取得・建築

設計料・建築確認申請費用・設計変更費の処理|取得価額に入るもの、計画変更で不要になった設計費の扱い(法人と個人)

新築の計画では、工事が始まる前から、設計事務所への設計料、建築確認の申請手数料、地盤調査の費用など、まとまった支出が続きます。工事会社に一括で頼む場合も、設計と施工を別々の会社に頼む場合もあります。さらに、融資の条件や近隣との調整で設計を変更することや、計画そのものを見直すこともあります。

これらの費用は、建物を建てるための費用なら建物の取得価額、計画変更で使えなくなった設計の費用なら法人は損金にすることもできる、というのが基本の整理です。この記事では、設計料・建築確認申請費用・設計変更費の税務上の扱いを法人と個人に分けて整理し、消費税の時期、会計上の表示、銀行からの見え方まで解説します。

この記事の結論
  • 設計料・工事監理料・建築確認の手数料・建物のための地盤調査費は、原則として建物などの取得価額(法人・個人とも)
  • 設計変更しても同じ建物を建てるなら、追加の設計料も取得価額
  • 建設計画の変更で不要になった設計・調査・基礎工事の費用は、法人は取得価額に算入しないことができる(法人税基本通達7-3-3の2(2))。個人には同じ趣旨の通達がなく個別判断
  • 消費税は、設計業務が完了した日の課税仕入れが原則。一式契約は最後の業務が終わるまで完了しないと判断されやすい
  • 計画中止の損失は、会計上の表示区分(販管費か特別損失か)を実態に応じて検討する。銀行への説明資料もセットで

設計料・建築確認費用は建物の取得価額

根拠:建設のために要した経費

自己が建設した減価償却資産の取得価額は、建設のために要した原材料費、労務費及び経費の額と、その資産を事業の用に供するために直接要した費用の額の合計額です(法人税法施行令54条1項2号、所得税法施行令126条1項2号)。建物の建築を請け負わせる場合でも、設計料・工事監理料・確認申請の費用は、建物を建てるために欠かせない経費として取得価額を構成します。

国税庁の質疑応答事例(住宅取得等資金の贈与税の非課税に関するもの)でも、建築業者以外の建築士に払う設計料は、工事の請負代金そのものではないものの、家屋の新築に直接必要なもので建物本体価格を構成すると説明されています(国税庁 質疑応答事例)。制度は違いますが、設計料の性格を考えるうえで参考になります。

費用税務上の扱い(法人・個人共通)補足
基本設計・実施設計の設計料建物などの取得価額設計事務所への別払いでも同じ
工事監理料建物などの取得価額工事期間中の役務の対価
建築確認・中間検査・完了検査の手数料建物などの取得価額行政手数料は消費税非課税
構造計算・省エネ計算などの申請関係の報酬建物などの取得価額確認申請のための費用
建物の建設のための地質調査・地盤強化土地ではなく建物の取得価額法人税基本通達7-3-4(注)、所得税基本通達38-10(注)1
工事請負契約書・確認申請書の印紙代取得価額に含める考え方がある(扱いは要確認)平成11年6月28日裁決では取得価額への算入を請求人も争っていない。7-3-3の2(1)の例示は不動産取得税・登録免許税等

土地の造成や改良のための工事は土地の取得価額になる一方、建物を建てるためだけの地盤改良は建物の取得価額になります。この線引きは造成費・地盤改良費・擁壁工事は土地か建物か構築物かで詳しく扱います。

取得価額に入れた設計料は、附属設備などにも配分する

設計料は建物全体のための費用なので、取得価額に入れる際は、建物本体・建物附属設備・構築物の工事費の割合などで配分するのが合理的です。建物本体だけに寄せると、耐用年数の短い附属設備の償却が遅くなります(建物と建物附属設備・構築物の区分)。

設計変更費・計画変更で不要になった設計費

同じ建物を建てるなら追加費用も取得価額

設計変更には、大きく分けて2つの場面があります。

  1. 変更後もその建物を建てる:間取りの見直し、仕様の変更、確認申請のやり直しなど。追加の設計料や再申請の手数料は、完成する建物を建てるための費用なので、取得価額に含めます
  2. 計画を変えて、最初の設計が使えなくなる:建物の規模や用途を根本から変える、別の土地で建てることにする、計画そのものを中止するなど

法人:不要になった費用は取得価額に算入しないことができる

法人税基本通達7-3-3の2は、固定資産の取得に関連して支出するものであっても取得価額に算入しないことができる費用の例として、次のものを挙げています。

  • (2) 建物の建設等のために行った調査、測量、設計、基礎工事等で、その建設計画を変更したことにより不要となったものに係る費用の額
  • (3) いったん締結した固定資産の取得に関する契約を解除して他の固定資産を取得することとした場合に支出する違約金の額

