融資・資金調達

借入金の返済は経費にならない|利益が出ているのにお金が足りない理由と、資金繰りを守る返済計画

「決算は黒字なのに、通帳の残高がどんどん減っていく」。融資を受けている経営者から、とても多く聞くご相談です。原因の多くは、借入金の返済は経費にならないという当たり前の仕組みを、資金繰りに落とし込めていないことにあります。

損益計算書(PL)に出てくるのは利息だけで、元金の返済はどこにも出てきません。ところが現実には、元金の返済で毎月まとまったお金が出ていきます。この記事では、借入金の返済が経費にならない理由、黒字なのにお金が足りなくなる仕組み、いくらまでなら返せるのかの目安、そして銀行がこの点をどう見ているかを、数字を使って解説します。

この記事の結論
  • 借入金の元金返済は経費にならない。経費になるのは支払利息・保証料など、お金を借りるコストだけ
  • 元金は「税引後の利益+減価償却費」から返す。返済額がこれを上回ると、黒字でも現預金が減る
  • 税金は利益にかかるため、返済のために必要な税引前の利益は返済額より大きい
  • 銀行は債務償還年数(借入金を何年で返せるか)で返済力を見る。返済計画は、決算書の数字から逆算して組む
  • 苦しくなってからでは遅い。返済期間の見直し・借換え・当座貸越などは、資金が尽きる前に相談する

借入金の返済はなぜ経費にならないのか

借りたときも、返すときも「損益」には関係しない

会社が銀行から1,000万円を借りると、現預金が1,000万円増え、同時に借入金(負債)が1,000万円増えます。お金は増えましたが、これは売上ではありません。いずれ返す約束のお金を預かっただけなので、利益は1円も増えません。

返すときも同じです。元金を100万円返すと、現預金が100万円減り、借入金も100万円減ります。お金は出ていきましたが、預かったお金を戻しただけなので、利益は1円も減りません。

つまり、借入金の元金は貸借対照表(BS)の中だけで動く取引です。借りたときに収入にならない以上、返すときにも経費にはなりません。

経費になるもの、ならないもの

借入れに関係する支出を整理すると、次のようになります。

支出経費(損金)になるか決算書のどこに出るか
元金の返済ならないBSの借入金が減るだけ
支払利息なるPLの営業外費用(支払利息)
信用保証協会の保証料なる(保証期間に応じて按分)前払分はBS、当期分はPL
融資の事務手数料なる(内容により按分の場合あり)PL
借入金で買った設備買ったときは経費にならず、減価償却で少しずつ経費になるBSの固定資産→PLの減価償却費

ここで見落としやすいのが最後の行です。借入金で設備や不動産を買うと、支払ったお金はすぐには経費にならず、減価償却を通じて何年もかけて経費になります。「お金が出ていくタイミング」と「経費になるタイミング」がずれることが、資金繰りを難しくする根本の原因です。

黒字なのにお金が足りなくなる仕組み

数字で見てみる

ある会社の1年間を例にします(法人税等は、わかりやすくするため利益の30%と仮定しています)。

項目金額
税引前の利益1,000万円
法人税等(30%と仮定)▲300万円
税引後の利益700万円
減価償却費(お金が出ていかない経費)の足し戻し+200万円
返済に使えるお金(返済原資)900万円
元金の返済▲1,200万円
1年間で減る現預金▲300万円

決算書では1,000万円の黒字です。税金もきちんと払っています。それでも、元金の返済が1,200万円あるため、現預金は1年で300万円減ります。これが「黒字なのにお金がない」の正体です。

税金の分だけ、必要な利益は大きくなる

もう一つ押さえておきたいのは、元金を返すお金は、税金を払った後のお金だということです。

上の例で、現預金を減らさずに元金1,200万円を返すには、減価償却費200万円を除いて、税引後の利益が1,000万円必要です。税率30%で逆算すると、税引前の利益は約1,430万円。返済額を少し上回る程度の利益では足りないのです。

返済原資 = 税引後の利益 + 減価償却費(返済原資 ≧ 年間の元金返済額 であれば、本業から返済できている)

返済が重くなりやすい3つの場面

この「返済原資<元金返済」は、次のような場面で起きやすくなります。

  1. 設備や不動産を短い期間の借入で買った:設備の償却期間より借入期間が短いと、経費になるペースより返済のペースのほうが速くなります
  2. 運転資金を長期の分割返済で借りた:本来は売上の回収で戻ってくるお金なのに、毎月の元金返済が利益から出ていきます
  3. 減価償却が終わった:償却が終わると経費が減って税金が増え、手元に残るお金も減ります。不動産投資でこれが起きる状態はデッドクロスと呼ばれます

銀行は返済力をどう見ているか

債務償還年数で「何年で返せるか」を測る

銀行も、借入金の返済が経費にならないことを前提に、決算書から返済力を計算しています。代表的な指標が債務償還年数です。

著書のモデルでは、債務償還年数を次のように計算します。

債務償還年数 =(借入金 − 現預金)÷(経常利益 + 減価償却費 − 法人税等)

分母は、先ほどの返済原資とほぼ同じ考え方です。今のペースで稼いだお金を全部返済に回したら、何年で借入金を返し終わるかを表しています。著書のモデルでは、10年以内が健全、20年を超えると厳しいという目安です。

「返済額>返済原資」は、銀行には危険信号に見える

年間の元金返済額が返済原資を上回っている会社は、銀行から見ると「本業の稼ぎでは返せておらず、手元資金を取り崩しているか、別の借入れで返している」状態です。この状態が続くと、次のように評価されやすくなります。

