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首都圏の新築マンション、上期平均が初の1億円超|金利上昇で買える人が減るなか、価格・中古・賃料・融資はこれからどうなるか

日本経済新聞(2026年10月20日)が、首都圏の新築分譲マンションの4〜9月の平均価格が1億1,494万円となり、年度上期として初めて1億円を超えたと報じました。東京23区では1億7,925万円です。一方で、販売状況を「苦戦」とするデベロッパーが増え、住宅ローンの金利と審査の基準も上がっています。

価格は過去最高なのに、買える人は減っている。このねじれは、これからの不動産市場を考えるうえで大事なサインです。この記事では、報道で示されたデータを引用しながら、新築マンション・中古市場・賃料・投資用の融資がこれからどう動きうるかを、シナリオに分けて考えます。

この記事の結論
  • 首都圏の新築マンションの上期平均は1億1,494万円(前年同期比21.1%上昇)、東京23区は1億7,925万円(同34.7%上昇)。建設費の高騰と供給の減少が価格を押し上げている(日本経済新聞が報じた不動産経済研究所のデータ)
  • 一方で、都心6区で販売が「好調」とされた物件は71%から27%へ低下し、「苦戦」が0%から12%へ増えた。金利上昇と審査金利の引き上げで、買える人の借入可能額が減っている
  • 新築は建設費が下支えするため値下がりしにくいが、中古市場や郊外、高額帯から先に調整が表れる可能性がある。買えない人が賃貸にとどまれば、賃料は底堅く推移しうる
  • 不動産投資家は、買い手の借入可能額が減る=出口の価格が下がりうることを前提に、ICR・債務償還年数・実態の純資産を今のうちに点検しておきたい

報道で示されたデータ

記事では、次のような数字が紹介されています。

項目報道で示された内容
首都圏の新築マンション平均価格(2026年4〜9月)1億1,494万円、前年同期比21.1%上昇。年度上期として初めて1億円超(不動産経済研究所)
東京23区の平均価格1億7,925万円、同34.7%上昇。年度上期として4年連続で最高値(1973年の調査開始以来)
供給戸数8,601戸、同6%減。3年連続で1万戸を下回る
都心6区の販売状況(2025年11月〜2026年6月発売分)「好調」27%(前年同期71%)、「苦戦」12%(同0%)(トータルブレイン)
金利と借入可能額返済期間35年で金利が1%から2%になると、同じ返済額で借りられる額は5,000万円から約4,260万円に減少(MFSの試算)
審査金利従来の3〜3.5%から3.5〜4%程度に上昇。5%を設定する金融機関もある
年収倍率以前は10倍でも通ったが、今は良くて8倍、通常は5〜6倍程度(不動産仲介会社の代表の話)

出典:日本経済新聞「首都圏新築マンション4〜9月初の平均1億円超 金利高で購買力は低下」(2026年10月20日)。数字は同記事が示した各機関のデータ・試算による。

価格を押し上げているのは、主に売り手側のコストです。工事現場の人手不足による人件費の上昇と、建設資材の高止まりで建設費が上がり続け、デベロッパーは採算を確保するために販売価格を上げています。供給が減っていることも価格を押し上げています。

一方で、買い手側の力は弱まっています。2026年6月の日銀の利上げを受けて、9〜10月にかけて変動型の住宅ローン金利の引き上げが広がり、フラット35の金利も上がっています。

「審査金利」とは何か、なぜ効くのか

銀行が住宅ローンや投資用ローンの借入可能額を決めるときは、実際に適用する金利ではなく、それより高めに設定した審査金利で返済額を計算し、年収や物件の収入に対して返済が無理のない範囲かを見ます。将来の金利上昇に備えた「安全余裕」です。

この審査金利が上がると、実際の金利がまだ低くても、借りられる額そのものが減ります。報道で紹介された、年収倍率10倍で通っていたものが5〜6倍程度に収まる、という話は、この効果を表しています。

投資用の融資でも考え方は同じです。銀行は、物件の家賃収入から経費を引いた利益で、審査金利で計算した返済をまかなえるかを見ます。審査金利が上がれば、同じ物件でも借りられる額が減り、必要な自己資金が増えます。

これからどうなるか:3つのシナリオ

ここからは、税理士として、また自らも融資を受けて不動産投資を続けてきた立場からの考えです。将来の価格を予想することはできませんが、起こりうる動きをシナリオに分けて整理しておくことは、備えに役立ちます。

シナリオ前提新築マンション中古・郊外賃料投資用の融資
① 高止まり金利の上昇が緩やか。建設費の高止まりが続く価格は高止まり。供給はさらに絞られる都心の好立地は底堅い。郊外や築古はばらつく底堅い〜上昇審査は厳しめが続く
② 選別・調整金利がもう一段上がる。実需の購買力がさらに低下高額帯から販売期間が延び、値引きや仕様の見直しが増える中古から先に価格の調整が表れやすい買えない層が賃貸にとどまり、底堅い審査金利の上昇で借入可能額が減る。物件の選別が強まる
③ 急な引き締め金利の急上昇や融資規制の強化が重なる供給が大きく減る売り急ぎが出て、価格が大きく下がる場面も景気次第で弱含みも融資が一斉に絞られる

足元の報道を見る限り、すでに②の「選別・調整」の入り口に差しかかっているように見えます。新築の販売に「苦戦」が出始め、別の報道では都心6区の中古マンションの希望売り出し価格が4か月連続で下がったとも伝えられています(地銀の不動産融資が過去最大の伸び)。

