家具家電がそろい、清掃やリネン交換、フロント対応まで付いたサービスアパートメントは、出張者や長期滞在者の需要を取り込める運営形態です。一方で、税務上は「住宅の賃貸」と「宿泊サービス」の中間にあたるため、サービスアパートメントの消費税と所得区分は、運営の形と契約の中身で大きく変わります。
この記事では、消費税法施行令、消費税法基本通達、所得税基本通達、国税庁のタックスアンサー、公表裁決をもとに、判断の分かれ目を整理します。
- 旅館業の許可を受けて運営するなら、利用期間にかかわらず消費税は課税
- 賃貸借で1か月以上・居住用なら部屋の貸付けは非課税になり得るが、清掃・リネン・朝食などの役務部分は区分して課税
- 個人の所得区分は、役務と一体の給付なら事業所得または雑所得。運営会社に貸すだけなら不動産所得
- 建物の取得では、旅館業の施設に供することが明らかなら居住用賃貸建物に当たらない。取得の日の状況で判定する
- 耐用年数は、旅館・ホテル用か住宅用かで変わる。決算書では、役務の原価を含めた営業利益率が銀行に見られる
サービスアパートメントの3つの運営形態
サービスアパートメントは、法律上の定義がある言葉ではありません。税務では、実際にどの形で運営しているかを見ます。
| 運営形態 | 消費税(オーナー) | 個人オーナーの所得区分 |
|---|---|---|
| ① 旅館業の許可を受けて自ら運営 | 宿泊料は課税 | 事業所得または雑所得 |
| ② 賃貸借(1か月以上・居住用)+サービスを自ら提供 | 部屋代は非課税、役務部分は課税 | 役務の比重により不動産所得または事業所得・雑所得 |
| ③ 建物を運営会社に一括で貸す | 運営会社の運営形態による(住宅として転貸することが明らかなら非課税、旅館業なら課税) | 不動産所得 |
消費税:旅館業なら課税、賃貸借なら役務を区分
旅館業に係る施設の貸付けは非課税にならない
住宅の貸付けは非課税ですが、消費税法施行令16条の2は、貸付期間が1か月未満の場合と旅館業に係る施設の貸付けを非課税から除いています。消費税法基本通達6-13-4は、ホテル、旅館のほか旅館業法の適用を受けるリゾートマンションや貸別荘などは、利用期間が1か月以上でも非課税にならないとしています。国税庁のタックスアンサー(No.6226)も、ウィークリーマンションなどを同じ扱いとしています。
旅館業の許可を受けたサービスアパートメントは、長期滞在の利用者が中心であっても、宿泊料は課税売上げです。
賃貸借+サービスは、対価を合理的に区分する
賃貸借契約で1か月以上・居住用として貸し、あわせて清掃やリネン交換などのサービスを提供する場合はどうでしょうか。消費税法基本通達6-13-6は、一つの契約で非課税の住宅の貸付けと課税の役務の提供を約している場合、対価を合理的に区分するとしています(例として、有料老人ホーム、ケア付住宅、食事付の貸間などが挙げられています)。
| 受け取る対価 | 消費税 |
|---|---|
| 部屋の賃料(家具家電を一体で貸す部分を含む) | 非課税(通達6-13-1) |
| 共用部分の維持費としての共益費 | 非課税(通達6-13-9) |
| 定期清掃・リネン交換・ハウスキーピング | 課税 |
| 朝食・ラウンジの飲食 | 課税 |
| 専有部分の光熱費を別に受け取る利用料 | 非課税の家賃に含まれない(タックスアンサーNo.6226) |
| フィットネスなど居住者以外も有料で使える施設 | 住宅の貸付けに含まれない(通達6-13-2) |
料金を一本で受け取っていても、区分の義務はなくなりません。契約書や料金表で賃料とサービス料を分けて表示し、サービスの原価や市場価格など合理的な根拠で金額を決めておくことが、後から説明するうえで重要です。
ただし、清掃やリネン交換を日常的に行い、短期の利用者を受け入れているような実態であれば、そもそも旅館業に当たらないかが問題になります。契約の形式よりも実態で判断される点に注意してください。
