不動産を保有する法人(いわゆる資産管理会社)を持つと、個人のときの「3月15日までに確定申告」とはまったく違うリズムで、税金の申告と納税がやってきます。決算日から2か月後の確定申告、その半年後の中間申告、毎年1月の償却資産申告と法定調書、春から年に4回届く固定資産税。どれも期限があり、どれかを落とすと加算税や延滞金がかかります。
この記事では、不動産法人の決算・申告スケジュールを1年間のカレンダーとして整理し、決算前にやっておくべきこと、そして見落とされがちな「銀行に決算書を出す時期」までを解説します。法人税の申告期限そのものの詳しい説明は法人税の申告期限の記事にまとめていますので、ここでは不動産法人ならではの1年の流れに絞ります。
- 不動産法人の税金は、決算日を起点に動くもの(確定申告・中間申告)と、暦で決まっているもの(1月の償却資産申告・法定調書、固定資産税の納期など)の2種類がある
- 確定申告と納税は、原則として決算日の翌日から2か月以内。申告期限を延長しても、納付期限は延びない
- 前期の税額が一定額を超えると、期の途中で中間申告が必要になる。前期の実績で払う方法と、仮決算で払う方法がある
- 物件の売買の引渡し日、大きな修繕の発注、役員報酬の決定は、決算日の前にしか動かせない。決算の3か月ほど前に着地見込みを確認する
- 決算書は融資の審査資料でもある。決算が遅れると、次の物件の融資も遅れる
不動産法人の税金は「2つの時計」で動く
まず全体像です。不動産法人にかかる税金や届出は、何を起点に期限が決まるかで2つに分かれます。
| 区分 | 主なもの | 期限の決まり方 |
|---|---|---|
| 決算日を起点に動く | 法人税・法人住民税・法人事業税・消費税の確定申告と納税、中間申告 | 事業年度の終わり(決算日)から数えて決まる |
| 暦で決まっている | 償却資産の申告、法定調書(支払調書)と給与支払報告書、源泉所得税の納付、固定資産税・都市計画税の納付 | 毎年同じ月日に来る(市町村ごとに納期が異なるものもある) |
個人で不動産を持っていたときは、所得税・消費税の確定申告が春にまとまって来るため、ひとつの時計で足りました。法人では、決算月を自分で選べる分、決算の時期と暦の行事が別々に動きます。たとえば12月決算の法人は、2月末の確定申告と1月の償却資産申告・法定調書が重なり、年明けが非常に忙しくなります。決算月の選び方については法人の決算期の決め方も参考にしてください。
決算日から2か月:確定申告と納税
申告するものと期限
決算日を迎えたら、その翌日から2か月以内に、次の申告と納税をします。
- 法人税・地方法人税(税務署)
- 法人住民税・法人事業税(都道府県、市町村。東京23区は都税事務所)
- 消費税・地方消費税(課税事業者の場合。税務署)
住宅の家賃が中心の法人は消費税の免税事業者であることも多いですが、店舗・事務所・駐車場の賃料や、建物の売却があれば課税売上が生じます。課税事業者になるかどうかは毎期確認が必要です。
法人税などは、定款で「定時株主総会は決算日から3か月以内に招集する」などの定めがある場合に、申告期限を1か月延長する特例があります。ただし、延長されるのは申告の期限で、納付の期限は延びません。延長した期間には利子税がかかるため、2か月以内に見込み額を納めておくのが一般的です。
決算から申告までの実務の流れ
不動産法人の決算で、時間がかかるのは次の作業です。
- 管理会社から年間の送金明細・管理報告書を取り寄せ、家賃・管理料・修繕費を突き合わせる
- 敷金・保証金の預り残高、前受家賃(翌月分の家賃を当月に受け取っている分)を確認する
- 期中に買った物件の取得価額(土地と建物の按分、仲介手数料、登録免許税など)と、期中の修繕が修繕費か資本的支出かを整理する
- 減価償却費を計算し、固定資産台帳を更新する
- 借入金の残高を、金融機関の残高証明書や返済予定表と一致させる
