資産管理法人や不動産会社を作るとき、「法人税は個人より安い」という話をよく聞きます。たしかに、中小法人の所得のうち年800万円以下の部分の法人税率は15%で、個人の所得税・住民税の最高税率(合計55%)と比べると低く見えます。
ただし、法人にかかる税金は法人税だけではありません。地方法人税、法人住民税、法人事業税、特別法人事業税があり、令和8年4月以後に始まる事業年度からは防衛特別法人税も加わりました。この記事では、不動産法人にかかる法人税等の税率と、中小法人の特例の範囲、決算書の表示と銀行の見え方を整理します。
- 資本金1億円以下の中小法人は、所得の年800万円以下の部分が15%、超える部分が23.2%(所得10億円超の年は800万円以下の部分も17%)
- 法人税額をもとに地方法人税(10.3%)と法人住民税の法人税割が、所得をもとに法人事業税と特別法人事業税がかかる。赤字でも均等割はかかる
- 令和8年4月1日以後開始の事業年度から、防衛特別法人税(基準法人税額-年500万円)×4%が加わった
- 資本金1億円を超えると、軽減税率などの中小特例が使えず、外形標準課税の対象になる
- 銀行は税引後の利益を見ている。法人税等を払った後に純資産と現預金がどれだけ残るかが評価につながる
法人にかかる税金の全体像
| 税金 | 国・地方 | 課税標準 | 主な税率(中小法人) |
|---|---|---|---|
| 法人税 | 国 | 所得 | 年800万円以下15%、超える部分23.2% |
| 地方法人税 | 国 | 法人税額 | 10.3% |
| 防衛特別法人税 | 国 | 基準法人税額-年500万円 | 4%(令和8年4月1日以後開始事業年度) |
| 法人住民税(法人税割) | 都道府県・市町村 | 法人税額 | 自治体による(例:東京23区は標準7.0%、超過10.4%) |
| 法人住民税(均等割) | 都道府県・市町村 | 資本金等の額・従業者数 | 標準では最低年7万円(2万円+5万円) |
| 法人事業税(所得割) | 都道府県 | 所得 | 所得の段階に応じた税率(年400万円以下の部分は標準3.5%) |
| 特別法人事業税 | 国(都道府県が徴収) | 標準税率で計算した所得割額 | 37% |
地方税の税率は、自治体ごとの超過税率や、資本金・所得の規模による区分で変わります。実際の税額は、本店や事業所のある自治体の税率表で確認してください。
法人税:中小法人の軽減税率
税率
国税庁のタックスアンサー(No.5759 法人税の税率)によれば、資本金1億円以下の普通法人などの法人税率は次のとおりです。
| 所得の区分 | 令和7年4月1日以後開始事業年度 |
|---|---|
| 年800万円以下の部分 | 15%(所得が年10億円を超える事業年度は17%) |
| 年800万円を超える部分 | 23.2% |
| 適用除外事業者(過去3年の平均所得が15億円を超える法人など)の年800万円以下の部分 | 19% |
| 資本金1億円超の普通法人 | 23.2% |
年800万円以下の部分の15%は、租税特別措置法による特例税率で、令和7年度の税制改正で適用期限が2年延長されたうえ、所得10億円超の年の17%の区分が設けられました。期限のある特例なので、毎年の改正を確認しておく必要があります。
中小法人に当たらない場合
資本金1億円以下でも、資本金5億円以上の法人(大法人)の100%子会社などは、軽減税率などの中小企業向け特例を使えません(国税庁タックスアンサー No.5800)。グループで不動産会社を持つ場合は、親会社の資本金も確認が必要です。
計算例(法人税だけ)
| 所得 | 法人税 | 地方法人税(10.3%) |
|---|---|---|
| 800万円 | 800万円×15%=120万円 | 約12.4万円 |
| 2,000万円 | 120万円+1,200万円×23.2%=398.4万円 | 約41.0万円 |
これに、法人住民税・法人事業税・特別法人事業税が加わります。所得が大きくなるほど23.2%の部分が増え、実際の負担率は上がっていきます。
令和8年4月から:防衛特別法人税
令和7年度の税制改正で、防衛特別法人税が創設されました。国税庁の資料によれば、令和8年4月1日以後に開始する事業年度から、各事業年度の基準法人税額から年500万円の基礎控除額を控除した金額に4%を掛けて計算します(事業年度が1年未満なら基礎控除額は月数で按分)。
基準法人税額が年500万円以下の法人は税額が生じませんが、国税庁は、防衛特別法人税額が零であっても申告書の提出が必要としています。法人税の申告書の作成ソフトや税理士の手続きが対応しているか、最初の申告の前に確認しておきましょう。
代表の相亰と髙橋が、自らの不動産投資と資金調達支援の経験から構築した独自の財務設計の手法「クレフティメソッド」で、決算書・法人化・次の融資まで設計します。初回のご相談は無料です。
不動産投資家向け税務・融資支援を見る地方税:住民税・事業税・特別法人事業税
法人住民税
法人住民税は、法人税額に税率を掛ける法人税割と、資本金等の額と従業者数に応じた均等割からなります。均等割は所得がなくてもかかるため、赤字の年でも、標準税率で年7万円(資本金等1,000万円以下・従業者50人以下の場合)程度の負担があります。物件ごとに法人を分けると、法人の数だけ均等割がかかります。