運営会社への一括貸し
オーナーが建物を運営会社に一括で貸す場合、運営会社が住宅として転貸することが契約書その他で明らかなら、オーナーの賃料も住宅の貸付けとして非課税です(通達6-13-7)。運営会社が旅館業として運営する前提なら、オーナーの賃料は課税になり得ます。転貸の判断は、契約書の用途の定めと当事者の説明が決め手になった平成28年9月7日裁決があり、学生寮・社宅として法人に一括貸しする場合で紹介しています。
所得区分:役務と一体の給付なら不動産所得ではない
所得税基本通達と裁決の考え方
所得税基本通達26-4は、アパート、貸間等のように食事を供さない場合は不動産所得、下宿等のように食事を供する場合は事業所得または雑所得としています。サービスアパートメントでは食事の有無だけでなく、清掃・フロント対応などの役務の比重も問題になります。
この点で参考になるのが、国税不服審判所 平成25年3月27日裁決です。クルーズ客船の居室を利用する権利を持つ個人が、運営会社を通じて第三者に有償で利用させ、利用料には居室の使用のほか食事・催し物・居室清掃などのサービスが含まれていた事案です。審判所は、所得がほとんどまたは専ら不動産等を利用させることにより生じるなら不動産所得、不動産等の使用に役務の提供が加わり、一体となった給付の対価なら事業所得(場合により雑所得)と解すべきだとし、この事案は不動産所得に当たらず、事業所得にも当たらない雑所得と判断しました。
サービスアパートメントは、まさに「部屋の使用+役務」の組み合わせです。個人で直接運営し、清掃・リネン・フロントなどを日常的に提供していれば、不動産所得ではなく事業所得または雑所得と判断される可能性があります。逆に、運営会社に建物を貸して賃料を受け取るだけなら、通常は不動産所得です。
国税不服審判所 平成25年3月27日裁決 公表裁決事例(kfs.go.jp)
事業所得と雑所得の違い
同じ裁決は、業務が営業として事業的規模で行われているなら事業所得、そうでなければ雑所得とする考え方も示しています。雑所得の損失は、給与所得などと損益通算できません。個人で小規模に始める場合ほど、この点を見落とさないようにしてください。旅館業の所得区分は旅館業収入の所得区分と消費税でも整理しています。
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不動産投資家向け税務・融資支援を見る建物の取得:居住用賃貸建物に当たるか
取得の日の状況で判定する
税抜1,000万円以上の建物で、住宅の貸付けに使わないことが明らかでないものは居住用賃貸建物に当たり、取得の消費税は原則として控除できません(消費税法30条10項)。消費税法基本通達11-7-1は、住宅の貸付けに使わないことが明らかな建物の例として、次を挙げています。
- 建物の全てが店舗等の事業用施設である建物など
- 旅館又はホテルなど、旅館業法2条1項に規定する旅館業に係る施設の貸付けに供することが明らかな建物
- 棚卸資産として取得した建物で、所有している間、住宅の貸付けに使わないことが明らかなもの
判定は課税仕入れを行った日の状況で行い、その日に明らかでなくても、その課税期間の末日までに明らかになれば居住用賃貸建物に当たらないものとして差し支えない、とされています(通達11-7-2)。旅館業として運営する計画なら、許可の取得状況、運営会社との契約、建物の設備(フロント、客室の構造など)といった客観的な資料をそろえておくことが大切です。
賃貸借形式で運営するサービスアパートメントは、住宅の貸付けに使うことになるため、原則として居住用賃貸建物に当たります。取得時の消費税は旅館・ホテルを取得したときの消費税と居住用賃貸建物の判定実務で詳しく解説しています。
耐用年数