管理会社の明細が届くのは決算日の翌月半ばになることが多く、物件数が多い法人ほど、申告期限ぎりぎりになりがちです。月次で記帳しておけば、決算時の作業は大きく減ります。
期の途中:中間申告
前期の法人税額が一定額を超えると、期首から6か月を過ぎた日から2か月以内に中間申告と納税が必要になります。法人税では、前期の法人税額を前期の月数で割って6を掛けた金額が10万円を超える場合が対象です(法人住民税・法人事業税も原則として連動します)。消費税にも、前期の税額に応じて年1回から11回の中間申告があります。
中間申告には、2つの方法があります。
| 方法 | 内容 | 向いているケース |
|---|---|---|
| 前年度実績による予定申告 | 前期の税額の半分(消費税は前期の実績に応じた割合)を納める | 業績が前期と同じくらいの年 |
| 仮決算による中間申告 | 期首から6か月間を仮に決算し、その実績で計算する | 前期に物件の売却益など一時的な利益があり、今期はそれがない年 |
不動産法人で特に注意したいのは、前期に物件を売却して大きな利益が出た翌期です。前年度実績で計算すると、今期は売却益がないのに多額の予定納税が必要になり、手元の資金が細ります。クレフティでも、年商5〜10億円の不動産売買・賃貸業のお客さまに中間申告の方法を提案し、予定納税を減らして資金繰りに余裕をつくった事例があります。仮決算の詳しい要件は中間申告の記事で解説しています。
暦で決まっている1年の行事
決算月に関係なく、毎年同じ時期に来るものを、月ごとに並べます。市町村によって納期が異なるもの(固定資産税など)は、届いた納税通知書で確認してください。
| 時期 | やること | 不動産法人での注意点 |
|---|---|---|
| 1月20日 | 源泉所得税の納付(納期の特例を受けている場合の7〜12月分) | 役員報酬や、個人の専門家への報酬の源泉所得税 |
| 1月31日 | 償却資産の申告 | 駐車場の舗装・フェンス、機械式駐車設備、太陽光設備、事業用の備品など。建物と家屋に含まれる設備は対象外 |
| 1月31日 | 法定調書合計表・支払調書の提出、給与支払報告書の提出 | 個人の地主への地代や個人への家賃など、不動産の使用料等を同じ人に年15万円超払った場合などに支払調書が必要 |
| 4〜6月ごろ | 固定資産税・都市計画税の納税通知書が届く(多くの市町村で年4回の分割納付) | 1月1日時点の所有者に課税。期中に取得した物件は、売主と日割り精算した分が取得価額に入る |
| 7月10日 | 源泉所得税の納付(納期の特例を受けている場合の1〜6月分) | 特例を受けていない場合は、原則として支払った月の翌月10日 |
| 12月 | 年末調整 | 役員報酬を払っている場合。家族に給与を払っている法人は特に注意 |
償却資産の申告は、建物しか持っていないと思っていても、駐車場や外構の工事、太陽光の設置などで対象資産を持っていることがよくあります。固定資産税の仕組みは不動産の固定資産税の記事も参考にしてください。
代表の相亰と髙橋が、自らの不動産投資と資金調達支援の経験から構築した独自の財務設計の手法「クレフティメソッド」で、決算書・法人化・次の融資まで設計します。初回のご相談は無料です。
不動産投資家向け税務・融資支援を見る決算日の前にしか動かせない3つのこと
決算が終わってから「この費用をこちらの期に入れたい」と思っても、ほとんどの場合は手遅れです。不動産法人で、決算日の前に判断しておくべきことは主に3つあります。
1. 物件の売買の引渡し日
不動産の売買は、原則として引渡しの日に収益(売却益)や取得を計上します。決算日の直前に引渡しを予定している売却なら、引渡しを決算日の前にするか後にするかで、どちらの期に売却益が入るかが変わります。購入でも、引渡しの日によって、その期に計上できる減価償却費や固定資産税の精算額が変わります。売買の日程は、税金だけでなく、どちらの期の決算書を銀行に見せたいかという観点からも検討します。
