建設・不動産

専門工事業(内装・塗装・左官など)の動向と経営のポイント|下請の資金繰り・外注と給与の区分・承継を、銀行が見る決算書から

内装仕上、塗装、左官、防水、とび・土工など、建物や構造物の一部を専門に請け負う会社は、建設現場を実際に動かしている存在です。人手不足が続くなか、専門工事の許可業者は増え、受注も伸びています。一方で、多くの会社が元請の下で工事を受ける「下請」の立場にあり、価格や支払条件を自社だけでは決めにくいという悩みを抱えています。

この記事では、専門工事業(職別工事業)の経営を統計と制度の数字で整理したうえで、決算書の特徴、銀行が融資で見るポイント、外注費と給与の区分などの税務、そして事業承継までを、税理士・公認会計士の立場から解説します。

この記事の結論
  • 2026年3月末の許可業者数は、内装仕上工事業92,608業者、塗装工事業76,657業者、左官工事業32,791業者といずれも前年より増加。職別工事業の受注高は2026年8月に1兆3,335億円(前年同月比21.0%増)で、その約8割が下請受注
  • 中小の職別工事業(法人)の売上高経常利益率は5.12%、自己資本比率は46.6%(令和6年度決算)。売上原価の中心は外注費(売上の28.0%)と材料費(同26.2%)
  • 銀行は、元請の集中度・入金サイト・工事別の粗利を見る。手形は、2024年11月から期間60日超のものが建設業法上の「割引困難な手形」とされるおそれがある
  • 税務では、一人親方への外注費と給与の区分、インボイスの経過措置(2026年10月から70%)、簡易課税での加工賃(手間請け)の事業区分が論点
  • 承継では、許可の要件を満たす人と、職人・元請との関係を後継者に引き継ぐ準備を早めに始める

専門工事業の今:許可業者も受注も増え、下請の比重が大きい

まず、統計で現状を確認します。建設業の許可は29業種に分かれており、1社が複数の業種の許可を持つことも多いため、業種別の数字は「その業種の許可を持つ業者の数」です。

指標数字出典・時点
建設業許可業者数(全体)483,823業者(前年同月比0.03%増、3年連続の増加)国土交通省「建設業許可業者数調査」(2026年3月末)
内装仕上工事業の許可業者92,608業者(前年同月比2.3%増。2000年3月末比62.4%増)同上
塗装工事業の許可業者76,657業者(同2.8%増。同107.8%増)同上
左官工事業の許可業者32,791業者(同3.8%増。同102.9%増)同上
防水工事業の許可業者43,365業者(同3.5%増。同189.5%増)同上
とび・土工工事業の許可業者184,825業者(全許可業者の38.2%が取得)同上
職別工事業の受注高2026年8月 1兆3,335億円(前年同月比21.0%増、5か月連続の増加)国土交通省「建設工事受注動態統計調査報告(令和8年8月分)」
うち元請受注高2,607億円(同16.5%減)同上

出典:国土交通省「建設業許可業者数調査の結果について(令和8年3月末現在)」、同「建設工事受注動態統計調査報告(令和8年8月分)」

建設業全体の許可業者数はピーク時の2000年3月末から約2割減っていますが、内装仕上・塗装・左官・防水などの専門工事の許可は、むしろ大きく増えています。元請が専門工事の許可を持つ会社を求めるようになったことや、1社で複数の業種の許可を取る会社が増えたことが背景にあると考えられます。

受注の面では、2026年8月の職別工事業の受注高1兆3,335億円のうち、元請として受けた工事は2,607億円で、残りの約8割は下請としての受注です(単月の数字であり、月によって変動します)。専門工事業の経営は、元請との関係と切り離して考えることができません。

人手不足と「労務費の基準」

建設業の就業者は2024年に477万人で、55歳以上が36.7%を占めます(国土交通省「改正建設業法『令和7年12月施行分』説明会」資料。総務省「労働力調査」による)。職人の高齢化と若手の不足は、専門工事業で特に深刻です。

2025年12月12日に全面施行された改正建設業法では、中央建設業審議会が作成した「労務費に関する基準」をもとに、著しく低い労務費での見積りや見積り依頼が禁止され、原価に満たない金額での契約は受注者側にも禁止されました(同説明会資料)。下請の専門工事会社にとっては、職人の賃金を見積りに織り込み、その根拠を元請に示すことが、制度で後押しされたということです。法改正の全体像は建設業(総合工事業・工務店)の動向と経営のポイントで整理しています。

