家賃保証会社の利用は、いまや賃貸借契約の標準になりつつあります。通常は入居者が保証料を負担しますが、空室対策として「初回保証料オーナー負担」をうたったり、管理会社の滞納保証サービスに加入してオーナーが毎月の保証料を払ったりする例も増えています。
家賃保証会社の保証料をオーナーが負担した場合、経費になること自体に問題はありません。論点になるのは、保証期間が長い一括払いを全額その期の経費にしてよいか、消費税の扱い、そして保証会社から代位弁済を受けたときの収入の計上です。この記事では、税務・会計・銀行の3つの視点で整理します。
- オーナーが負担する保証料は、法人は損金、個人は不動産所得の必要経費
- 保証料は、保証期間にわたって保証という役務を受ける対価。1年を超える期間分の一括払いは期間按分が原則(信用保証料を前払費用とした平成19年2月27日裁決)
- 支払日から1年以内の期間の保証料は、継続適用を条件に短期前払費用の取扱いが使える
- 保証料は信用の保証としての役務の提供で消費税は非課税(消費税法別表第二第3号)。事務手数料などは別に判定
- 代位弁済で受け取った金額は家賃収入。貸倒れにはならない
オーナーが保証料を負担する場面
| 場面 | 契約の形 | オーナーの支出の性格 |
|---|---|---|
| 初回保証料をオーナーが負担(入居促進) | 保証契約は保証会社と入居者(+オーナー)の間。費用をオーナーが肩代わり | 空室対策・入居促進の費用 |
| 管理会社の滞納保証サービスに加入 | オーナーと管理会社・保証会社の契約。家賃の一定割合を毎月負担 | 家賃回収を確実にするための費用 |
| 更新保証料をオーナーが負担 | 更新時に保証を継続 | 長期入居を促す費用 |
| 法人オーナーが社宅として借りる側で負担 | 法人が賃借人として保証料を負担 | 社宅・事務所の賃借に伴う費用 |
いずれも、オーナーの賃貸業務(または法人の事業)のための支出です。「入居者が本来払うものをオーナーが払った」としても、入居を決めてもらう、滞納リスクを移すという業務上の目的があるので、経費性に問題はありません。
税務上の扱い:経費にする時期
保証料は「期間の対価」
家賃保証の保証料は、保証期間(多くは1〜2年、または契約期間中)にわたって、滞納が生じたら立替払いを受けられるという役務の対価です。支払った時に役務がすべて提供されるわけではないため、期末時点でまだ経過していない保証期間に対応する部分は前払費用になります。
| 支払いの形 | 法人 | 個人(不動産所得) |
|---|---|---|
| 毎月払いの保証料(家賃の◯%) | 各月の損金 | 各月の必要経費 |
| 1年分以内の一括払い | 継続適用を条件に支払時の損金にできる(法基通2-2-14) | 同様(所基通37-30の2) |
| 1年を超える期間分の一括払い | 期間按分。未経過分は前払費用 | 期間按分。未経過分は前払費用 |
| 保証期間の定めがない初回保証料 | 契約内容から役務の期間を判断 | 同左 |
信用保証料を前払費用とした裁決
家賃保証そのものではありませんが、同じ「保証料」の考え方を示した公表裁決があります。
- 平成19年2月27日裁決(裁決事例集No.73・353頁)
- 事案:金融機関から融資を受ける際に信用保証協会に支払った信用保証料の全額を、支払った事業年度の損金とした法人に対し、原処分庁が未経過の保証期間に対応する部分は損金にできないとした。請求人は、保証料は保証の承諾に対する対価であり、継続的な役務の対価ではないと主張した
- 判断:信用保証協会の役務は、保証の承諾や融資の実行で終了するものではなく、融資が継続している間、保証を続けることにある。信用保証料は保証期間の始期から満了時までの費用であり、一定の契約に従い継続して役務の提供を受けるために支出した費用に当たるから、事業年度末に未経過の保証期間に対応する額は前払費用とすることが相当とした
- 確認先:国税不服審判所 平成19年2月27日裁決
家賃保証の保証料も、保証期間中ずっと保証を受けるための対価という点で同じ構造です。数年分を一括で負担した場合に全額を支払時の経費にすると、同じ指摘を受ける可能性があります。保証契約書で、保証料が何の期間の対価かを確認してください。融資の保証料の扱いは銀行に払う費用の処理と期間按分でも解説しています。
法人と個人の違い
| 項目 | 法人 | 個人(不動産所得) |
|---|---|---|
| 保証料の経費性 | 損金 | 必要経費 |
| 期間按分 | 前払費用・長期前払費用 | 前払費用 |
| 短期前払費用 | 法基通2-2-14(継続適用) | 所基通37-30の2(継続適用) |
| 自己や親族が住む部屋の保証料 | 役員社宅なら社宅の論点として整理 | 家事費 |
| 代位弁済の受取り | 家賃収入(益金) | 家賃収入(総収入金額) |
| 保証会社がない場合の滞納 | 貸倒損失の要件で判断 | 事業的規模かどうかで処理が変わる |
消費税:保証料は非課税
消費税法別表第二第3号は、利子を対価とする貸付金などとならんで、信用の保証としての役務の提供を非課税としています。家賃保証会社が入居者の家賃債務を保証する対価としての保証料は、通常これに当たるため、オーナーが負担しても仕入税額控除の対象になりません。
