証憑・印紙・税務調査

修正申告と更正の請求|期限(5年・10年・2か月)、加算税と延滞税、不動産でよくある誤りと「できない訂正」

確定申告や決算の申告をした後で、計算の誤りや計上漏れに気づくことがあります。不動産賃貸業は、減価償却、土地建物の按分、修繕費、消費税の区分など、判断の分かれる項目が多く、数年たってから誤りが分かることも珍しくありません。

この記事では、申告の誤りを正す2つの手続、修正申告と更正の請求を、期限、加算税と延滞税、手続の順に整理し、不動産でよくある誤りの例と、更正の請求ではできない訂正を確認します。税理士の不正と加算税に関する最高裁判決、個人と法人の違い、決算書の表示と銀行への説明もあわせて解説します。

この記事の結論
  • 税額が少なすぎたら修正申告、多すぎたら更正の請求
  • 更正の請求の期限は、原則として法定申告期限から5年。法人の欠損金額の過少は10年(平成30年4月1日以後開始事業年度)、後発的理由は2か月
  • 調査の事前通知の前の自主的な修正申告なら過少申告加算税はかからない。延滞税はかかるので同時に納付する
  • 更正の請求は「法律の規定に従っていなかった」「計算に誤りがあった」ことが前提。取得した年にしか選べない方法を後から変えることはできない
  • 税理士に任せていても、過少申告の責任は原則として納税者に及ぶ(最高裁平成18年4月20日判決)

修正申告と更正の請求の違い

項目修正申告更正の請求
使う場面税額が少なすぎた、還付が多すぎた、欠損金が多すぎた税額が多すぎた、還付が少なすぎた、欠損金が少なすぎた
効果提出により税額が確定する税務署長が調査・検討し、認めれば減額更正をする
期限税務署長の更正があるまでいつでも原則として法定申告期限から5年以内
添付書類特に定めはない(内容が分かる資料を用意する)請求の理由の基礎となる事実を証明する書類
加算税・延滞税過少申告加算税(自主的なら軽減・免除)、延滞税かからない(還付加算金が付くことがある)

国税庁のタックスアンサーは、更正の請求書が提出されると税務署で内容を検討し、納め過ぎた税金があるなどと認めた場合に減額更正をすること、所得金額の増減があっても最終的な税額や純損失の金額に変わりがない場合は更正の請求はできないことを説明しています(国税庁 No.2026 確定申告を間違えたとき)。

期限:5年・10年・2か月

区分期限根拠・出典
通常の更正の請求(所得税・法人税・消費税)法定申告期限から5年以内国税通則法23条1項(所得税の更正の請求手続)
確定申告義務のない人の還付申告提出した日から5年以内同上
法人税の翌期へ繰り越す欠損金額が過少平成30年4月1日以後開始事業年度は10年以内法人税の更正の請求
後発的理由(判決、契約の解除など)その事実が生じた日の翌日から2か月以内国税通則法23条2項
修正申告更正があるまでいつでも(税務署の更正・決定ができる期間を過ぎると実益はない)国税通則法19条

期限が土・日・祝日に当たる場合は、その翌日が期限になります。後発的理由の例としては、申告の基礎となった事実に関する訴訟の判決で異なる事実が確定した場合や、契約が解除権の行使などで解除された場合などがあります。たとえば物件の売買契約が後に解除されたときは、2か月の期限に注意が必要です。

加算税と延滞税

修正申告で納める税額が増えると、加算税と延滞税がかかります。

修正申告の時期過少申告加算税
調査の事前通知の前(自主的)かからない
事前通知の後、調査による更正を予知する前原則5%(期限内申告税額と50万円のいずれか多い額を超える部分は10%)
調査を受けた後(更正の予知後)、または更正原則10%(同じく超える部分は15%)

延滞税は、法定納期限の翌日から納付の日までの日数に応じてかかります。国税庁の説明では、偽りその他不正の行為により国税を免れた場合等を除き、期限内申告書を提出していて、法定申告期限から1年を経過してから修正申告をしたときなどは、一定の期間を延滞税の計算期間に含めない特例があります(国税庁 No.9205 延滞税の計算方法)。割合や重加算税は過少申告加算税・重加算税・延滞税とはで解説しています。

