空室対策や入居者の安心のために、防犯カメラ、オートロック、宅配ボックスを導入する賃貸オーナーが増えています。数十万円から数百万円の投資になることもあり、「何年で償却するのか」「後付けなら修繕費にできるのか」というご相談をよく受けます。
これらの設備は、器具及び備品になるか、建物附属設備になるか、建物の一部になるかで耐用年数が変わります。この記事では、国税庁の質疑応答と耐用年数通達をもとに区分の考え方を整理し、後付け工事の扱い、法人と個人の違い、消費税、決算書の表示と銀行からの見え方までを解説します。
- カメラ・モニター・インターホン・制御器が一体のドア自動管理装置は、器具及び備品「インターホーン及び放送用設備」の6年(国税庁の質疑応答)
- 自動ドアの電動機・駆動装置は建物附属設備「ドアー自動開閉設備」の12年。ドアそのものは建物に含まれる
- 宅配ボックスは特掲がない。置き型で独立したものは器具及び備品として検討し、建物に造り付けるものは建物との一体性を見る
- 後付けは原則として修繕費ではなく資産の取得。銀行には、空室・家賃への効果と、修繕費との区分の根拠を示せるようにする
防犯・利便設備の耐用年数の整理
耐用年数省令の別表第一と耐用年数通達から、関係する区分を抜き出すと次のとおりです。
| 設備 | 考えられる区分 | 耐用年数 | 根拠 |
|---|---|---|---|
| ドア自動管理装置(監視カメラ・モニター・インターホン・制御器などが一体) | 器具及び備品/事務機器及び通信機器/インターホーン及び放送用設備 | 6年 | 国税庁 質疑応答事例「ドア自動管理装置の耐用年数」 |
| インターホン(集合玄関機・室内親機) | 器具及び備品/インターホーン及び放送用設備 | 6年 | 耐用年数省令 別表第一 |
| 自動ドアの電動機・駆動装置 | 建物附属設備/エヤーカーテン又はドアー自動開閉設備 | 12年 | 耐用年数通達2-2-5 |
| 自動ドアのドア本体 | 建物 | 建物の耐用年数 | 耐用年数通達2-2-5 |
| 単体で購入したカメラ | 器具及び備品/光学機器及び写真製作機器/カメラ等 | 5年 | 耐用年数省令 別表第一(当てはめは要確認) |
| コインロッカー | 器具及び備品/前掲のもの以外のもの/主として金属製のもの | 10年 | 耐用年数通達2-7-18(注) |
| 防犯灯・センサーライト(建物の照明設備) | 建物附属設備/電気設備(その他のもの) | 15年 | 耐用年数通達2-2-2 |
オートロック:「一体の装置」か「ドアの駆動部分」か
国税庁の質疑応答事例「ドア自動管理装置の耐用年数」は、入室の遠隔監視や扉の施解錠を行う装置(取得価額約100万円)について、監視用カメラ、モニターTV、インターホーン、制御器、プリンター、操作表示器が一体となって機能し、一式で販売されていることを前提に、器具及び備品の「インターホーン及び放送用設備」の6年を適用するとしています。
一方、耐用年数通達2-2-5は、建物附属設備の「エヤーカーテン又はドアー自動開閉設備」とは電動機、圧縮機、駆動装置その他これらの附属機器をいい、ドアー自動開閉機に直結するドアーは含まれず、建物に含まれるとしています。
オートロックの工事には、集合玄関機などのシステム部分、自動ドアの駆動部分、ドア本体や配線工事が混ざっていることが多いため、見積書を部分ごとに分けてもらうことが区分の前提になります。
防犯カメラ:システムの構成で考える
防犯カメラは、録画装置・モニターと組み合わせて一つのシステムとして機能するのが普通です。上の質疑応答は、カメラを含む一体の装置をインターホーン及び放送用設備として扱った例です。単体のカメラを追加購入した場合は、細目の「カメラ」への当てはめも考えられますが、既存システムの一部として機能するのか、独立して使えるのかで判断が分かれます。建物内に埋め込む配線工事は、建物附属設備として扱うのが基本です。