手形は「60日」がひとつの線に

下請代金の支払いについても、ルールが厳しくなっています。国土交通省は、特定建設業者が下請代金を手形で支払う場合、2024年11月1日以降は手形期間が60日を超える手形を「割引を受けることが困難な手形」とみなし、建設業法24条の6第3項に違反するおそれがあるものとして指導の対象にしています(それまでの目安は120日)。あわせて、建設業法の対象外の取引も含めて、手形期間の短縮や現金払いを求めています(国土交通省「手形による下請代金の支払」)。

元請から長いサイトの手形を受け取っている会社は、支払条件の見直しを求めやすくなりました。資金繰りの改善余地として、取引先ごとの支払条件を一度洗い出してみる価値があります。

中小専門工事会社の収益構造と決算書の特徴

中小企業庁「中小企業実態基本調査」(令和7年確報、令和6年度決算実績)から、中小企業(法人)の財務を、職別工事業と総合工事業、全産業で比べます。数字は、調査の集計値から筆者が計算したものです。

項目職別工事業総合工事業全産業(中小・法人)
1社あたり売上高約1.97億円約3.31億円約3.91億円
1社あたり従業者数8.4人——
売上総利益率(粗利率)27.0%22.2%25.2%
外注費÷売上高28.0%40.3%—
材料費÷売上高26.2%16.9%—
売上高経常利益率5.12%4.64%4.44%
自己資本比率46.6%48.4%44.9%

出典:中小企業庁「中小企業実態基本調査」令和7年確報(2026年6月29日公表、e-Stat)の「資産及び負債・純資産」「売上高及び営業費用」産業中分類別表より計算

平均で見ると、職別工事業は総合工事業より規模は小さいものの、粗利率・経常利益率はやや高くなっています。総合工事業が工事の多くを外注するのに対し、職別工事業は自社の職人で施工する部分が大きく、材料も自ら仕入れるためです。言い換えれば、職人の稼働率と材料の仕入れ値が、そのまま利益を左右します。

決算書で見られるところ

専門工事会社の決算書では、次の点が特徴になります。

  • 外注費:一人親方や協力会社への支払い。外注費が多い会社は、繁閑に合わせて人を調整しやすい半面、外注先が離れると施工能力が落ちる
  • 労務費・人件費:自社の職人の給与。売上原価の労務費と、販売費及び一般管理費の人件費の区分が会社ごとにまちまちだと、粗利の比較ができない
  • 車両・足場・工具:設備は軽めだが、車両や足場材への投資がかさむ業種もある(職別工事業の有形固定資産は総資産の約26%)
  • 売掛金(完成工事未収入金):受取手形・売掛金は平均で売上の約1.6か月分。元請の支払サイトが長いと膨らむ

同じ調査では、職別工事業の金融機関からの借入金は1社あたり平均で約3,600万円(金融機関以外からの借入れを含めると約4,600万円)、現金・預金は約5,000万円でした。平均では手元資金が借入金を上回っていますが、これは平均の話です。現預金の少ない会社が受注の増加に合わせて職人と材料を先に手当てすると、資金はすぐに足りなくなります。

銀行は専門工事会社のどこを見るか

元請の集中と支払条件

下請中心の会社で銀行が最初に確認するのは、売上のどれだけを特定の元請に頼っているかです。売上の半分以上を1社の元請に頼っている場合、その元請の受注が落ちたり、支払いが滞ったりすると、自社の資金繰りに直結します。元請ごとの売上高、支払サイト、手形か現金かの別を一覧にしておくと、銀行の理解は早くなります。

運転資金は、次の考え方で計算されます。

(売掛金+受取手形+未成工事支出金+材料の在庫)−(買掛金・工事未払金+支払手形+未成工事受入金)

職人の給与や一人親方への支払いは毎月出ていく一方で、元請からの入金は月末締め翌々月払いなど後になることが多く、売上が増えるほど立替えが膨らむのが専門工事業の資金繰りの特徴です。受注が増えた局面での運転資金は、元請ごとの入金予定表で必要額を示すと、銀行も判断しやすくなります。考え方は運転資金の融資はいくらが目安?、資金繰り表の作り方は資金繰り表の作り方で解説しています。

