減価償却・設備

昇降機・EV充電設備・機械式駐車場の耐用年数|エレベーター17年・機械式駐車設備10年と区分の考え方、裁決事例と銀行の見え方

一棟マンションの購入や新築で、意外と大きな金額になるのがエレベーター、機械式駐車場、最近ではEV(電気自動車)充電設備です。これらは建物本体とは耐用年数が大きく違ううえに、それぞれ属する資産の種類(建物附属設備・機械及び装置・構築物)も異なります。

この記事では、エレベーター・機械式駐車場・EV充電設備の耐用年数と区分の考え方を、耐用年数省令の条文、国税不服審判所の裁決事例にそって整理し、法人と個人の違い、決算書の表示、銀行からの見え方までを解説します。

この記事の結論
  • エレベーターは建物附属設備の昇降機設備で17年(エスカレーターは15年)。建物本体(鉄筋コンクリート造の住宅用47年)とは分けて償却する
  • 機械で車両を運ぶ機械式駐車設備は機械及び装置で10年。自走式の立体駐車場は機械式駐車設備に当たらず、露天式なら構築物の15年など構造で判定する
  • EV充電設備は耐用年数表に特掲がない。配線・分電盤など建物と一体の部分と、充電器本体を分けて、それぞれ区分を検討する
  • 区分して償却を早めても償却前利益は変わらないが、経常利益と簿価の見え方は変わる。銀行への説明を準備しておく

耐用年数の一覧:昇降機・駐車設備・電気設備

耐用年数は「減価償却資産の耐用年数等に関する省令」(耐用年数省令)の別表で、資産の種類・構造・用途・細目ごとに決まっています。この記事に関係するものを抜き出すと、次のとおりです(e-Gov法令検索の現行の耐用年数省令で確認)。

資産別表・種類細目耐用年数
エレベーター別表第一・建物附属設備(昇降機設備)エレベーター17年
エスカレーター別表第一・建物附属設備(昇降機設備)エスカレーター15年
機械式駐車場別表第二・機械及び装置(55 前掲の機械及び装置以外のもの並びに前掲の区分によらないもの)機械式駐車設備10年
露天式の立体駐車場別表第一・構築物(金属造のもの)露天式立体駐車設備15年
コインパーキングの精算機など別表第一・器具及び備品(11 前掲のもの以外のもの)無人駐車管理装置5年
受変電設備・配線・照明別表第一・建物附属設備(電気設備)その他のもの15年
停電用の蓄電池設備別表第一・建物附属設備(電気設備)蓄電池電源設備6年

建物本体は、鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造の住宅用で47年です。エレベーターを建物と一括で47年償却するか、昇降機設備として17年で償却するかで、定額法の償却率(47年は0.022、17年は0.059)で比べて、毎年の償却費は約2.7倍違います。建物と附属設備の区分全般は建物と建物附属設備・構築物の区分で詳しく扱っています。

なお、国税庁の「耐用年数等の見直し(平成20年度税制改正)に関するQ&A」によると、平成20年度改正で機械及び装置の区分が390区分から55区分に整理され、そのときに構築物の「露天式立体駐車設備」と、器具及び備品の「無人駐車管理装置」が追加されています。古い解説記事の年数をそのまま使わないよう注意してください。

3つの設備の区分の考え方

エレベーター:工事の内訳が根拠になる

エレベーターは建物に附属する設備として、建物附属設備の昇降機設備に当たります。新築では、建築請負契約の中にエレベーター工事が含まれていることが多いため、工事項目ごとの金額が分かる見積書・内訳明細書を受け取っておくことが前提になります。

中古の一棟物件では、売買契約書に土地と建物の価額しか書かれていないのが普通です。エレベーター部分を抜き出して17年を使うには、合理的な算定根拠が必要になります。根拠のない振り分けは否認のリスクがあるため、取得時に固定資産税の評価資料や建築時の資料が入手できないかを確認してください。