税理士に任せていた場合の加算税(最高裁平成18年4月20日判決)

最高裁判所第一小法廷 平成18年4月20日判決(平成17年(行ヒ)第9号)は、申告を依頼した税理士が、納税者に無断で虚偽の申告書を提出し、納税資金を着服していた事案です。

最高裁は、税理士の隠ぺい・仮装行為を納税者本人の行為と同視できるのは、納税者がその行為を認識し、または容易に認識でき、是正や防止の措置を講ずることができたのにしなかった場合などであり、税理士の選任や監督に落ち度があるというだけでは足りないとして、この事案では重加算税の賦課要件を満たさないと判断しました。一方で、「正当な理由」とは真に納税者の責めに帰することのできない客観的事情がある場合をいうとして、過少申告加算税については「正当な理由」があるとは認められないとしています。

実務への示唆:申告を税理士に任せていても、申告書の内容を確認する責任は納税者にあります。誤りに気づいたら、まず自主的な修正申告を検討するのが基本です。

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不動産賃貸業でよくある誤りと、使う手続

誤りの例税額への影響手続
礼金・更新料・返還不要の敷金の計上漏れ増える修正申告
土地部分の借入金利子を損益通算に含めていた(個人)増える修正申告
資本的支出を修繕費にしていた増える修正申告
個人で減価償却費の計上を漏らしていた減る更正の請求(個人の償却は強制償却)
不動産取得税・登録免許税などの経費の計上漏れ減る更正の請求
住宅家賃を課税売上にしていた(消費税)減る更正の請求
法人で償却費を少なく計上していた変わらない(任意償却の範囲内なら正しい処理)更正の請求の対象にならない

更正の請求ではできない訂正

更正の請求は、申告が国税に関する法律の規定に従っていなかったこと、または計算に誤りがあったことにより税額が過大になった場合の手続です。法律が認める範囲で選んだ方法を、後から有利な方法に変えるための手続ではありません。

  • 中古建物の耐用年数:国税不服審判所 平成25年12月17日裁決は、不動産賃貸業の法人が中古建物に法定耐用年数を使っていたところ、後の事業年度で見積法等による短い耐用年数に変更した事案で、見積法等による算定は取得して事業の用に供した最初の事業年度に限りできるとして、変更を認めませんでした。この事案では、更正の請求に係る調査の担当職員が誤った指導をしていたことも認定されましたが、処分は信義則に反しないとされています(中古建物の耐用年数と否認された事例)
  • 法人の損金経理が要件のもの:法人の減価償却費は、確定した決算で損金経理した金額が基礎になります。決算で計上しなかった償却費を、更正の請求で後から損金に加えることはできません(法人の任意償却と償却不足)
  • 期限までの届出が要件の選択:消費税の簡易課税や課税事業者の選択のように、事前の届出で決まるものは、申告後に変えることはできません

手続の進め方

  1. 誤りの内容と年分を特定する:どの取引の、どの金額が、どの年分(事業年度)に影響するか。同じ誤りが複数年に及んでいないか
  2. 影響する税目を洗い出す:所得税(法人税)だけでなく、消費税、住民税、事業税への影響
  3. 根拠資料をそろえる:契約書、領収書、見積書、計算表。更正の請求では事実を証明する書類の添付が必要
  4. 作成・提出する:国税庁の「更正の請求書・修正申告書作成コーナー」で作成し、e-Taxで提出できる。書面でも提出可能
  5. 修正申告なら同時に納付する:延滞税を増やさないため

国外財産調書の提出が必要な人が国外財産に関する申告漏れに気づいた場合は、調書と修正申告の順序によって加算税の扱いが変わることがあります(海外送金・海外口座と税務調査)。

個人と法人で違うところ

項目個人法人
減価償却の計上漏れ強制償却なので、計上漏れは更正の請求の対象になり得る任意償却。損金経理しなかった償却費は後から加えられない
住民税・事業税所得税の修正申告・更正の内容が市町村・都道府県に連絡され、住民税・事業税が見直される法人住民税・法人事業税も修正申告(更正の請求)が必要
欠損金・純損失青色申告の純損失の繰越しは3年欠損金の過少は10年以内に更正の請求ができる(平成30年4月1日以後開始事業年度)
会計への反映申告書の数字を直す過年度の誤りを会計上も処理し、当期の決算書に反映する