減価償却資産の耐用年数省令の別表第一では、鉄筋コンクリート造の建物は「住宅用」が47年、「旅館用又はホテル用」は木造内装部分の面積が延べ面積の3割を超えるもので31年、その他のもので39年です。どちらの用途として使う建物かで耐用年数が変わります。用途が混在する場合の考え方は、ホテル・旅館用途の建物の耐用年数をご覧ください。
法人と個人の違い
| 項目 | 個人 | 法人 |
|---|---|---|
| 所得区分 | 部屋の貸付けのみなら不動産所得。役務と一体なら事業所得・雑所得 | 区分なし(すべて益金) |
| 損益通算 | 雑所得の損失は通算不可 | 他の事業の損益と合算 |
| 消費税の課税・非課税 | 同じ基準 | 同じ基準 |
| 事業的規模の判定 | 不動産所得なら独立した室数おおむね10以上など | 問題にならない |
| 耐用年数・居住用賃貸建物の判定 | 同じ基準 | 同じ基準 |
会計上の扱いと銀行からの見え方
決算書の表示
決算書は、一般に公正妥当と認められる会計基準(GAAP:Generally Accepted Accounting Principles)に沿って作ります。中小企業では「中小企業の会計に関する指針」や「中小企業の会計に関する基本要領」が拠り所です。賃料もサービス料も本業の収入として売上高に計上しますが、内訳を「賃貸収入」「サービス収入(宿泊収入)」に分けて管理すると、消費税の区分と整合しやすくなります。
清掃・リネン・予約サイト手数料などは、売上に直接対応する費用として売上原価に計上する考え方もあります。どの区分に表示するかは取引の実態で決まるため、税務上の処理とは別に、顧問税理士・会計の専門家と検討してください。
銀行の見方
- 収入の性格:旅館業型は稼働率と単価で売上が動く「事業収入」として見られ、一般の賃貸より変動が大きいと評価されやすい
- 利益率:清掃・リネンなどの原価や人件費がかかるため、営業利益率は一般の賃貸より低くなる。月別の稼働率・平均単価・原価率を示せると説明しやすい
- 融資の資金使途:アパートローンなど住宅賃貸向けの融資で取得した物件を旅館業型に転用すると、融資契約の用途の定めに触れるおそれがある。転用前に金融機関と相談する
- 返済能力:著書のモデルでは、債務償還年数=(借入金−現預金)÷(経常利益+減価償却費−法人税等)で、10年以内を健全の目安としています。変動の大きい収入ほど、保守的な計画で見られます
実務のチェックポイント
- 旅館業の許可を受けて運営するのか、賃貸借で運営するのか
- 賃貸借なら、契約期間は1か月以上か。居住用と明記しているか
- 清掃・リネン・朝食などのサービス料を、賃料と分けて表示しているか。金額に合理的な根拠があるか
- 実態が短期の宿泊提供になっていないか(旅館業に当たらないか)
- 運営会社に貸す場合、契約上の用途は住宅か、旅館業か
- 建物の取得では、取得の日の状況で居住用賃貸建物に当たるかを判定し、資料を残したか
- 個人の場合、所得区分(不動産所得・事業所得・雑所得)と損益通算の可否を確認したか
まとめ
- 旅館業の許可を受けたサービスアパートメントは、利用期間にかかわらず課税
- 賃貸借で1か月以上・居住用なら部屋代は非課税になり得るが、役務部分は区分して課税
- 個人の所得は、役務と一体の給付なら事業所得または雑所得(平成25年3月27日裁決の考え方)。運営会社への賃貸なら不動産所得
- 建物は、旅館業の施設に供することが明らかなら居住用賃貸建物に当たらない。取得の日の資料が大切
- 決算書では、役務の原価を含めた利益率と稼働実績が銀行に見られる
サービスアパートメントは、運営の形を決める段階で、消費税・所得税・融資の扱いがほぼ決まります。クレフティでは不動産投資家向けサポートの中で、運営形態の比較から、取得時の消費税、融資を見据えた決算書づくりまでご相談いただけます。シェアハウスとの違いはシェアハウスの税務もご覧ください。