取得後のリニューアル(制御盤や巻上機の更新など)は、修繕費か資本的支出か、あるいは新たな資産の取得かを工事の実質で判断します。判断の流れは修繕費と資本的支出の違いと判定フロー、旧部品の除却は設備の一部取替えと旧部分の除却で解説します。

機械式駐車場と自走式立体駐車場は別物

ここが最も間違えやすい点です。

  • 機械式駐車設備:パレットやリフトなど機械で車両を搬送するもの。別表第二の機械及び装置に「機械式駐車設備」として掲げられ、10年
  • 自走式の立体駐車場:車が自分でスロープを上がるもの。機械及び装置ではなく、構造に応じて構築物または建物として判定する。屋根や壁のない露天式で金属造なら、構築物の「露天式立体駐車設備」15年が考えられる

機械及び装置は、通常はどの業種の設備かで耐用年数を判定します(耐用年数通達1-4-2)。ただ、機械式駐車設備は別表第二の最後の区分に細目として特掲されているため、賃貸マンションに付属する機械式駐車場では10年を使うのが一般的です。駐車場業として独立して運営している場合などは、設備の使い方を確認したうえで判定してください。駐車場の舗装や外構は駐車場舗装・フェンス・外構など構築物の耐用年数で扱っています。

EV充電設備:特掲がないので「部分」に分けて考える

EV充電設備は、耐用年数表に専用の細目がありません。国税庁が個別に年数を示した公表資料も、確認した範囲では見当たりませんでした。そこで、設備をいくつかの部分に分けて検討するのが実務的です。

部分考えられる区分考え方
受電容量の増設、分電盤、建物内の配線建物附属設備・電気設備(その他のもの)15年建物に附属する電気施設として建物と一体で機能する
駐車場までの埋設配管、基礎構築物または建物附属設備土地に定着する工作物か、建物の設備の延長かで判断
充電器本体(スタンド・壁掛け)器具及び備品など建物と構造上独立・可分か、固有の目的で設置されたかで判断

注意したいのは、建物附属設備の「蓄電池電源設備」(6年)は、耐用年数通達2-2-2で「停電時に照明用に使用する等のため」にあらかじめ蓄電池に充電して利用する設備とされている点です。EV充電器はこれとは目的が違うため、名前が似ていても当てはめないほうが安全です。充電器本体を器具及び備品とする場合も、細目に特掲がなければ「前掲のもの以外のもの」などの区分に当てはめることになります。金額が大きい場合は、着工前に顧問税理士と区分を決め、見積書もその区分で分けてもらってください。

税務上の扱い:法人と個人の違い

区分そのもの(どれが附属設備でどれが機械装置か)は、法人も個人も同じです。違いが出るのは、償却費の計上のしかたや、少額資産・補助金の扱いです。

項目法人個人
償却方法建物附属設備・構築物(平成28年4月1日以後取得)は定額法。機械及び装置は届出がなければ定率法届出がなければ定額法(法定償却方法)
償却費の計上損金経理した額のうち償却限度額まで損金(限度額以下なら任意)計算した償却費を必要経費に算入(任意に減らせない)
少額資産の特例貸付けの用に供した資産は原則として対象外(主要な事業として行う貸付けを除く)同様(主要な業務として行う貸付けを除く)
補助金国庫補助金等に当たれば圧縮記帳(法人税法42条)を検討国庫補助金等の総収入金額不算入(所得税法42条)を検討
耐用年数の短縮国税局長の承認が必要(法人税法施行令57条)同様(所得税法施行令130条)

機械式駐車設備は機械及び装置のため、法人では償却方法の届出をしていなければ定率法になります。償却方法の選び方は減価償却方法の選定・変更の届出で解説します。EV充電器など少額の設備を入居者向けに設置する場合の少額特例の扱いは、少額減価償却資産・一括償却資産と「貸付けの用」の除外を参照してください。