不要になった設計は、完成する建物の価値を構成していません。そのため法人は、その費用を損金にすることができます。ただし「できる」という取扱いなので、建設仮勘定に含めたまま建物の取得価額にしても誤りではありません。どちらにするかは決算の経理で決まります。

個人:同じ趣旨の通達はなく、個別判断

所得税基本通達には、法人税基本通達7-3-3の2(2)と同じ趣旨の定めは置かれていません。契約解除の違約金については、各種所得の金額の計算上必要経費に算入されたものを除き、取得した固定資産の取得費または取得価額に算入するとされています(所得税基本通達38-9の3)。

個人が計画変更で不要になった設計費を負担した場合、すでに賃貸業を営んでいて、その業務の遂行上生じた費用といえるか、新しい物件の取得価額の一部と見るべきか、といった事実関係に応じた判断になります。賃貸業を始める前の最初の物件で計画を中止した場合などは、必要経費にならないこともあり得ます。金額が大きいときは、申告前に税理士に確認してください。

場面法人個人
設計変更後もその建物を建てる取得価額取得価額
計画変更で設計・調査・基礎工事が不要に取得価額に算入しないことができる(7-3-3の2(2))明文の定めなし。事実関係に応じて判断
契約を解除して別の建物を取得、違約金を払う取得価額に算入しないことができる(7-3-3の2(3))必要経費に算入されたものを除き取得価額(38-9の3)
計画そのものを中止(何も建てない)資産性がなければ損金(損失)業務の状況により必要経費か否かを判断

消費税:設計業務が完了した日が原則

設計や監理は役務の提供なので、課税仕入れの時期は役務の提供が完了した日が原則です。設計料を前払いしても、その時点で控除できるわけではありません。完成前に行われた課税仕入れを建設仮勘定にまとめている場合、建物が完成した課税期間にまとめて控除することも認められています(消費税法基本通達11-3-6)。

注意したいのは、企画・設計・監理を一式で契約している場合です。業務ごとに対価が区分されておらず、業務ごとの完了確認もなければ、最後の業務(監理や竣工)が終わるまで役務の提供は完了していないと判断されやすくなります。中間金の控除時期とあわせて、建築請負の中間金・着手金の処理と消費税の計上時期で解説しています。

なお、住宅として貸す建物の設計料の消費税は、居住用賃貸建物の制限や課税売上割合・用途区分の判定と関係します(居住用賃貸建物の消費税)。建物本体とあわせて判定を確認してください。

公表裁決に見る判断のポイント

平成11年9月16日裁決(裁決事例集No.58・276頁):一式のコンサルタント業務は竣工まで完了しない

賃貸用建物の建設に当たり、企画・設計段階から竣工までに及ぶコンサルタント業務を委託した個人が、契約締結時・着工時に払った委託料を、支払った課税期間の課税仕入れとした事案です。審判所は、業務ごとに委託料が区分されておらず、業務ごとの作業完了の確認も行われていないことから、役務の提供が完了したのは早くとも建築現場監理の完了時であり、支払時の課税期間の課税仕入れとは認められないと判断しました(国税不服審判所)。

実務への示唆:設計事務所・コンサルタントとの契約は、基本設計・実施設計・確認申請・監理などの業務ごとに対価と完了時期を定め、成果物の受領や完了の確認を書面で残しておくと、課税仕入れの時期の判断が明確になります。

平成12年12月4日裁決(裁決事例集No.60・28頁):「算入しないことができる」の選択は後から変えにくい

不動産売買業の法人が、ビルの取得に係る不動産取得税等を取得価額に算入して申告した後、損金にすべきだったとして更正の請求をした事案です。審判所は、法人税基本通達7-3-3の2による処理は確定決算で法人が自主的に選択した正当な会計処理であり、いったん選択した後に再度の選択の機会を与えれば任意に取得価額を減額する恣意的な所得計算を認めることになるとして、更正の請求を認めませんでした(国税不服審判所)。

実務への示唆:この事案は不動産取得税等に関するものですが、同じ通達の(2)(計画変更で不要になった設計費など)も「取得価額に算入しないことができる」という取扱いです。不要になった設計費を損金にするか取得価額に含めるかは、決算を確定させる前に決めておく必要があります。

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会計上の扱いと決算書の表示

企業会計(一般に公正妥当と認められる会計基準(GAAP:Generally Accepted Accounting Principles)。中小企業では「中小企業の会計に関する指針」や「中小企業の会計に関する基本要領」など)でも、建設中の固定資産のための設計料などは建設仮勘定に集め、完成時に建物などへ振り替えるのが一般的です。

計画変更で使えなくなった設計の費用は、将来の収益を生む資産としての実体がないため、会計上も費用(損失)として処理することが考えられます。このとき問題になるのが、PLのどの区分に表示するかです。

