「会社をつくったけれど、1年目にどんな税金をいつ払うのか全体像が見えない」。スタートアップや法人化したばかりの方から、よくいただくご質問です。法人1期目の税金は、設立直後はほとんど発生しないように見えて、給与の支払い、最初の決算、そして2期目の中間申告と、少しずつ、しかし確実に増えていきます。
税金の支払いは、売上の入金と時期がずれます。スケジュールを知らないまま走り出すと、「決算の2か月後に、まとまった納税資金が必要だった」と慌てることになります。この記事では、4月設立・3月決算の会社を例に、1期目から2期目の前半までの税金スケジュールを整理し、資金繰りと銀行の見え方まで解説します。
- 法人1期目の税金は、①毎月(または年2回)の源泉所得税、②決算後2か月以内の法人税・住民税・事業税・消費税、③2期目の中間申告の3段階で増えていく
- 均等割は赤字でもかかる。標準的な税率なら、小規模な法人で年7万円
- 給与の支払いを受ける人が常時10人未満なら、源泉所得税の納期の特例で年2回納付にできる
- 1期目は消費税の免税事業者になれることが多いが、2期目以降の判定とインボイス登録で変わる
- 最初の決算書と納税の状況は、2期目以降の融資審査で必ず見られる。納税資金は別に確保しておく
法人1期目にかかる税金の全体像
法人に関係する主な税金と、1期目にかかるかどうかを整理します。
| 税金 | 納める時期 | 1期目に発生するか |
|---|---|---|
| 源泉所得税(役員報酬・給与・税理士報酬など) | 原則、支払った月の翌月10日。納期の特例なら7月10日・1月20日 | 報酬・給与を払えば発生 |
| 法人税・地方法人税 | 事業年度終了の日の翌日から2か月以内 | 黒字なら発生 |
| 法人住民税(法人税割) | 同上 | 黒字なら発生 |
| 法人住民税(均等割) | 同上 | 赤字でも発生 |
| 法人事業税・特別法人事業税 | 同上 | 黒字なら発生 |
| 消費税・地方消費税 | 同上(課税事業者の場合) | 免税事業者なら発生しない |
| 償却資産税 | 毎年1月31日までに申告、納付は市区町村の通知による | 一定額以上の事業用資産があれば発生 |
| 中間申告(法人税・消費税) | 2期目以降 | 1期目は原則なし |
1期目に「毎月の固定費」として出ていくのは、主に源泉所得税と社会保険料です。社会保険料は税金ではありませんが、毎月の資金繰りには同じように効いてきます。社会保険の加入と負担についてはスタートアップの社会保険で解説しています。
設立直後から1期目の期中にやること
届出の期限は「設立日」から数える
税金そのものの前に、設立直後には届出の期限が続きます。主なものは、法人設立届出書(設立から2か月以内)、給与支払事務所等の開設届出書(開設から1か月以内)、青色申告の承認申請書(設立日以後3か月を経過した日と、1期目の事業年度終了日のうち、いずれか早い日の前日まで)です。青色申告の承認申請を出し忘れると、1期目の赤字を翌期以降に繰り越せないなど、影響が長く残ります。届出の一覧は法人設立後の届出一覧にまとめています。
役員報酬は設立後3か月以内に決める
役員報酬は、毎月同額を払う「定期同額給与」であれば、法人の損金になります。金額の変更は、原則として事業年度開始の日から3か月以内に限られるため、設立後早い段階で決めておく必要があります。役員報酬を払えば、そこから源泉所得税と社会保険料が発生します。
源泉所得税:毎月か、年2回か
役員報酬や給与、税理士・司法書士への報酬を払うときは、所得税を差し引いて(源泉徴収して)、原則として支払った月の翌月10日までに納めます。
給与の支払いを受ける人が常時10人未満であれば、税務署に「源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書」を出すことで、1月〜6月分を7月10日、7月〜12月分を翌年1月20日の年2回にまとめて納められます(国税庁 タックスアンサーNo.2505)。特例は、申請書を出した月の翌月に支払う分から適用されます。
年2回になると事務は楽になりますが、半年分をまとめて払うため、納付額を別にしておかないと納期に資金が足りなくなることがあります。
最初の決算と、決算後2か月以内の納税
4月設立・3月決算の年間スケジュール例
2026年4月に設立し、決算日を3月31日とした会社(役員と従業員で10人未満、納期の特例あり)の例です。
| 時期 | やること・払うもの |
|---|---|
| 2026年4月 | 設立。法人設立届出書、給与支払事務所等の開設届出書、青色申告の承認申請書などの準備 |
| 2026年5月〜6月 | 役員報酬の決定(設立後3か月以内)。源泉所得税の納期の特例の申請 |
| 毎月 | 社会保険料の納付(前月分を当月末まで) |
| 2027年1月20日 | 源泉所得税(7月〜12月分)の納付 |
| 2027年1月31日 | 法定調書合計表・給与支払報告書の提出、償却資産の申告 |
| 2027年3月31日 | 1期目の決算日 |