債務償還年数と、工事ごとの粗利

著書のモデルでは、債務償還年数=(借入金−現預金)÷(経常利益+減価償却費−法人税等)で、10年以内が健全、20年超は厳しいと見られます。専門工事業は設備が比較的軽いため、借入金の多くは運転資金です。運転資金の借入れは、本来は売掛金の回収で返すものなので、銀行は「借入れが運転資金の範囲に収まっているか」「赤字の補てんに使われていないか」を見ます。

そのため、工事台帳で工事ごとの粗利を把握していることが重要です。どの元請のどの種類の工事で利益が出て、どこで赤字になっているかを説明できる会社は、単価交渉にも、銀行への説明にも強くなります。季節や元請の工程で売上が大きく波打つ会社は、当座貸越や短期継続融資で運転資金をまかなう方法もあります(当座貸越とは、短期継続融資とは)。

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専門工事業特有の税務・会計の論点

外注費か給与か

専門工事業の税務調査でよく論点になるのが、一人親方などへの支払いが「外注費」か「給与」かです。国税庁の通達「大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて」は、請負契約などに基づく報酬は事業所得、雇用契約などに基づくものは給与所得とし、区分が明らかでない場合は、次のような点を総合して判断するとしています(国税庁 法令解釈通達)。

  • 他の人が代わりに作業をすることが認められているか
  • 作業時間などの拘束を受けるか、仕事の進め方に指揮監督を受けるか
  • まだ引き渡していない完成品が不可抗力で滅失した場合に、すでに行った作業分の報酬を請求できるか
  • 材料や用具を、報酬を払う側が用意しているか

給与と判断されると、源泉所得税の徴収漏れを指摘されるほか、外注費として控除していた消費税の仕入税額控除も認められなくなります。契約書(請負契約)、請求書、作業の実態をそろえておくことが大切です。

インボイスの経過措置と、外注先の登録状況

インボイスの登録をしていない一人親方などへの支払いは、経過措置で仕入税額相当額の一定割合しか控除できません。この割合は、2026年10月1日から2028年9月30日までは70%に下がりました(それまでは80%)。外注先が多い専門工事会社ほど、消費税の負担増が大きくなります。外注先ごとの登録状況と年間の支払額を一覧にし、単価の見直しも含めて検討しておきましょう(免税事業者からの仕入れの経過措置)。

簡易課税の事業区分と「手間請け」

簡易課税を選んでいる会社では、事業区分の判定に注意が必要です。建設業は第3種事業(みなし仕入率70%)ですが、他の者の原材料などに加工を施して加工賃を受け取る役務の提供は、第4種事業(同60%)とされています(消費税法基本通達13-2-4、13-2-7、国税庁タックスアンサーNo.6509)。元請から材料の支給を受けて施工だけを請け負う「手間請け」の工事が、これに当たるかどうかは個別に確認が必要です。材料込みの工事と手間請けの工事が混在する会社は、工事ごとに区分して記録しておくと安心です。

工具・足場材と少額減価償却資産の特例

中小企業者等は、取得価額が一定額未満の減価償却資産を、年間合計300万円まで取得した期に全額損金にできる特例があります。令和8年度税制改正で、2026年4月1日以後に取得する資産からは基準が40万円未満(従来は30万円未満)に引き上げられ、対象法人の従業員数の基準は400人以下に見直されました。適用期限は2029年3月31日までです(国税庁タックスアンサーNo.5408)。電動工具や測定機器など、少額の設備を多く使う専門工事業では使いやすい制度です。ただし、利益を減らせば銀行から見た利益も減るため、使うかどうかは決算全体のバランスで判断しましょう。

なお、工事の売上の計上時期(完成引渡基準と工事進行基準)や期ずれの論点は、総合工事業と共通です。前掲の建設業(総合工事業・工務店)の記事を参照してください。

事業承継・M&A:許可の要件と、職人・元請との関係

同じ中小企業実態基本調査(令和7年確報、個人企業を含む)で、職別工事業の社長の年齢と事業承継の意向を見ると、次のとおりです。

項目職別工事業全産業
社長の年齢が60歳以上の割合47.5%60.5%
社長の就任経緯が「親族内での承継」50.2%42.1%
承継の意向:親族内承継を考えている21.8%23.2%
承継の意向:役員・従業員承継を考えている5.6%4.3%
承継の意向:事業を継続するつもりはない25.8%26.9%
承継の意向:今はまだ考えていない43.5%39.9%

出典:中小企業庁「中小企業実態基本調査」令和7年確報「事業承継の状況」産業中分類別表(年齢は60歳代・70歳代・80歳代以上の合計)