著書では、PLの整え方として「収益は上に、費用は下に」という考え方を紹介しています。同じ費用でも、販管費に入れば営業利益を直接押し下げ、臨時・多額の損失として特別損失に表示されれば営業利益・経常利益には影響しません。ただし、税務上は損金算入が認められるかが論点であり、決算書の表示区分(販管費か特別損失か、資産計上か費用処理か)は、企業会計の基準(GAAP)に沿って判断する必要があります。計画中止が臨時的なものか、毎期の事業活動の中で通常生じるものかなど、どの区分にできるかは取引の実態次第です。顧問税理士・会計の専門家と検討してください。

銀行からの見え方

処理その期のPL竣工後のPLBS
設計料を取得価額に含める影響なし減価償却費として少しずつ費用建物等の簿価が増える
不要になった設計費を販管費で損金営業利益が減る影響なし純資産が税引後の分だけ減る
不要になった設計費を特別損失で処理(実態がそうである場合)営業利益・経常利益は変わらず、当期純利益が減る影響なし純資産が税引後の分だけ減る

銀行の格付けでは、営業利益・経常利益と、著書のモデルでいう債務償還年数「(借入金−現預金)÷(経常利益+減価償却費−法人税等)」が重く見られます。計画変更の費用が数百万円規模になると、その期の数字に表れます。

もう一つ、銀行が気にするのは計画がなぜ変わったのかです。融資の申込み中に設計が変わると、事業計画や工事費の見積り、収支計画もすべて出し直しになります。変更の理由(近隣協議、行政指導、建築費の上昇など)と、変更後の計画の妥当性を資料で示せるようにしておくと、審査が止まりにくくなります。融資申込みの準備は銀行の融資審査で見られるポイントも参考にしてください。

実務のチェックポイント

  1. 設計料・監理料・確認申請の費用を、建設仮勘定に集めているか(販管費に入れていないか)
  2. 建物のための地盤調査・地盤改良を、土地ではなく建物の取得価額にしているか
  3. 竣工時に、設計料などを建物本体・附属設備・構築物へ合理的に配分したか
  4. 設計変更が「同じ建物の変更」か「計画変更で不要になったもの」かを区分し、記録を残したか
  5. 法人で不要になった設計費を損金にする場合、決算確定前に経理方針を決めたか
  6. 個人で計画変更・中止があった場合、業務開始前か後か、取得価額か必要経費かを税理士と確認したか
  7. 設計・コンサルタント契約は、業務ごとの対価と完了確認がわかる形になっているか
  8. 計画変更の理由と変更後の収支計画を、銀行に説明できる資料にしたか

まとめ

  • 設計料・工事監理料・建築確認の手数料・建物のための地盤調査費は、法人・個人とも建物などの取得価額
  • 設計変更しても同じ建物を建てるなら、追加費用も取得価額
  • 計画変更で不要になった設計・調査・基礎工事の費用は、法人は取得価額に算入しないことができる。選択は決算確定前に
  • 個人には同じ趣旨の通達がなく、業務の状況に応じた個別判断
  • 計画中止の損失の表示区分は実態で判断し、変更理由とあわせて銀行へ説明できるようにしておく

物件取得時の諸費用全体は物件取得時の諸費用一覧、新築の竣工前後の費用は新築の竣工前後に出る費用の扱いで整理しています。新築計画の段階からのご相談は、不動産投資家向けサービスをご覧ください。

よくある質問

アパートを建てるために建築士に払った設計料は、その年の経費になりますか?
原則としてなりません。設計料や工事監理料は、建物を建設するために要した費用として、建物(と建物附属設備・構築物)の取得価額に含め、耐用年数にわたって減価償却します(法人税法施行令54条1項2号、所得税法施行令126条1項2号)。工事会社と別に設計事務所へ払った場合も同じです。
途中で建物の計画を変えて、最初の設計図が使えなくなりました。その設計料はどうなりますか?
法人の場合、建設計画を変更したことにより不要となった調査・測量・設計・基礎工事等の費用は、建物の取得価額に算入しないことができます(法人税基本通達7-3-3の2(2))。損金にするか取得価額に含めるかは決算の経理で決まり、いったん取得価額に含めた後に更正の請求で変えることは難しいとされています。個人については同じ趣旨の通達の定めがないため、事実関係に応じて個別に判断します。
建築確認申請の手数料に消費税はかかりますか?
特定行政庁(地方公共団体)に払う建築確認の手数料は、法令に基づく行政手数料として非課税です(消費税法別表第二第5号、消費税法基本通達6-5-1)。民間の指定確認検査機関に払う手数料や、申請書類の作成を設計事務所に依頼した報酬は、請求書の消費税の記載を確認してください。いずれも税務上は建物の取得価額に含めるのが基本です。

※本記事は2026年10月18日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。

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