| 2027年5月31日 | 法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税(課税事業者なら消費税も)の申告・納付期限 |
| 2027年7月10日 | 源泉所得税(1月〜6月分)の納付 |
| 2027年11月30日 | 2期目の中間申告・納付の期限(必要な場合) |
決算日から申告期限までは2か月しかありません。決算の締めと申告書の作成、そして納税資金の準備を、この2か月で行うことになります。申告期限の延長の特例や、期限に遅れたときのペナルティは法人税の申告期限で解説しています。
均等割は赤字でもかかる
法人住民税の均等割は、所得に関係なく、事務所がある自治体に納める税金です。標準的な税率では、資本金等の額が1,000万円以下で従業者50人以下の法人は、道府県民税2万円と市町村民税5万円の合計年7万円です。超過課税をしている自治体や、資本金等の額・従業者数によって金額は変わります。1期目が1年に満たないときは、事業年度の月数に応じて月割で計算します。
「1期目は赤字だから税金はゼロ」と思っていると、この均等割だけは請求が来ます。資本金を1,000万円超にすると均等割の区分が上がる点も、設立前に知っておきたいポイントです。
消費税は、1期目は免税でも2期目以降に注意
資本金1,000万円未満で設立した法人は、1期目は消費税の免税事業者になれることが多い一方、2期目は1期目の最初の6か月(特定期間)の課税売上高と給与等の支払額で判定されます。インボイスの登録をすれば、その時点から課税事業者です。詳しくは法人設立前に知るべき消費税をご覧ください。
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スタートアップ・ベンチャー支援を見る2期目に来る「中間申告」という2回目の納税
設立1期目は、前事業年度がないため、法人税の中間申告は原則として必要ありません。ところが2期目からは、1期目の実績をもとに中間申告が必要になることがあります。
| 税目 | 中間申告が必要になる目安 | 期限 |
|---|---|---|
| 法人税 | 前事業年度の法人税額を月数で割って6を掛けた額が10万円を超える(1年決算なら前期の法人税額が20万円超) | 事業年度開始から6か月を経過した日から2か月以内 |
| 消費税 | 直前の課税期間の確定消費税額(地方消費税を除く)が48万円超。400万円超なら年3回、4,800万円超なら年11回 | 各中間申告対象期間の末日の翌日から2か月以内 |
法人住民税・事業税も、法人税の中間申告にあわせて納めます。消費税の中間申告の回数と金額は、国税庁 タックスアンサーNo.6609で確認できます。
つまり、1期目が順調に黒字になった会社は、2期目の5月に1期目の確定申告分を払い、半年後の11月にまた中間納付が来ることになります。成長期の会社ほど、仕入れや採用が先行して手元資金が薄くなりやすく、この2回目の納税が資金繰りを圧迫します。
なお、前期実績による予定申告のほか、仮決算による中間申告を選ぶこともできます。2期目の前半に業績が落ちている場合などは、仮決算の方が納付額を抑えられることがあります。考え方は中間申告の活用で解説しています。
銀行は「1期目の納税」をどう見るか
創業融資の次に受ける2回目の融資や、民間の銀行との新規取引では、1期目の決算書と申告書が審査の出発点になります。そこで見られるのは、売上や利益だけではありません。
- 税金を期限どおりに納めているか:融資の申込みでは納税証明書の提出を求められることが多く、滞納があると審査は大きく不利になる
- 未払法人税等・未払消費税等が不自然に膨らんでいないか:決算書の負債に残っていれば、納税資金が足りていない兆候と見られる
- 黒字で、きちんと税金を払っているか:利益を出して税金を納めることは、純資産を積み上げることでもある。代表・相亰の著書では「払った税金の2倍、会社は強くなる」と表現している
1期目に無理に利益を圧縮しようとして、赤字の決算書をつくってしまうと、2期目の融資で苦労します。創業期は「税金を減らす」より、黒字の決算書と、期限どおりの納税実績をつくることを優先してください。創業後の追加融資のタイミングは日本政策金融公庫の追加融資の記事も参考になります。
入金があるたびに、源泉所得税・消費税(課税事業者の場合)・法人税等の見込み額を別口座に移す。決算月の2〜3か月前に試算をして、納税額のめどをつけておく。この2つで、決算後の「お金が足りない」はほぼ防げます。
まとめ
- 法人1期目の税金は、源泉所得税→決算後2か月以内の法人税等→2期目の中間申告と、段階的に増える
- 均等割は赤字でもかかる。小規模な法人で標準年7万円(自治体・月割で変動)
- 給与の支払いを受ける人が常時10人未満なら、源泉所得税は納期の特例で年2回にできる。ただし納付額は別に確保する
- 1期目が黒字なら、2期目は「確定申告の納付」と「中間納付」が半年おきに来る
- 1期目の決算書と納税実績は、2期目以降の融資審査で必ず見られる
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