宅配ボックス:置き型か、造り付けか
宅配ボックスは耐用年数表に特掲がなく、国税庁の個別の見解も確認した範囲では見当たりません。考え方の手がかりは次の2つです。
- 器具及び備品の判断基準:国税不服審判所の平成2年1月30日裁決(裁決事例集No.39・201頁)は、器具及び備品といえるには、建物と構造上独立・可分で、建物本来の効用を維持する目的以外の固有の目的で設置されたものであることが必要としています(公表裁決事例要旨)
- 似た設備の通達:耐用年数通達2-7-18(注)は、コインロッカーを器具及び備品の「前掲のもの以外のもの」の「主として金属製のもの」に当たるとしています
置き型やアンカー固定程度で取り外して移設できるものは器具及び備品として、壁に埋め込むなど建物と一体に施工したものは建物の一部として検討する、という整理が考えられます。判断に迷う場合は、設置方法が分かる写真と仕様書を残しておきましょう。建物と附属設備・備品の区分全般は建物と建物附属設備・構築物の区分で詳しく扱っています。
後付け工事は修繕費か、資産の取得か
既存の物件に新しく設置する場合、物理的に付け加えるものなので、修繕費ではなく、新たな資産の取得または資本的支出として扱うのが原則です。国税庁も、建物に避難階段を取り付けるなど物理的に付け加えた部分の費用は原則として資本的支出に当たる例として挙げています(タックスアンサーNo.5402)。
| 工事の内容 | 扱いの傾向 |
|---|---|
| 防犯カメラ・宅配ボックスの新設 | 新たな資産の取得(または資本的支出) |
| オートロックの新設(共用玄関の改修を含む) | システムは資産の取得、玄関・ドアの改修は建物の資本的支出になりやすい |
| 故障したカメラ・インターホンの同等品への交換 | 単体の機器の買い替えは資産の取得。部品の修理は修繕費 |
| 旧型システムから高機能システムへの入替え | 新システムは資産の取得。撤去した旧設備は除却を検討 |
旧設備を撤去した場合は、その未償却残高を除却損として処理できるかを検討します。考え方は設備の一部取替えと旧部分の除却で解説します。修繕費と資本的支出の判定全般は修繕費と資本的支出の違いと判定フローを参照してください。
法人と個人の違い
| 項目 | 法人 | 個人 |
|---|---|---|
| 器具及び備品の償却方法 | 届出がなければ定率法 | 届出がなければ定額法 |
| 建物附属設備の償却方法 | 平成28年4月1日以後取得分は定額法 | 同左 |
| 償却費の計上 | 損金経理した額のうち償却限度額まで | 計算した償却費を必要経費に算入 |
| 少額の機器 | 貸付けの用に供したものは少額特例などの対象外(主要な事業として行う貸付けを除く) | 同様(主要な業務として行う貸付けを除く) |
| 保守料・遠隔監視の月額料金 | 役務の提供に応じて損金 | 必要経費 |
インターホンの室内親機やカメラ1台など、1単位の金額が小さいものは少額特例が使えるかが問題になります。令和4年4月1日以後に取得したもので貸付けの用に供したものは、主要な事業として行う貸付けを除いて対象外です。共用部の防犯設備がこれに当たるかは使用目的や使用状況で判断されるため、少額減価償却資産・一括償却資産と「貸付けの用」の除外を確認のうえ、顧問税理士と整理してください。
消費税:警備料と設備の購入
入居者から受け取る料金について、国税庁の質疑応答「集合住宅の家賃、共益費、管理料等の課税・非課税の判定」は、マンション全体の警備を行う場合の警備料は、賃料に含めても別名目で受け取っても非課税としています。ホームコントロール盤で各住戸の防犯・防火をチェックする場合も同様に非課税とされています。
一方で、宅配ボックスの利用を入居者以外にも有料で開放するなど、住宅の貸付けとは別のサービスとして対価を受け取る場合は、課税になる可能性があります。名目ではなく、何の対価かで判断されます。