2. 大きな修繕の発注と完了
修繕費は、原則として工事が完了し、引渡しを受けた期の費用になります。決算日をまたぐ大規模修繕は、発注しただけでは費用にならず、また内容によっては資本的支出として資産計上になります。修繕費と資本的支出の区分は修繕費と資本的支出の違いで解説しています。
3. 役員報酬
法人税法上、役員報酬は原則として、期首から3か月以内に決めた金額を毎月同じ額で払う「定期同額給与」でないと損金になりません。決算の段階で利益が出そうだからと期中に増額しても、増額分は原則として損金になりません。役員報酬は、期首の時点でその期の利益とキャッシュフローの見込みを立てて決めるものです。
この3つを判断するには、決算日の3か月ほど前に、その期の試算表で着地見込みを確認しておく必要があります。クレフティでは、決算前の打ち合わせで、税額の見込みと、銀行から見た決算書の見え方の両方を確認しています。
決算書は、銀行への「年1回の成績表」
不動産法人のスケジュールで、税金と同じくらい大切なのが金融機関への決算書の提出です。
融資を受けている法人は、多くの場合、決算が終わるたびに決算書と申告書一式を金融機関に提出します。金融機関はこれをもとに格付け(債務者区分)を見直し、次の融資の可否や条件を判断します。著書のモデルでは、格付けは安全性・収益性・成長性・返済能力の4つの観点で採点され、決算書の数字がそのまま点数になります。
| 時期 | 銀行との関係で起きること |
|---|---|
| 決算日から2〜3か月 | 決算書・申告書の提出。格付けの見直し |
| 期の途中(半期・四半期) | 次の物件の融資を申し込むときは、直近の試算表を求められることが多い |
| 決算の3か月前 | 着地見込みの試算表を作り、売買・修繕・役員報酬の判断に使う |
ここで注意したいのは、決算が遅れると、次の物件の融資も遅れるということです。決算日から数か月たつと、金融機関は「新しい決算書が出てから審査します」と言うことがあります。良い物件が出たときに、決算書がそろっていないために融資の申込みができない、というのはもったいない話です。
また、決算書は一度提出すると、その後何年も比較の対象になります。減価償却を計上していない期がある、修繕を一括で費用にして極端な赤字になっている、といった決算書は、説明を求められます。銀行に出す前に何を確認すべきかは銀行に出す前の決算書チェック、期中の試算表については銀行に出す試算表の作り方で詳しく解説しています。
不動産法人の決算は、税金の計算であると同時に、次の融資のための準備でもあります。代表の相亰も2019年、複数の銀行から融資を断られた経験があり、その原因は決算書の上で債務超過になっていたことでした。決算書の数字は、後から説明で取り繕うことができません。
まとめ
- 不動産法人の税金は、決算日を起点に動くもの(確定申告・中間申告)と、暦で決まっているもの(1月の償却資産申告・法定調書、固定資産税、源泉所得税)の2つの時計で動く
- 確定申告と納税は原則として決算日の翌日から2か月以内。申告期限を延長しても納付期限は延びない
- 前期に売却益があった翌期は、中間申告を前年度実績で払うか、仮決算で払うかを検討する
- 物件の売買の引渡し日、大きな修繕、役員報酬は、決算日の前にしか動かせない。決算の3か月前に着地見込みを確認する
- 決算書は金融機関への成績表。決算が遅れると次の物件の融資も遅れる
クレフティでは、不動産法人の月次記帳から決算・申告、決算前の着地見込みの確認、金融機関への決算書の見せ方まで、一貫してサポートしています。代表の相亰と髙橋が構築した独自の財務設計の手法(クレフティメソッド)で、融資を受け続けられる決算書づくりをお手伝いします。初回のご相談は無料です。詳しくは不動産投資家向けサービスをご覧ください。