法人事業税と特別法人事業税
法人事業税(所得割)は、所得に応じた段階的な税率で計算します。資本金1億円以下の普通法人の年400万円以下の部分は、標準税率3.5%です。特別法人事業税は、標準税率で計算した所得割額に37%を掛けた額で、法人事業税とあわせて都道府県に申告・納付します。
資本金1億円の境目:外形標準課税
資本金1億円を超える法人は、法人事業税が所得だけでなく、付加価値(給与や支払利息、支払賃借料など)と資本金等の額にもかかる外形標準課税の対象になります。借入れが多く支払利息が大きい不動産会社では、赤字でも負担が生じます。著書でも、中小企業が資本金を無理に大きくする必要はない理由の一つとして、資本金1億円超で外形標準課税が課されることを挙げています。
そのほかの中小法人の特例
| 特例 | 中小法人の扱い | 不動産法人での注意点 |
|---|---|---|
| 欠損金の繰越控除 | 10年間、所得の全額まで控除できる | 減価償却で赤字が続く会社では、繰越欠損金の期限を管理する |
| 交際費 | 年800万円までの定額控除と飲食費の50%の選択 | 不動産賃貸業の交際費を参照 |
| 留保金課税 | 資本金1億円以下の法人は原則として対象外 | 利益を会社に残しても追加の課税は通常ない |
| 少額減価償却資産の特例 | 30万円未満の資産の即時償却(年300万円まで) | 主に貸付けの用に供する資産は対象外(少額減価償却資産と「貸付けの用」の除外) |
会計上の扱いと決算書の表示
決算書では、法人税・地方法人税・法人住民税・法人事業税(所得割)は、税引前当期純利益の下の「法人税、住民税及び事業税」に表示します。法人事業税のうち外形標準課税の付加価値割・資本割は、所得に基づく税ではないため、販売費及び一般管理費(租税公課)に表示するのが一般的です。期末に未払いの税金は「未払法人税等」として流動負債に計上します。こうした表示は、一般に公正妥当と認められる会計基準(GAAP:Generally Accepted Accounting Principles)に沿って行います。
税務上は、法人税・地方法人税・法人住民税は損金にならず、法人事業税・特別法人事業税は申告書を出した事業年度の損金になる、という違いがあります。税務上の損金算入と決算書の表示は別の問いであることに注意してください。考え方は税務上の損金と企業会計(GAAP)の違いで整理しています。
銀行からの見え方:税引後に何が残るか
銀行は、法人税等を払った後に残る利益と現預金を見ています。
- 債務償還年数:著書のモデルでは「(借入金-現預金)÷(経常利益+減価償却費-法人税等)」で計算する。法人税等を払えば分母は減るが、利益を出して納税を続ける会社は、純資産と現預金が積み上がる
- 純資産:税引後利益が利益剰余金として残る。著書のモデルでは、プロパー融資の目安を「正常先+純資産1億円」としている
- 納税の実績:決算書と納税証明書で、毎期きちんと納税していることが確認される。滞納は融資の大きな障害になる
- 予定納税と資金繰り:前期の法人税額が一定以上になると中間申告が必要になり、資金繰りに影響する(中間申告と予定納税の仕組み)
著書の標語「払った税金の2倍、会社は強くなる」は、法人税等を払って利益を残すことで、純資産と現預金が増え、次の融資につながるという意味です。税率が低い中小法人の特例を生かすというのは、税金をゼロに近づけることではなく、納税後に会社に残る額を最大にすることだと考えると、銀行の評価とも矛盾しません。詳しくは「払った税金の2倍、会社は強くなる」の意味を参照してください。
実務のチェックポイント
| チェック項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 中小法人の判定 | 資本金1億円以下か。大法人の100%子会社などに当たらないか |
| 所得の区分 | 年800万円以下・超の部分、所得10億円超の年でないか |
| 防衛特別法人税 | 令和8年4月1日以後開始の事業年度から、税額零でも申告が必要 |
| 地方税 | 本店・事業所のある自治体の超過税率、均等割の区分 |
| 法人の数 | 物件ごとに法人を分けると、均等割や申告の手間が法人の数だけ増える |
| 資本金 | 増資で1億円を超えると、外形標準課税と中小特例の不適用 |
| 資金繰り | 中間申告・予定納税、消費税の納付時期を資金繰り表に入れているか |
まとめ
- 中小法人の法人税率は、所得の年800万円以下の部分が15%(所得10億円超の年は17%)、超える部分が23.2%
- 法人税のほかに、地方法人税、法人住民税、法人事業税、特別法人事業税がかかる。赤字でも均等割がかかる
- 令和8年4月1日以後開始の事業年度から、防衛特別法人税(基準法人税額-年500万円)×4%が加わった
- 資本金1億円を超えると外形標準課税の対象になり、中小特例も使えない
- 銀行は税引後に残る純資産と現預金を見る。納税後に会社に残る額を基準に考える
個人と法人の税率の比較は不動産所得は個人と法人どちらが得?、法人化の時期は不動産投資の法人化はいつがベスト?で解説しています。クレフティでは、不動産投資家向けサポートの中で、法人の税負担の試算から、資金繰り・銀行評価を踏まえた決算の組立てまでご相談をお受けしています。
