消費税

サブリース会社(転貸する会社)の消費税|住宅の転貸は借上げも非課税、店舗は課税仕入れ、課税売上割合と裁決事例

建物をオーナーから一括で借り上げ、入居者に転貸するサブリース会社。第三者の大手サブリース会社のほか、オーナー自身の同族会社がこの役割を担うこともあります。サブリース会社の消費税は、オーナーから借りる取引と入居者に貸す取引の両方を、住宅か店舗かで判定しなければならず、思わぬ負担が生じやすい分野です。

ポイントは、住宅として転貸することが契約で明らかなら、借上げも非課税になることです。住宅を転貸する会社は、オーナーに払う家賃に消費税を払わない代わりに、仕入税額控除もできません。同族会社を使ったサブリースの所得税・法人税の論点(適正賃料と所得税法157条)はサブリース方式(一括借上げ)の仕組みと適正賃料で扱いました。この記事では、転貸する会社の側の消費税に絞って整理します。

この記事の結論
  • 住宅として転貸することが契約書その他で明らかなら、オーナー → サブリース会社の貸付けも住宅の貸付けとして非課税(消費税法基本通達6-13-7)。再転貸の場合も同様とした裁決がある
  • 住宅を転貸する会社は、借上げ家賃に消費税がかからない一方、仕入税額控除もできない
  • 店舗・事務所の転貸は、借上げ・転貸とも課税。借上げ家賃の控除にはオーナーのインボイスが必要で、免税オーナーなら経過措置の割合だけ控除
  • 住宅中心のサブリース会社は課税売上割合が低く、管理・広告などの仕入税額控除が限られる
  • 契約書の用途の記載が課税関係を決める。用途変更・民泊やマンスリーへの転用は契約から見直す

サブリースの2つの取引と消費税

サブリースでは、1つの建物について次の2つの貸付けがあります。

  1. オーナー → サブリース会社(借上げ・マスターリース)
  2. サブリース会社 → 入居者(転貸・サブリース)

消費税では、それぞれについて「住宅の貸付け」(非課税)かどうかを判定します。

建物の用途①オーナー → 会社②会社 → 入居者会社の仕入税額控除
住宅として転貸(契約で明らか)非課税非課税借上げ家賃は控除不可
店舗・事務所として転貸課税課税借上げ家賃は控除可(インボイスが必要)
住宅と店舗の混在部分ごとに区分部分ごとに区分店舗部分の借上げ家賃のみ控除可
旅館業・1か月未満の貸付けに使う予定住宅の貸付けに当たらず課税となり得る課税控除可(用途区分は課税売上対応)

住宅の転貸:基本通達6-13-7

消費税法基本通達6-13-7は、住宅用の建物を賃貸する場合に、賃借人が自ら使用しなくても、賃借人が住宅として転貸することが契約書その他において明らかな場合は、その貸付けは住宅の貸付けに含まれる、としています。注書きでは、賃借人が行う住宅の転貸も住宅の貸付けに該当するとされています。

また、令和2年4月以後は、契約で用途が明らかにされていない場合でも、貸付けの状況からみて人の居住の用に供されていることが明らかな場合は住宅の貸付けに含まれます。基本通達6-13-11では、その例として、転貸先との契約で居住用とされている場合や、転借人が個人で居住用でないことを賃貸人が把握していない場合などを挙げています。

つまり、住宅を借り上げて住宅として転貸する限り、サブリース会社は消費税の「外」にいるのに近い状態になります。住宅家賃と店舗家賃の判定の基本は住宅家賃(非課税)と店舗・事務所家賃(課税)の違いをご覧ください。

用途変更と転用

基本通達6-13-8は、住宅として貸した建物を、契約当事者間で住宅以外の用途に契約変更した場合は、変更後の貸付けは課税になるとしています。注書きでは、住宅として借りた建物を賃借人が契約変更をせずに事業用に使っても、その借受けは賃借人の課税仕入れにならないとしています。

サブリース会社が、住宅として借り上げた部屋を民泊やマンスリー(1か月未満)に転用する場合は、オーナーとの契約を変更しない限り、会社側は借上げ家賃の控除ができないまま、転貸収入は課税売上げになる、というねじれが起きます。マンスリー・短期賃貸の扱いはマンスリー・短期賃貸の消費税で詳しく扱っています。

公表裁決事例:住宅として転貸することが「明らか」とされた事例(平成28年9月7日裁決)

事案:請求人は、マンションの販売・賃貸事業を行う会社から区分所有の1室を購入し、同時にその会社に賃貸しました(会社がさらに転貸する、いわゆるマスターリース)。請求人は、この賃貸は課税取引であるとして、建物の取得に係る消費税の還付を求める申告をしました。原処分庁は、住宅の貸付けで非課税だとして更正しました。