  • 現預金が減り、安全性の評価が下がる
  • 新しい融資が、実質的に返済資金の穴埋めと見られる
  • 決算書が黒字でも、追加の融資に慎重になる

融資の審査で銀行が見ているポイントは、銀行の融資審査で見られるポイントで詳しく解説しています。

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資金繰りを守る返済計画の立て方

1. 借入期間を、お金の使い道に合わせる

いちばん大切なのは、借りる時点で、返済期間をお金の使い道に合わせることです。

使い道返済の考え方の目安
設備・不動産減価償却の期間(耐用年数)に近い期間の長期借入れ
売掛金・在庫など運転資金回収で戻るお金なので、当座貸越や短期継続融資など、元金を分割で返さない形も検討
赤字の補てん返済原資から逆算して、無理のない期間に。事業計画とセットで説明

不動産の場合の考え方は融資期間と耐用年数の関係で解説しています。運転資金については、当座貸越や短期継続融資を使うと、毎月の元金返済を抑えられる場合があります。

2. 返済原資と元金返済を、毎年並べて確認する

決算のたびに、「返済原資」と「来期の元金返済額」を並べて確認します。借入れが複数ある会社は、金融機関ごとの返済予定表を一覧にし、来期の返済総額を出しておくと、資金繰りの見通しが立ちやすくなります。月ごとの資金の動きは資金繰り表に落とし込みます。

3. 苦しくなる前に、返済条件を相談する

返済原資が足りないとわかったら、資金が尽きる前に金融機関へ相談します。主な選択肢は次のとおりです。

  • 借換え:複数の借入れをまとめ、返済期間を延ばして月々の返済を軽くする(借換えの記事)
  • 運転資金の組み替え:分割返済の運転資金を、当座貸越や短期継続融資に切り替える
  • 条件変更(リスケジュール):一定期間、元金の返済を減らす・止める。新規融資への影響が大きいため、最後の手段として慎重に検討する(リスケの記事)

4. 「繰上返済すれば節税になる」は誤解

利益が出た年に、税金を減らすつもりで借入金を繰上返済する方がいますが、元金の返済は経費にならないため、税金は1円も減りません。むしろ現預金が減り、銀行からの安全性の評価が下がることもあります。手元資金に余裕があるかを見たうえで判断してください。

実際にあったご相談事例から

売上が伸びていた会社が、設備投資を5年返済の借入れで行い、決算は黒字なのに、毎月の資金繰りが苦しくなっていた、というご相談がありました。設備の償却期間に比べて返済期間が短く、元金返済が返済原資を大きく上回っていたのが原因です。

このケースでは、決算書と事業計画をもとに返済原資を示したうえで、金融機関と返済期間の見直しを相談しました。ポイントは、「返済が苦しい」とだけ伝えるのではなく、決算書の数字で、なぜ返済原資が足りないのか、期間を見直せばどう返せるのかを説明することです。

筆者自身、2019年に、複数の銀行から「あなたには、貸せません」と言われ、融資が止まった経験があります。減価償却の速い物件が多く、簿価より負債が大きい債務超過の状態になっていたためです。決算書の見え方を意識せずに借り続けると、ある日突然、資金の入口が閉じることがあります。返済計画は、決算書の数字と一緒に考えるものだと、身をもって学びました。

まとめ

  • 借入金の元金返済は経費にならない。経費になるのは利息や保証料などのコストだけ
  • 元金は「税引後の利益+減価償却費」から返す。返済がこれを上回れば、黒字でも現預金は減る
  • 税金の分だけ、返済に必要な税引前の利益は大きくなる
  • 銀行は債務償還年数で返済力を見ている。返済原資を超える返済が続くと、追加融資に慎重になる
  • 借入期間はお金の使い道に合わせ、苦しくなる前に借換えや運転資金の組み替えを相談する

税理士法人クレフティでは、累計120億円超の融資承認、20行超の金融機関との折衝の経験をもとに、決算書の見せ方と返済計画の組み立てを支援しています。代表の相亰と髙橋が構築した独自の財務設計の手法(クレフティメソッド)で、「返せる計画」と「借り続けられる決算書」を一緒に考えます。初回のご相談は無料です。融資・資金調達の支援もご覧ください。

よくある質問

借入金の返済はなぜ経費にならないのですか?
借入金の元金は、借りたときに収入(売上)にならず、返すときにも経費になりません。借りたお金を返すのは、預かったお金を戻すのと同じで、会社の利益を増やしも減らしもしない取引だからです。経費になるのは、お金を借りるコストである支払利息や保証料のほうです。
利益がいくらあれば、借入金を返済できますか?
元金返済の原資は、おおむね「税引後の利益+減価償却費」です。減価償却費はお金が出ていかない経費なので足し戻します。たとえば年間の元金返済が1,000万円なら、税引後の利益と減価償却費の合計で1,000万円以上が必要です。法人税等は利益にかかるため、返済に必要な税引前の利益は、返済額より大きくなります。
返済が苦しいとき、まず何をすればいいですか?
まず、今後12か月の資金繰り表を作り、いつ、いくら足りなくなるかを数字で把握します。そのうえで、返済期間の延長(借換え)、運転資金の当座貸越や短期継続融資への組み替え、条件変更(リスケジュール)などを、資金が尽きる前に金融機関へ相談します。早めに相談するほど、選べる手段が多くなります。

※本記事は2026年10月25日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

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