、投資家が求める利回りも下がりやすくなり、同じ収益の物件でも価格が上がりやすくなります。不動産株やREITが金利の低下を好感するのは、このためです。
ただし、市場関係者も指摘するように、今回の金利の低下が続くかどうかは分かりません。不動産市場は金利の変化に敏感で、日銀も「金利感応度が高い」として注視しています(日銀の金融システムレポート)。物件を買う・売るの判断は、短期的な金利の動きではなく、物件の収益力と出口の価格を保守的に見て行うべきだと考えています(首都圏の新築マンション、上期平均が初の1億円超)。
代表の相亰と髙橋が、自らの不動産投資と資金調達支援の経験から構築した独自の財務設計の手法「クレフティメソッド」で、決算書・法人化・次の融資まで設計します。初回のご相談は無料です。
不動産投資家向け税務・融資支援を見る不動産投資家が今確認しておきたいこと
- 借入ごとの金利の種類を確認する:変動か固定か、何の金利に連動しているか、見直しの時期はいつか
- 変動金利の借入は、追加利上げを前提に試算する:長期金利が下がっても、短期金利は上がる可能性がある
- 固定金利への切り替えを検討するなら、条件を比べる:固定期間、金利の水準、途中で返すときの費用
- 物件の評価は保守的に:金利の低下で物件価格が上がる局面でも、出口の価格は高めに見積もらない
- ICRと債務償還年数を点検する:金利がどちらに動いても返済が回る財務を保つ(ICRとは)
今後も注意して見ていきたいこと
- 長期金利の動き:今回の低下が一時的なものか、続くのか
- 日銀の12月の会合:追加利上げが行われるか
- 株式市場とAI関連株:株価の急落が続けば、安全資産への資金の移動で長期金利が下がる一方、景気や金融機関の融資姿勢にも影響しうる
- 不動産会社の資金調達:金利の低下で、デベロッパーの開発や物件の取得が活発になるか
まとめ
- 10月23日、長期金利が約3か月ぶりの低水準に下がり、不動産株が業種別で最も上昇した
- 一方で、日銀の追加利上げは引き続き予想されている。長期金利と短期金利は同じ方向に動くとは限らない
- 長期金利は固定金利の借入と物件価格に、短期金利は変動金利の借入に効きやすい
- 一時的な金利の動きで判断せず、物件の収益力と返済余力を基準に、固定・変動の組み合わせを考える
借入の固定・変動の見直しや、金利が動いたときの試算を一度確認したい方は、お気軽にご相談ください。