会計上の扱いと、銀行への説明

決算書にどう表れるか

法人の決算書は、会社法431条の「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」、すなわち一般に公正妥当と認められる会計基準(GAAP:Generally Accepted Accounting Principles)に従って作ります。修正申告で追加納付した法人税等は、当期の決算書で過年度の法人税等として処理するのが一般的で、過年度の収益・費用の誤りの修正をどの区分に表示するかは、企業会計の基準と誤りの内容に応じて判断します。税務上の修正と、決算書のどの区分に表示するかは別の問題ですから、顧問税理士と検討してください。

銀行への説明

場面影響と説明のポイント
追加納付現預金が減る。著書のモデルで使う債務償還年数((借入金−現預金)÷(経常利益+減価償却費−法人税等))の現預金と法人税等に影響する
当期の利益過年度分の修正が当期の損益に入ると、当期の利益が実態とずれて見える。内訳を説明できるようにする
更正の請求による還付還付金は資金繰りにプラスだが、過去の決算書の利益が過小だった理由を説明できるようにする
申告書の信頼自主的に誤りを正したことは、隠しておくよりはるかに信頼につながる

誤りを見つけて自主的に正すことは、税務調査で指摘されるより、加算税の面でも銀行の評価の面でも有利です。銀行に出す決算書の確認は決算書を銀行に出す前にやるべきチェックもご覧ください。

実務のチェックポイント

  • 誤りが税額を増やすのか減らすのかを確認したか(修正申告か更正の請求か)
  • 更正の請求の期限(5年・10年・2か月)を過ぎていないか
  • 同じ誤りが複数の年分・事業年度に及んでいないか
  • 消費税・住民税・事業税への影響を確認したか
  • 更正の請求に添付する事実を証明する書類をそろえたか
  • 修正申告は自主的に、早めに提出し、同時に納付しているか
  • 法人は、過年度の修正を会計上どう処理し、銀行にどう説明するかを決めたか

税務調査で指摘を受けた後の手続は個人大家の税務調査の流れと準備、調査の論点は不動産業の税務調査で見られるポイントで解説しています。

まとめ

  • 税額が少なすぎたら修正申告、多すぎたら更正の請求
  • 更正の請求は原則5年、法人の欠損金の過少は10年、後発的理由は2か月
  • 事前通知の前の自主的な修正申告なら過少申告加算税はかからない。延滞税は同時に納付して止める
  • 更正の請求は法令違反・計算誤りの是正の手続。中古建物の耐用年数の見積りや法人の償却費の追加のように、後から変えられないものがある
  • 税理士に任せていても責任は納税者に及ぶ。誤りを自主的に正すことが、加算税の面でも銀行の信頼の面でも最善

過去の申告の見直しや、修正申告・更正の請求の判断は、影響する年分と税目が多いほど専門的になります。クレフティでは不動産投資家向けサポートの中で、過年度の申告の点検から修正の手続、銀行への説明まで含めたご相談をお受けしています。

よくある質問

修正申告と更正の請求は、どう使い分けますか?
税額が少なすぎた(還付が多すぎた)場合は修正申告で正しい税額に直し、税額が多すぎた(還付が少なすぎた)場合は更正の請求をします。修正申告は自分で税額を確定させる手続ですが、更正の請求は税務署長に減額の更正を求める手続で、税務署が内容を検討したうえで減額更正をします。
更正の請求はいつまでできますか?
国税庁の案内では、所得税・法人税とも、原則として法定申告期限から5年以内です。法人税で翌期へ繰り越す欠損金額が過少だった場合は、平成30年4月1日以後に開始した事業年度に係るものは10年以内です。判決などの後発的理由による場合は、その事実が生じた日の翌日から2か月以内です。
自分で誤りに気づいて修正申告をすれば、加算税はかかりませんか?
税務署から調査の事前通知を受ける前に自主的に修正申告をした場合、過少申告加算税はかかりません。事前通知の後、調査による更正を予知する前の修正申告では、原則5%(一部10%)の過少申告加算税がかかります。どちらの場合も、本税を納めるまでの延滞税はかかるため、修正申告と同時に納付するのが基本です。

※本記事は2026年10月18日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。

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