設備を購入したときの消費税は、住宅の貸付け(非課税売上)のための課税仕入れとして、個別対応方式では控除できないのが基本です。店舗や事務所と住宅が混在する物件では、共通対応の課税仕入れとして扱います。
代表の相亰と髙橋が、自らの不動産投資と資金調達支援の経験から構築した独自の財務設計の手法「クレフティメソッド」で、決算書・法人化・次の融資まで設計します。初回のご相談は無料です。
不動産投資家向け税務・融資支援を見る会計上の扱いと決算書の表示
決算書の作成は、一般に公正妥当と認められる会計基準(GAAP:Generally Accepted Accounting Principles)に沿って行います。会社法431条は「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」に従うことを求めており、税務上の区分と決算書の表示は、同じとは限りません。
- 貸借対照表:器具及び備品、建物附属設備(建物と合わせて表示することも考えられる)として有形固定資産に計上する
- 損益計算書:減価償却費、保守料、遠隔監視の月額料金は、賃貸業の通常の費用として販売費及び一般管理費
- 旧設備の撤去:除却損は金額や頻度によって表示区分を検討する。毎期のように発生する少額の入替えを特別損失にするのは適切とはいえない
税務上の損金かどうかと、決算書のどこに出すかは別の問いです。表示区分の考え方は税務上の損金と企業会計(GAAP)の違いを参照してください。
銀行からの見え方
防犯・利便設備の投資は、金額が建物全体に比べて小さいため、銀行の評価を大きく動かすことはあまりありません。ただし、次の点は見られます。
| 見られる点 | 内容 |
|---|---|
| 修繕費か資産か | 後付け設備を全額修繕費にして営業利益が落ちていないか。区分の根拠があるか |
| 収益への効果 | 導入後に入居率や家賃が改善したか。空室対策として説明できるか |
| 固定費の増加 | 保守料・遠隔監視の月額料金が、営業利益をどれだけ圧迫しているか |
| 物件の競争力 | 築年数が進んだ物件で、設備の更新が計画的に行われているか |
設備投資を全額その期の費用にすると、営業利益が一時的に下がり、ICR(営業利益÷支払利息)も悪化します。税務上も原則として資産に計上すべきものなので、正しく資産計上すること自体が、決算書の見え方を整えることにつながります。銀行が重視する指標は不動産賃貸業の銀行格付けで解説しています。
実務のチェックポイント
- 見積書を、システム機器・自動ドアの駆動部分・ドア本体・配線工事などに部分ごとに分けてもらったか
- カメラやインターホンが一体のシステムか、単体の機器かを確認し、細目を当てはめたか
- 宅配ボックスの設置方法(置き型か造り付けか)が分かる写真・仕様書を残したか
- 後付け設備を修繕費にしていないか。撤去した旧設備の未償却残高を確認したか
- 少額の機器について、「貸付けの用」の除外に当たるかを確認したか
- 入居者から料金を受け取る場合、警備料なのか別のサービスの対価なのかを契約書で明確にしたか
- 導入前後の入居率・家賃の変化を記録し、銀行に説明できるようにしたか
まとめ
- カメラ・モニター・インターホン・制御器が一体のドア自動管理装置は、器具及び備品「インターホーン及び放送用設備」の6年
- 自動ドアの電動機・駆動装置は建物附属設備(12年)、ドア本体は建物。オートロック工事は部分ごとに分けて判定する
- 宅配ボックスは特掲がなく、置き型か造り付けかなど設置の実態で区分を検討する
- 後付けは原則として資産の取得。旧設備を撤去した場合は除却損を検討する
- マンション全体の警備料は非課税と整理されている。料金を受け取るときは何の対価かを明確にする
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