請求人の主張:通達6-13-7が想定するのは転貸借だけで、再転貸借までは含まない。契約書には転借人として法人が想定され、自由に再転貸できるとされているから、実際に人が住むかどうかは明らかでない。

判断:審判所は、住宅の貸付けが非課税とされているのは、消費税相当額を転嫁しないことで住宅の賃借人を政策的に保護する趣旨だとし、通達6-13-7の取扱いを相当としました。そのうえで、①賃貸借契約書に、会社の住宅賃貸事業のブランドの貸室として転貸する旨の定めがあること、②売買契約書に居住目的以外に使わない旨の定めがあり、賃貸借契約にもそれ以外の用途を認める規定がないこと、③提案書にマスターリースの対象が住宅であると記載され、契約時の説明でも住宅として転貸すると説明されていたことから、住宅として転貸することが契約書その他において明らかだと認定しました。再転貸が想定されていても結論は変わらないとして、全額を非課税取引とし、更正処分と過少申告加算税の賦課決定処分を適法としています(棄却)。

確認先:国税不服審判所 公表裁決事例(平成28年9月7日裁決)

実務への示唆

この事例は、オーナー側が「課税にしたい」と主張して退けられた事案ですが、裏を返せば、サブリース会社側の借上げも非課税として扱われることを意味します。判断材料は契約書の条文だけでなく、売買契約書、提案書、契約時の説明まで含まれていました。サブリース会社の側では、自社の契約書・提案資料に用途がどう書かれているかが、そのまま課税関係を決めると考えておく必要があります。

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サブリース会社の仕入税額控除と課税売上割合

課税売上割合が低くなりやすい

住宅中心のサブリース会社は、売上げの大半が非課税の住宅家賃です。課税売上げは、店舗・事務所の家賃、別料金の駐車場、手数料収入などに限られるため、課税売上割合はかなり低くなるのが普通です。

課税売上割合が95%未満、または課税売上高が5億円を超える課税期間は、仕入税額の全額は控除できず、個別対応方式か一括比例配分方式で計算します。

課税仕入れの例個別対応方式での区分の例
住宅の転貸のためだけの入居者募集広告、住宅の原状回復工事非課税売上げにのみ要するもの(控除不可)
店舗区画の募集広告、店舗部分の借上げ家賃課税売上げにのみ要するもの(全額控除)
本社の家賃、会計ソフト、全物件共通の管理システム共通して要するもの(課税売上割合で控除)

方式の選び方や2年継続の縛りは個別対応方式と一括比例配分方式で扱っています。課税売上割合が低いことで、控除できなかった消費税は会社のコストになります。経理方式によってはこれが「控除対象外消費税額等」として表れます(税込経理と税抜経理、控除対象外消費税額等の処理)。

店舗の転貸とインボイス

店舗・事務所を借り上げて転貸する場合、借上げ家賃は課税仕入れです。仕入税額控除を受けるには、オーナーが適格請求書発行事業者で、契約書・通帳などで記載事項を満たしている必要があります(インボイス制度と賃貸借契約)。

オーナーが免税事業者の場合は、経過措置で一定割合だけ控除できます。国税庁の資料によると、令和8年10月1日から令和10年9月30日までは70%、その後段階的に縮小されます。サブリース会社にとっては、転貸家賃の消費税は全額納める一方、借上げ家賃の消費税は一部しか控除できないため、納税額が増えます。経過措置の詳細は免税事業者からの仕入れの経過措置と不動産取引をご覧ください。

法人と個人の違い

項目法人のサブリース会社個人がサブリース(転貸)を行う場合
消費税の判定住宅か店舗かで判定(同じ)同じ
納税義務基準期間の課税売上高などで判定。資本金1,000万円以上の新設法人などは設立当初から課税基準期間(前々年)の課税売上高などで判定
簡易課税不動産業は第6種(みなし仕入率40%)同じ
所得税・法人税転貸家賃は益金、借上げ家賃は損金転貸収入は不動産所得(事業の実態により事業所得となる場合もある)

簡易課税を選ぶと、借上げ家賃の控除の有無にかかわらず、課税売上げに対する消費税の60%を納めることになります。店舗の借上げ家賃が大きい会社では、本則課税と比べて不利になることもあります(不動産業の簡易課税)。

会計上の扱いと決算書の表示、銀行からの見え方

総額表示と消費税の見え方

サブリース会社は、入居者との契約当事者として家賃を受け取るため、決算書では転貸家賃を売上高、借上げ家賃を売上原価(または販売費及び一般管理費)に総額で表示するのが一般的です。管理委託方式の会社とは売上高の規模がまったく違って見えます。