EV充電設備の補助金は、交付元や根拠によって国庫補助金等に当たるかが変わります。圧縮記帳を使うと補助金の年の課税は抑えられますが、取得価額が減るぶん以後の償却費が小さくなる、いわば課税の繰延べです。

裁決事例:駐車場と昇降機の区分

自走式立体駐車場に機械式駐車設備の年数は使えない(平成10年10月8日裁決)

  • 出典:国税不服審判所 平成10年10月8日裁決(裁決事例集No.56・251頁)[裁決全文]
  • 事案:パチンコ店に隣接する屋外露天式の自走式立体駐車場(2層、226台)について、法人は当初は建物の車庫用として28年、その後は旧別表第二の「機械式駐車設備」15年で償却していた。区役所の固定資産税(償却資産)の調査で15年とされたことも主張した
  • 判断:本件設備は自走式で、機械及び装置で車両を搬送するものではないと事実認定したうえで、土地に定着する工作物として構築物の「金属造のもの」のうち特掲のない「その他のもの」に当たり、当時の法令で45年とした。固定資産税での扱いは法人税の耐用年数に影響しないこと、耐用年数を短くするには事前に国税局長の承認(法人税法施行令57条)が必要なこと、過去の税務調査で指摘されなかったことは更正を違法にしないことも示した
  • 示唆:「機械式かどうか」は名称ではなく車両を機械で搬送するかという構造で判断されます。現行法令では露天式立体駐車設備15年が設けられていますが、裁決は当時の法令による判断です。いまの設備がどの細目に当たるかは、構造に照らして改めて確認してください

エレベーター工事は昇降機設備の取得価額(平成24年2月6日裁決)

  • 出典:国税不服審判所 平成24年2月6日裁決(裁決事例集No.86)[裁決全文]
  • 事案:印刷業の法人が、新工場として賃借した建物にエレベーター設置や高圧受電設備などの工事を行い、その費用を雑損失として一括で損金にした。法人は、移転前と同じように稼働させるための機能復旧工事だと主張した
  • 判断:工事は機能の低下した資産を元に戻すものではないとして修繕費の主張を退けた。そのうえで工事明細ごとに区分し、エレベーター設置工事は建物附属設備の昇降機設備(エレベーター)の取得価額とし、複数の工事に共通する費用は各工事の金額の割合で配賦した。一方、損金に算入すべき工事費用も一部認め、更正処分の一部を取り消した
  • 示唆:一つの請負工事でも、明細ごとに資産の種類が分かれます。共通費の配賦まで含めて、工事明細が区分の根拠になることが分かる事例です
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会計上の扱いと決算書の表示

税務上の区分と、決算書の表示は別の問題です。

企業会計では、一般に公正妥当と認められる会計基準(GAAP:Generally Accepted Accounting Principles)に沿って、資産の使用実態に応じて毎期規則的に減価償却を行います。会社法431条は「一般に公正妥当と認められる企業会計の慣行」に従うことを求め、法人税法22条4項も、収益や費用の額は「一般に公正妥当と認められる会計処理の基準」に従って計算するとしています。中小企業では税法の耐用年数を使うことが多いものの、それは使用実態と大きくかけ離れていないことが前提です。

貸借対照表では、会社計算規則74条にそって、エレベーターは「建物及び暖房、照明、通風等の付属設備」として建物とまとめて表示することも考えられます。機械式駐車設備は「機械及び装置」、露天式立体駐車設備は「構築物」です。表示をまとめても、固定資産台帳は種類・耐用年数ごとに分けて管理し、申告書の減価償却の明細もそれに合わせて作ります。

銀行からの見え方

区分して償却を早めると、銀行が見る数字は次のように動きます。

指標区分して短い耐用年数を使った場合
営業利益・経常利益取得後しばらくは償却費が増えて下がる
償却前利益(経常利益+減価償却費)変わらない(税額の差を除く)
債務償還年数償却前利益ベースなので大きくは変わらない
簿価・純資産簿価が早く下がり、純資産の積み上がりは遅くなる

