売却・相続

マンション高騰の抑制策、短期売買への課税強化を自民党が検討|土地譲渡益重課の再開で、不動産投資家・不動産会社は何が変わるか

日本経済新聞(2026年10月)が、自民党が大都市圏のマンション価格の高騰を抑える政策の検討に入ったと報じました。2027年4月の統一地方選をにらんだもので、転売目的の短期取引を税制で防ぐ方策が議論の対象になっています。党の住宅土地・都市政策調査会の会長は、具体策の例として「土地譲渡益重課制度」の適用再開を挙げました。

税制が変われば、不動産を「いつ売るか」「個人と法人のどちらで持つか」の判断が変わります。まだ検討の段階ですが、この記事では、報道で示された内容を引用しながら、今の制度の仕組み、重課が再開された場合に影響を受ける人、今から確認しておくことを整理します。

この記事の結論
  • 自民党は、マンション価格の高騰を抑える策として、転売目的の短期取引への課税強化を検討している。例として挙がったのは、1998年から適用が止まっている土地譲渡益重課制度の再開(日本経済新聞)
  • 今の制度では、個人は所有期間5年以下の売却に約39%、5年超に約20%の税率がかかる。一方、法人には短期・長期の区別がない
  • 重課が再開されると、特に短期で仕入れて売る不動産会社や、法人での短期売買に影響が大きいと考えられる
  • 12月の税制改正大綱で扱われるか、対象と開始時期がどうなるかを見ながら、所有期間の数え方と売却の時期を今のうちに確認しておきたい

報道で示された内容

記事では、次のような内容が紹介されています。

項目報道で示された内容
検討の場自民党の住宅土地・都市政策調査会が10月21日から議論を開始。区長、大学の研究者、不動産協会の幹部から意見を聴取
例示された策土地譲渡益重課制度の適用再開。個人は5年以下の土地譲渡による事業所得などに52%、法人は土地の譲渡益に所有期間に応じて5〜10%を上乗せ。1973年に設けられ、1998年から適用停止
価格の水準東京23区の新築マンションの平均価格は2025年度に1億3,784万円、前年度比18.5%上昇(不動産経済研究所)
所得の水準東京都のフルタイム労働者の平均年収は2025年に678万円(厚生労働省)
今後の流れ与党が12月にまとめる税制改正大綱の論点にも浮上
慎重論党の税調幹部は「地銀への影響を見極める必要がある」。融資全体に占める不動産の比率は6月に18.2%と、バブル期(10%前後)を上回る
海外の例韓国はソウルなどで外国人の住宅取得を許可制に。カナダ・オーストラリアは外国人の住宅購入を時限的に禁止。シンガポールは外国人に60%の追加印紙税

出典:日本経済新聞「マンション高騰抑制策、自民党が検討 統一地方選へ短期売買規制など」(2026年10月)。数字は同記事が示した各機関のデータによる。

記事によれば、政府は国籍で一律に線を引くのではなく、短期転売など投機性の高い取引に着目した対策を検討するとされています。また、エコノミストからは、価格上昇の根本には供給不足があり、供給を増やす政策と合わせなければ効果は長続きしない、という指摘も紹介されています。

今の制度:個人と法人で大きく違う

まず、今の仕組みを整理しておきます。不動産の売却益にかかる税金は、個人と法人でまったく考え方が違います。

区分所有期間税率(目安)ポイント
個人:短期譲渡所得売った年の1月1日時点で5年以下約39%(所得税30%・復興特別所得税・住民税9%)他の所得とは分けて計算
個人:長期譲渡所得売った年の1月1日時点で5年超約20%(所得税15%・復興特別所得税・住民税5%)他の所得とは分けて計算
法人区別なし通常の法人税等の税率売却益は本業の利益や赤字と合算される

ここで注意したいのは、個人の「5年」の数え方です。売った日ではなく、売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えているかで判断します。たとえば年の途中に買った物件は、購入から実際には6年近くたたないと長期譲渡所得になりません。売却のタイミングを考えるときに、最も間違えやすいところです(不動産売却の税金)。

一方、法人には短期・長期の区別がありません。売却益は他の利益と合わせて法人税の対象になり、赤字があれば相殺もできます。このため、短期で仕入れて売る事業は、法人で行うのが一般的です(個人と法人の不動産投資の税金の違い)。

土地譲渡益重課制度とは

土地譲渡益重課制度は、地価が急騰した1973年に、投機的な土地取引を抑えるために設けられた制度です。短期間で売った土地の利益に、通常の税金に上乗せする形で重い税をかけます。報道によれば、個人は所有期間5年以下の土地の譲渡による事業所得などに52%を課し、法人は土地の譲渡益に所有期間に応じて5〜10%を上乗せする仕組みです。

バブル崩壊後の1998年からは、地価の下落を受けて適用が停止され、その停止が今まで延長されてきました。制度そのものは法律に残っているため、「適用の停止をやめる」という形で、比較的短い期間で再開することも考えられます。

再開されたら、誰に影響があるか

ここからは、税理士・公認会計士として、また自らも不動産事業を営む立場からの考えです。具体的な対象や税率は、今後の議論で変わりうる点に注意してください。

立場考えられる影響
土地を仕入れて短期で売る不動産会社売却益に上乗せの税がかかれば、利益が直接減る。仕入れ価格や事業の回し方の見直しが必要になる
法人で短期売買をしている投資家法人なら短期・長期の区別がない、という前提が変わる。所有期間を意識した売却計画が必要に
個人の短期売買事業として土地の売買をしている場合は、さらに重い税率になる可能性
長期保有が前提の投資家直接の影響は小さい。ただし市場の売買が細れば、出口の価格や買い手の数に影響しうる
マイホームを買う人投機的な売買が減れば価格の上昇が和らぐ可能性がある。一方、供給が増えなければ効果は限られるとの指摘も