税務上は、消費税の非課税・課税の判定と、法人税の益金・損金の計算が論点です。一方、決算書の表示(売上高を総額で見せるか、売上原価か販管費か)は、企業会計の基準、すなわち一般に公正妥当と認められる会計基準(GAAP:Generally Accepted Accounting Principles)に沿って、取引の実態(会社が契約当事者として空室リスクを負っているか)で判断する必要があります。どの区分にできるかは取引の実態次第なので、顧問税理士・会計の専門家と検討してください。

税抜経理を採用している場合、住宅中心のサブリース会社は、課税売上割合が低いため控除できない消費税(控除対象外消費税額等)が生じます。これを販管費(租税公課など)に計上すれば営業利益が下がります。税込経理なら、そもそも費用に含まれて見えなくなります。

銀行からの見え方

見られる点サブリース会社で起きること
売上総利益率転貸家賃と借上げ家賃の差額(粗利)が薄いのが普通。空室が増えると逆ざやになる
消費税の負担店舗の転貸が多く、免税オーナーからの借上げが多いと、納税額が増え利益を圧迫する
未払消費税課税売上げが大きい会社は、中間納付・確定納付の資金を手元に置いておく必要がある
契約の継続性オーナーとの借上げ契約の期間・解約条項、入居率の推移

銀行は、サブリース会社を「家賃の差額で稼ぐ会社」として見ます。粗利が薄いところに消費税の負担が重なると、営業利益がほとんど残らないこともあります。著書のモデルでは、債務償還年数を「(借入金-現預金)÷(経常利益+減価償却費-法人税等)」で計算し、10年以内を健全の目安としています。サブリース会社自体が借入れをする場合は、消費税の納税資金も含めた資金繰り表を用意しておくと説明しやすくなります(消費税の中間申告と資金繰り)。

実務のチェックポイント

チェック項目確認する内容
借上げ契約の用途住宅として転貸する旨、店舗・事務所部分の区分、民泊・マンスリーへの転用の可否
転貸契約の用途入居者との契約で居住用か事業用かが明らかか
用途変更転用するときにオーナーとの契約を変更しているか
混在建物住宅部分と店舗部分の借上げ家賃を契約で区分しているか
インボイス店舗部分のオーナーが登録事業者か。免税オーナーの経過措置の割合と帳簿記載
用途区分広告・原状回復・管理費などを、住宅用・店舗用・共通に区分しているか
方式の選択個別対応方式か一括比例配分方式か。簡易課税との比較
資金繰り消費税の中間・確定納付の資金を確保しているか

まとめ

  • サブリースでは、借上げ(オーナー → 会社)と転貸(会社 → 入居者)の両方を、住宅か店舗かで判定する
  • 住宅として転貸することが契約書その他で明らかなら、借上げも非課税(基本通達6-13-7)。平成28年9月7日裁決では、再転貸が想定されていても非課税とされた
  • 住宅を転貸する会社は、借上げ家賃の仕入税額控除ができない。店舗の借上げ家賃は控除できるが、オーナーのインボイスが必要
  • 住宅中心のサブリース会社は課税売上割合が低く、控除できない消費税がコストになる
  • 契約書の用途の記載が課税関係を決める。転用するときは契約から見直す

サブリースは、契約書の書き方ひとつで消費税の負担が変わる仕組みです。クレフティでは、不動産投資家向けサポートの中で、借上げ・転貸契約の消費税の確認から、銀行に出す決算書・資金繰り表の作成までご相談をお受けしています。

よくある質問

サブリース会社がオーナーに払う借上げ家賃は、仕入税額控除の対象になりますか?
住宅として転貸することが契約書その他で明らかな場合、オーナーからの借上げは住宅の貸付けに含まれ非課税なので、課税仕入れにはならず仕入税額控除はできません(消費税法基本通達6-13-7)。店舗・事務所として転貸する建物の借上げ家賃は課税仕入れで、オーナーが適格請求書発行事業者であれば控除できます。
サブリース会社の課税売上割合はどうなりますか?
住宅の転貸家賃は非課税売上げ、店舗・事務所の転貸家賃や別料金の駐車場は課税売上げです。住宅中心のサブリース会社は課税売上割合が低くなり、管理や広告などの課税仕入れのうち控除できる部分が限られます。個別対応方式では、住宅の転貸のためだけの仕入れは非課税売上げに対応するものに区分されます。
免税事業者のオーナーから店舗を借り上げて転貸しています。どうなりますか?
免税事業者のオーナーは適格請求書を交付できないため、借上げ家賃は原則として仕入税額控除ができません。経過措置により一定割合を控除でき、令和8年10月1日から令和10年9月30日までは70%とされています。一方、店舗の転貸家賃は課税売上げなので、会社側の納税額は増えます。借上げ条件の見直しは、契約更新のタイミングで検討します。

※本記事は2026年10月18日時点の法令・制度に基づく一般的な解説です。個別の状況により結論が異なるため、実行前に専門家へご相談ください。

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