著書のモデルでは、債務償還年数を「(借入金-現預金)÷(経常利益+減価償却費-法人税等)」で見ています。償却費を足し戻すため、区分のしかたで返済能力の評価が崩れることはありません。ただし、格付けでは収益性や純資産も見られます。償却が速い資産が多いと簿価が早く減り、借入金の残高を簿価が下回る状態にもなりやすくなります。償却の構造と返済能力の関係は減価償却費と銀行の見方、償却の速さが財務に与える影響は減価償却が速い物件のリスクで解説しています。

もう一つの論点は更新費用です。エレベーターも機械式駐車場も、耐用年数より前に大規模な更新や撤去が必要になることがあります。機械式駐車場は空き区画が増えると、撤去して平面化する選択肢も出てきます。そのときは除却損が出るため、建物の取壊し・除却損失の処理と特別損失もあわせて確認してください。更新や撤去の資金計画を長期修繕計画に入れておくと、銀行にも説明しやすくなります。

実務のチェックポイント

  1. 新築・大規模改修の発注前に、エレベーター・駐車設備・電気設備の工事金額が分かる内訳を依頼したか
  2. 駐車設備が機械で搬送する方式か、自走式かを確認し、細目を当てはめたか
  3. EV充電設備を、建物と一体の電気設備部分と充電器本体などに分けて検討したか
  4. 法人で機械式駐車設備を取得した場合、償却方法(定率法か定額法か)の届出の要否を確認したか
  5. 補助金を受ける場合、国庫補助金等に当たるか、圧縮記帳を使うかを決算前に試算したか
  6. 固定資産税(償却資産)の申告と、法人税・所得税の耐用年数を混同していないか
  7. 更新・撤去の時期と資金を、長期修繕計画と資金繰りに反映したか

まとめ

  • エレベーターは建物附属設備の昇降機設備で17年、エスカレーターは15年
  • 機械式駐車設備は機械及び装置で10年。自走式の立体駐車場は機械式に当たらず、露天式なら構築物の15年など構造で判定する
  • EV充電設備は特掲がないため、建物と一体の電気設備部分と充電器本体などに分けて区分を検討する
  • 区分の根拠は工事の内訳。裁決事例でも、工事明細ごとに資産の種類と取得価額が決められている
  • 償却を早めても償却前利益は変わらないが、経常利益と簿価の見え方は変わる。更新・撤去の資金も含めて銀行に説明できるようにしておく

設備の区分と耐用年数の判定から、決算書の見え方の整理まで、不動産投資家向けサービスでご相談いただけます。

よくある質問

賃貸マンションのエレベーターは、建物と同じ47年で償却するのですか?
いいえ。エレベーターは耐用年数省令の別表第一で「建物附属設備」の「昇降機設備」に当たり、耐用年数は17年(エスカレーターは15年)です。ただし、建築費の中でエレベーター工事の金額が区分できることが前提になります。請負契約や見積書の内訳で設備工事の金額を確認できるようにしておくことが大切です。
機械式駐車場と自走式の立体駐車場は、耐用年数が同じですか?
同じではありません。機械で車両を搬送する機械式駐車設備は、別表第二の機械及び装置で10年とされています。一方、自走式の立体駐車場は機械式駐車設備には当たらず、構造に応じて構築物(露天式立体駐車設備は15年)や建物として判定します。旧法令下の裁決ですが、自走式の立体駐車場に機械式駐車設備の年数を使うことを否定した事例があります。
EV充電設備に補助金を使った場合、何に注意すればよいですか?
補助金は原則として収益(個人は総収入金額)になります。法人では国庫補助金等で固定資産を取得した場合の圧縮記帳(法人税法42条)の対象になるかを、交付元や交付要綱で確認します。圧縮記帳を使うと補助金の年の課税は抑えられますが、その分だけ取得価額が減り、以後の償却費も小さくなります。決算書の利益と簿価の見え方も変わるため、適用前に試算しておくと安心です。

※本記事は2026年10月18日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。

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