職別工事業は、全産業より社長の年齢がやや若く、親族内で承継してきた会社が半数を占めます。一方で「今はまだ考えていない」が4割を超えており、承継の準備が後回しになりやすい業種といえます。

建設業許可の承継については、2020年10月に始まった事前認可の制度により、2025年度は1,092件の認可があり、うち事業の譲渡・譲受けが87.4%でした(前掲「建設業許可業者数調査」)。専門工事会社の承継では、次の点が論点になります。

  • 許可の要件を満たす人:経営体制や営業所の技術者の要件を社長本人が満たしている会社では、後継者や社員に資格と経験を積ませておかないと、承継後に許可を維持できない
  • 職人の引継ぎ:会社の施工能力は職人と協力会社に依存する。代替わりで職人が離れないよう、待遇と役割を早めに示す
  • 元請の取引口座:元請の協力会社としての登録や、安全書類の名義など、取引の継続に必要な手続きを確認する
  • 経営者保証:運転資金の借入れに付いている社長の保証を、後継者が引き継ぐかどうか(経営者保証を外す方法)

社員や職長に会社を引き継ぐ方法はMBO・EBOによる事業承継、許認可の扱いは許認可はM&Aで引き継げるかで詳しく解説しています。

経営者が今やっておきたいこと

  • 元請ごとの売上・支払サイト・手形か現金かを一覧にし、特定の元請への集中度を把握している
  • 60日を超える手形や、労務費を下回る現金払いがないか確認し、必要なら支払条件の見直しを申し入れている
  • 見積書に労務費・材料費の根拠を示している
  • 工事台帳で、工事ごと・元請ごとの粗利を毎月把握している
  • 一人親方との契約書・請求書を整え、外注か雇用かの実態を確認している
  • 外注先のインボイス登録状況と、年間の支払額を把握している
  • 簡易課税の会社は、材料込みの工事と手間請けの工事を区分して記録している
  • 許可の要件を満たす後任と、職人・元請との関係を引き継ぐ後継者を、数年単位で育てている

まとめ

  • 内装仕上・塗装・左官などの専門工事の許可業者は増え続け、職別工事業の受注も伸びているが、受注の約8割は下請
  • 中小の職別工事業は経常利益率5.12%、自己資本比率46.6%。職人の稼働率と材料の仕入れ値が利益を左右する
  • 銀行は元請の集中度と支払条件、工事ごとの粗利を見る。手形60日のルールや労務費の基準は、支払条件と単価を見直す材料になる
  • 税務では、外注費と給与の区分、インボイスの経過措置の縮小、簡易課税の事業区分に注意する
  • 承継では、許可の要件を満たす人材と、職人・元請との関係を早めに後継者へつなぐ

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よくある質問

下請中心の専門工事会社でも、銀行から融資を受けやすくする方法はありますか?
元請ごとの売上・入金サイト・受注残を一覧にし、工事ごとの粗利を示せるようにすることです。下請の会社は、特定の元請に売上が集中しやすく、入金も元請の支払条件に左右されます。銀行は「どの元請から、いつ、いくら入るか」と「その元請は確かか」を見ています。元請が複数に分散していること、工事台帳で利益の出る工事と出ない工事を説明できることが、運転資金の融資の判断材料になります。
一人親方に払っている外注費が、税務調査で給与と言われることはありますか?
あります。国税庁の通達では、請負契約に基づく報酬は事業所得、雇用契約に基づくものは給与所得とし、どちらか明らかでない場合は、ほかの人が代わりに作業できるか、作業時間の拘束や指揮監督があるか、材料や用具を誰が用意するか、などを総合して判断するとしています。給与とされると、源泉所得税の徴収漏れや、消費税の仕入税額控除の否認につながります。契約書と実態をそろえておくことが大切です。
専門工事業の会社をM&Aや親族への承継で引き継ぐとき、何に注意すべきですか?
建設業許可の要件を誰が満たすか、職人と元請との関係を引き継げるか、の2点です。株式を引き継ぐなら許可は会社に残りますが、経営体制や営業所の技術者の要件を退任する社長で満たしている場合は、後任を用意しなければ許可を維持できません。事業譲渡などでは事前の認可が必要です。また、専門工事会社の価値は職人と元請からの信頼にあるため、承継前から後継者を現場と元請に紹介しておくことが重要です。

※本記事は2026年10月25日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。
※本記事の無断転載・複製、商用目的での利用はお断りします。引用の際は、出典(税理士法人クレフティ・記事URL)を明記してください。

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