一方、保証会社や管理会社からの請求には、保証料のほかに事務手数料、集金代行手数料、督促・明渡し手続の費用などが含まれていることがあります。保証の対価ではない役務の対価は課税になり得るため、請求書の内訳と、インボイス(適格請求書)の記載を確認します。
代位弁済で受け取る金額は、家賃の弁済です。消費税の扱いも家賃と同じで、住宅の家賃なら非課税、店舗・事務所の家賃なら課税売上げです。
代位弁済を受けたときの処理
入居者が滞納し、保証会社から立替払い(代位弁済)を受けた場合、オーナーにとっては家賃が入金されたのと同じです。
| 時点 | オーナーの処理 |
|---|---|
| 家賃の支払日(未入金) | 未収家賃を計上(個人も契約上の支払日が収入の時期) |
| 保証会社から代位弁済 | 未収家賃を消し込む |
| 保証会社が入居者に求償 | オーナーには関係なし |
家賃の計上時期そのものは、代位弁済の有無で変わりません。個人の不動産所得は契約上の支払日、法人は期間の経過に応じて計上します。家賃の計上時期の詳細は家賃収入の計上時期をご覧ください。
保証会社を付けていない賃貸借で滞納が生じた場合は、回収できない家賃を貸倒損失にできるかが論点になり、法人と個人(事業的規模かどうか)で要件が異なります。保証料の負担は、こうした回収不能リスクと手間をあらかじめ費用に置き換える選択ともいえます。滞納家賃の貸倒れについては滞納家賃と貸倒損失の要件で解説しています。
代表の相亰と髙橋が、自らの不動産投資と資金調達支援の経験から構築した独自の財務設計の手法「クレフティメソッド」で、決算書・法人化・次の融資まで設計します。初回のご相談は無料です。
不動産投資家向け税務・融資支援を見る会計上の扱いと決算書の表示
税務上は、保証料がいつ損金・必要経費になるかが論点です。決算書の表示は、一般に公正妥当と認められる会計基準(GAAP:Generally Accepted Accounting Principles)に沿って判断します。企業会計原則でも、一定の契約に従い継続して役務の提供を受ける場合に、まだ提供されていない役務に対して支払った対価は前払費用とし、当期の損益計算から除くこととされています。
| 項目 | 主な表示 |
|---|---|
| 当期に対応する保証料 | 賃貸原価または販管費(支払保証料、支払手数料など) |
| 翌期に対応する部分 | 流動資産(前払費用) |
| 翌々期以降に対応する部分 | 投資その他の資産(長期前払費用) |
| 代位弁済の受取り | 売上高(家賃収入)。未収家賃の消込み |
オーナーが負担する保証料は、家賃収入を安定させるための運営費なので、営業費用として表示するのが自然です。代位弁済は家賃そのものの回収なので、売上高(家賃収入)として扱い、雑収入などにはしません。
銀行からの見え方
| 見られる点 | 保証料負担との関係 |
|---|---|
| 運営費・NOI | 保証料の分だけ運営費が増え、NOIが下がる |
| 家賃収入の安定性 | 滞納リスクが保証会社に移り、収入のぶれが小さくなる |
| 未収家賃・貸倒れ | 滞留する未収家賃が減り、BSがきれいになる |
| 前払費用の残高 | 一括払いの未経過分が資産として残る |
銀行は、BSに滞留した未収家賃を回収可能性の低い資産として厳しく見ることがあります。保証会社を付けて未収家賃が長期間残らない状態にしておくことは、決算書の中身を整えることにつながります。著書では、未収家賃など滞留しているものを早めに回収し、見込みのないものは貸倒処理してBSの実態を整えることの大切さを述べています。
一方で、オーナーが保証料を負担すれば運営費は増えます。保証料率、入居促進の効果、滞納の発生状況を比較し、物件ごとに負担するかどうかを判断することが大切です。著書のモデルでは、償却前利益や債務償還年数「(借入金−現預金)÷(経常利益+減価償却費−法人税等)」が評価の中心であり、運営費の増加はこの分母を細らせます。
実務のチェックポイント
- 保証契約書で保証期間と保証料の対象期間を確認する:一括払いなら期間按分
- 短期前払費用の取扱いは継続適用:1年以内の期間分に限る
- 請求書の内訳を確認する:保証料(非課税)と事務手数料等(課税になり得る)を分ける
- 代位弁済は家賃収入として消し込む:雑収入にしない
- 未収家賃の残高を毎期確認する:保証会社への請求漏れがないか
- 自己・親族使用の部屋は区分する:個人は家事費
- 負担の効果を物件ごとに検証する:入居促進と滞納リスクの低減に見合うか
管理会社に払う費用全般は管理委託料・BM費・PM費の処理、空室対策の費用は空室対策の広告費・AD・フリーレントの処理もあわせてご覧ください。
まとめ
- オーナーが負担する家賃保証の保証料は、法人は損金、個人は必要経費
- 保証料は保証期間の対価。1年を超える一括払いは期間按分が原則で、信用保証料を前払費用とした裁決がある(平成19年2月27日)
- 保証料は信用の保証として消費税非課税。事務手数料などは別に判定する
- 代位弁済で受け取った金額は家賃収入。貸倒れの論点にはならない
- 保証会社の利用は未収家賃の滞留を防ぎ、BSを整える効果がある一方、運営費は増える。物件ごとに効果を検証する
運営費の中身を見直し、銀行に伝わる決算書に整えたい場合は、不動産投資家向けサービスでご相談ください。