新築は下がりにくく、中古から変化が表れやすい

新築マンションは、土地代と建設費がすでにかかっているため、デベロッパーが簡単には値下げできません。建設費が下がる見通しも立ちにくく、価格は高止まりしやすいと考えられます。その分、供給を絞る、販売期間を延ばす、住戸の面積を小さくするといった形で調整されることが多いでしょう。

一方、中古マンションは、売り手の事情(住み替え、相続、資金繰り)で売りに出るため、市況の変化が価格に表れやすくなります。買い手の借入可能額が減れば、買い手が払える価格の上限が下がり、中古の価格にも影響します。

賃料は底堅く推移しうる

家を買えない、あるいは購入をしばらく見送る人が増えれば、その人たちは賃貸に住み続けます。都市部の賃貸の需要は底堅く、賃料も上がりやすい環境が続く可能性があります。ただし、賃料の上昇には入居者の所得の伸びという上限があり、物件によって差が大きくなることにも注意が必要です。

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不動産投資家が今のうちに見直しておきたいこと

1. 金利が上がったときの返済負担を試算する

変動金利の借入が多い場合は、金利が1〜2%上がったときに、年間の返済額とICR(営業利益÷支払利息)がどう変わるかを試算しておきます(不動産投資の金利上昇対策、ICRとは)。

2. 出口の価格を保守的に見る

売却を考えている物件は、買い手の借入可能額が減ることを前提に、出口の価格を保守的に見積もります。買い手も、審査金利で計算した返済が回る範囲でしか買えないからです。売るか持ち続けるかの判断は、出口戦略の考え方で整理しています。

3. 実態の純資産を把握する

物件の価格が下がると、帳簿上は変わらなくても、銀行が見る実態の純資産は目減りします。含み益・含み損まで含めた純資産を把握し、次の融資の余力がどれだけあるかを確認しておきます(含み益・含み損と銀行の実態BS)。

4. 新しく買うなら、審査金利でも回るかを確認する

新しい物件を買う場合は、表面利回りと借入金利の差(イールドギャップ)が十分か、そして銀行の審査金利で計算しても返済が回るかを確認します。区分マンションと一棟物件では、融資の考え方も変わります(区分マンションと一棟物件の融資の違い)。

今後も注意して見ていきたいこと

  • 金利の動き:日銀の追加利上げの有無と、それに続く住宅ローン・投資用ローンの金利の改定
  • 審査金利と年収倍率:銀行が審査に使う金利をさらに引き上げるか。借入可能額の上限が、価格の上限を決めます
  • 新築の販売期間と値引き:「苦戦」とされる物件の割合が増えていくか。販売期間の長期化は、調整の先行指標になります
  • 中古の在庫と成約価格:売り出し価格だけでなく、実際に成約した価格と、売れ残りの在庫の量
  • 建設費:人手不足による人件費の上昇が続く限り、新築の価格は下がりにくい構図が続きます

不動産の価格は、最後は「買い手がいくら借りられるか」で決まります。その借入可能額が、金利と審査金利によって絞られ始めている、というのが今回の報道から読み取れる一番大きな変化だと考えています。価格の天井を当てにいくより、どのシナリオになっても困らない財務をつくっておくことが、長く投資を続けるための備えになります。

まとめ

  • 首都圏の新築マンションの上期平均は1億1,494万円と初めて1億円を超えたが、販売の「苦戦」が増えている
  • 金利上昇と審査金利の引き上げで、買い手の借入可能額が減っている
  • 新築は建設費が下支えして下がりにくい一方、中古・郊外・高額帯から先に調整が表れる可能性がある
  • 買えない層が賃貸にとどまれば、賃料は底堅く推移しうる
  • 不動産投資家は、返済負担の試算、出口の価格の見直し、実態の純資産の把握を、今のうちに行っておきたい

ご自身の物件と借入が、金利上昇や価格の調整にどこまで耐えられるか確認したい方は、お気軽にご相談ください。

よくある質問

新築マンションの価格は、これから下がりますか?
将来の価格は誰にも断言できません。建設費の上昇と供給の少なさは価格を支える要因ですが、金利上昇で買える人が減っていることは価格を押し下げる要因です。新築は売り手が価格を下げにくい一方、中古は市況の変化が先に表れやすいため、まず中古の価格や売れ行きから変化が見えてくる可能性があります。
金利が上がると、借りられる額はどれくらい減りますか?
報道で紹介された試算では、返済期間35年で金利が1%から2%に上がると、同じ返済額で借りられる額は5,000万円から約4,260万円に減ります。金利が1%上がると、購入できる住宅の価格帯は15%ほど下がるという見方も示されています。投資用の融資でも、銀行が審査に使う金利が上がれば、借りられる額は同じように減ります。
不動産投資家は、この局面で何に気をつければよいですか?
まず、今持っている物件の借入について、金利が1〜2%上がったときの返済負担とICR(利息の何倍の利益があるか)を試算してください。次に、売却を考えている物件は、買い手の借入可能額が減ると売れる価格も下がりうる点を織り込みます。新しく買う場合は、表面利回りと借入金利の差(イールドギャップ)が十分か、審査に使われる高めの金利でも返済が回るかを確認することが大切です。

※本記事は2026年10月20日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。

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