特に影響が大きいのは、土地を仕入れて、測量や建築プランで価値を高めて売るという、短期で回すタイプの不動産事業です。今は法人であれば売却益に通常の法人税がかかるだけですが、重課が再開されれば、所有期間が短い取引ほど税負担が重くなります。事業計画の利回りや、仕入れの判断基準そのものを見直す必要が出てきます(土地の仕入れ・販売事業の税務、販売用不動産と固定資産の区分)。

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銀行と融資への影響も見ておきたい

記事では、自民党の税調幹部が「地銀への影響を見極める必要がある」と述べたことも紹介されています。融資全体に占める不動産の比率はバブル期を上回り、地銀の不動産業向け融資の4分の1ほどが東京の都心5区に集中しているとされます(地銀の不動産融資が過去最大の伸び)。

課税強化で短期売買が減り、不動産価格が下がれば、銀行は担保の価値を見直し、融資の姿勢も慎重になる可能性があります。特に、短期で売ることを前提にした融資(販売用不動産の仕入れ資金など)は、売れるまでの期間や売却価格の見込みが厳しく見られるようになるでしょう。新築マンションの価格と金利の今後については、首都圏の新築マンション、上期平均が初の1億円超で整理しています。

今から確認しておきたいこと

まだ検討の段階で、対象や開始時期は決まっていません。それでも、次の点は今のうちに確認しておくことをおすすめします。

  1. 個人で持っている物件の所有期間:売った年の1月1日時点で5年を超えるのはいつか。短期と長期の差は約2倍です
  2. 法人での売却計画:重課が再開された場合に、所有期間によって税負担がどう変わるか。売却の時期を前倒しするか、長く持つかの判断材料をそろえる
  3. 事業として土地を売買している場合の事業計画:利回りや仕入れ価格の前提に、税の上乗せを織り込んだ場合の試算
  4. 出口戦略:市場の売買が細った場合でも困らない、保有と売却の組み合わせ(出口戦略の考え方)
  5. 融資の条件:販売用不動産の仕入れ資金など、短期の融資の返済期限と、売却が遅れた場合の対応

今後も注意して見ていきたいこと

  • 12月の税制改正大綱:土地譲渡益重課の再開や、短期譲渡所得の見直しが盛り込まれるか。盛り込まれる場合、対象(土地のみか、建物を含むか、法人と個人のどちらか)と開始時期
  • 除外の範囲:過去の制度には一定の除外もありました。再開される場合、どのような取引が対象から外れるか
  • 外国人の不動産取得への対応:国籍で一律に線を引くのではなく、投機性の高い取引に着目した対策を検討するとされています
  • 供給を増やす政策:投機の抑制だけでなく、住宅の供給を増やす政策が合わせて打ち出されるか
  • 地銀の融資姿勢:価格が下がる局面で、不動産向け融資がどう変わるか

税制は、決まってから動いたのでは間に合わないことがあります。特に、売却の時期や持ち方の判断は、制度の開始日の前後で結果が大きく変わります。議論の行方を見ながら、早めに試算しておくことが、どの結論になっても困らないための備えになると考えています。

まとめ

  • 自民党は、マンション価格の高騰を抑える策として、短期売買への課税強化を検討している。例として、1998年から止まっている土地譲渡益重課制度の再開が挙がった
  • 今の制度では、個人は所有期間(売った年の1月1日時点)5年以下で約39%、5年超で約20%。法人には短期・長期の区別がない
  • 重課が再開されれば、土地を仕入れて短期で売る不動産会社や、法人での短期売買への影響が特に大きい
  • 長期保有の投資家への直接の影響は小さいが、市場の売買や銀行の融資姿勢を通じた間接的な影響はありうる
  • 12月の税制改正大綱を見ながら、所有期間と売却の時期、事業計画を今のうちに確認しておきたい

ご自身の物件の売却時期や、個人・法人での持ち方を一度確認してみたい方は、お気軽にご相談ください。

よくある質問

土地譲渡益重課制度とは何ですか?
投機的な土地取引を抑えるため1973年に設けられた制度で、短期間で売った土地の利益に、通常より重い税をかけるものです。報道によれば、個人は5年以下の土地の譲渡による事業所得などに52%を課し、法人は土地の譲渡益に所有期間に応じて5〜10%を上乗せする仕組みです。バブル崩壊後の1998年から適用が停止されています。
今でも、5年以内に売ると税金は高くなるのではないですか?
個人の場合は、売った年の1月1日時点で所有期間が5年以下だと短期譲渡所得となり、所得税・住民税を合わせて約39%(長期は約20%)になります。一方、法人には短期・長期の区別がなく、売却益は他の利益と合わせて通常の法人税がかかるだけです。重課が再開されると、特に法人の短期売買に影響が大きいと考えられます。
長く持つつもりの不動産投資家にも影響はありますか?
長期保有が前提なら、直接の影響は小さいと考えられます。ただし、短期売買が減れば市場の売買が細り、売りたいときの買い手や価格に影響する可能性があります。また、銀行が不動産向け融資をより慎重に見るきっかけにもなりえます。出口の時期と、所有期間の数え方を確認しておくことをおすすめします。

※本記事は2026年10月22日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。

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